苦しくない検査

広がる「苦しくない検査」 呼吸器・消化器にやさしく

「痛い」「苦しい」とのイメージが強かった、がんなどの検査で、患者への負担(侵襲)の小さい機器や手法が広がっている。
気管支鏡や膀胱鏡などの内視鏡は硬い棒状のものから柔らかく細くなるなどし、消化器の検査ではカプセル内視鏡の研究が進む。
高齢化や患者主体の医療の流れの中で、精度を高めつつ、患者に負担をかけない検査法の開発に関係者は力を注いでいる。

■気管支鏡 
「苦しい、と知人に聞いていたので覚悟していたが、意外に楽だった」。
8月中旬、社会保険中央総合病院(東京・新宿)の呼吸器内科で気管支内視鏡検査を受けた都内の男性(80)が語る。

目にマスクを付け、喉に局所麻酔薬を噴霧された後、医師が、先端にCCDカメラの付いたビデオスコープを口から差し込み、
モニターを見ながら気管の奥に進めていく。
「大丈夫ですか」「苦しかったら合図してください」。
医師が頻繁に声をかけ、検査は十数分で終わった。

かつて直径7~8ミリの金属製の棒(硬性鏡)だった時代は、患者に上を向いてもらい気管を真っすぐにして挿入していた呼吸器内視鏡は、1980年代半ばに約5~6ミリと細く、柔軟に動く軟性鏡が登場してから格段に楽になった。
それでもスコープを喉に通す際にせき込む人がいるため、大半の医療機関では、喉に麻酔薬を噴霧する局所麻酔で行っている。

さらに、同病院の徳田均・呼吸器内科部長は「患者に声をかけてリラックスさせたり、せき込んだら気管支鏡をいったん抜くなど患者にやさしい検査を心がけ、それでもせき込みが激しい場合は、積極的に鎮静剤を使っている」。
その結果「つらさを訴える患者は少ない」という。
この方法は昨年、日本呼吸器内視鏡学会の手引書にも記載され、「今後広がっていくだろう」とみる。

■膀胱鏡 
「低侵襲化」が著しいのが泌尿器科の検査だ。
膀胱がんなどの検査で使う膀胱内視鏡は「硬性鏡を使っていた当時、特に男性では尿道を通すときに強い痛みが伴ったが、軟性膀胱鏡になってからは苦痛が大幅に軽減した」。
日本泌尿器学会理事長の本間之夫・東京大教授が語る。
「再発しやすい膀胱がんは手術後も定期検査が欠かせず、検査の痛みを減らした意義は大きい」

さらに2004年にはオリンパスが挿入しやすいように先端を丸くした軟性膀胱鏡を発売。
「従来の軟性膀胱鏡と比べ痛みや不快感がより減って、局所麻酔なしで検査が行えるようになった」(篠原信雄・北海道大准教授)

80年代から患者数が急増し年間の死者数が1万人を超える前立腺がんは早期発見が重要で、腫瘍マーカーPSA」で異常値が出ると、前立腺の組織を採取する生体検査が必要になる。
肛門から機器を入れ、超音波の画像を見ながら針を刺して組織を採るが、最近は麻酔の方法が進歩して痛みをかなり軽減できるようになった。

■消化器内視鏡 
胃や大腸などの内視鏡検査も技術が進歩し、画像をハイビジョンで撮影したり、超音波で深部の臓器の詳細な観察ができるようになったりした。
ただ、ある程度の苦痛はあるうえ、小腸の検査には不十分だったため、80年代にのみ込むカプセル型の内視鏡の開発が始まり、国内でも07年に発売された。

小腸の出血性病変を見つけるのが目的で、外径11ミリ、長さ26ミリと薬のカプセルより一回り大きい程度。
口からのみ込むと消化管のぜん動運動で移動し、内臓したCCDカメラが撮影した画像データを体外に無線送信して診断する。

さらに、大阪医科大学大阪府高槻市)と龍谷大学大津市)は、遠隔操作で体内を泳ぐように自在に動かせるカプセル内視鏡を開発。
人の消化管での撮影に成功し、今年5月、国際会議で発表した。

魚の尾ひれのような駆動装置を体外から電磁石で動かして速度や方向を変えながら1秒間に2枚の画像を撮影。
「食道から大腸までを数時間で観察でき、従来のカプセル内視鏡のように胃の底部に落ちて胃の大部分が見られないということもない」と開発にあたった樋口和秀・大阪医科大教授(内科)。
「今後、製造販売承認を受け、日本発の先端技術として世界にアピールしたい」と話す。

■画像検査 
小児医療では侵襲性を小さくする必要性がとりわけ高い。

聖隷浜松病院浜松市)の小児循環器科は、先天性心疾患の小児患者に対し、体に負担のあるカテーテル(医療用細管)を使う造影検査ではなく、超音波やコンピューター断層撮影装置(CT)などを使う低侵襲検査に取り組んでいる。
09年には先天性心疾患の手術70件のうち26件の検査はカテーテルを使わず超音波などで行った。

カテーテル検査は患者への負担がある半面、心室の大きさや血圧の状態など心臓の状態をより正確に把握できる。
「患者の負担軽減と検査の正確性をてんびんにかけて、カテーテル検査をするか低侵襲検査のみで手術をするか判断している」(同科の森善樹部長)

超音波検査は3次元画像を表示するなど、患者の体に負担をかけずにより精密な検査もできるようになった。
森部長は「CTや磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査技術の進歩とともに低侵襲検査は今後も広がるだろう」と話す。 (安西明秀、編集委員 木村彰)

◇            ◇

2000年前後から改善に拍車 医師・技術陣スクラム
苦痛を伴う検査の改善は1980年代から進み、2000年前後から拍車がかかった。
高齢化に伴って高齢者のがん罹患が増えたほか、患者主体の医療が広がり始めたのと軌を一にする。

以前は「検査が苦しいのは当たり前」「病気を見つけるためなら患者はつらさを我慢すべきだ」との考えが医療従事者に強く、「頑張って、我慢してと声をかけてきた」(都内の呼吸器内科医)。

しかし「つらい検査を勧めるのは気が重い。苦しくない検査を望むのは患者ばかりでなく医師も同じ」とある泌尿器科医。
「医師たちが機器メーカーの技術陣と知恵を絞って機器の改良に取り組み、低侵襲検査を実現している」

日本医学会会長の高久史麿・自治医科大学学長は「病気を見逃さないため、必要以上に苦痛の伴う検査をする傾向があった。
医療が低侵襲化に向かうのは自然なことで、この流れは今後も続くだろう」と話している。

出典 日経新聞・夕刊 2011.9.1
版権 日経新聞


<自遊時間>
ネットサーフィンをしていたら「トイレットペーパーが引き起こした日中の文化摩擦」というタイトルに目がいきました。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=45271
在日中国人の書いたもので、要旨は以下のごとし。
■中国人観光客の増加に伴い、日本の観光地のトイレに「異常現象」が起きている。
その中で最も関心を集めているのが東京・浅草寺のトイレだ。
昨年あたりから使用済みのトイレットペーパーがごみ箱に溢れかえるという事態が頻発し始め、寺側が困惑。
そして、それは中国人観光客が訪れた後に発生するという法則に気づき、中国語で「紙は便器に流すよう」書いた張り紙をしているそうだ。
■これを知った日本人の多くは「中国人はマナーが悪い」と感じるだろう。
だが、ここに日中両国の文化の違いが存在する。実は中国は下水道や水洗トイレの普及率が低いほか、日本のように水に溶ける紙ばかりではないので便器に流す習慣がない。
中国ではトイレを詰まらせないよう使用済みの紙を備え付けのごみ箱に捨てる方が正しいマナーなのだ。
■中国人の「値切り」に関しても同じことが言える。
中国は自由市場や青空市場がまだまだ主流だが、そこでは言い値で買う客などいない。同じ商品でも駆け引き次第でいくらでも値段に差が出るからだ。
■中国人は商品の袋を勝手に開けると言われているが、それも中国ではニセモノが多いせいなのだ。
■禁煙エリアでタバコを吸う、列に割り込む、ところ構わずタンを吐く、大声で騒ぐなどの行為は慎むべきだ。
だが、一方で受け入れる日本側もどうか寛大な心で見て欲しい。

納得いく部分もありますが、最後の部分はどうなんでしょう。
さて、当院へ通院中の患者さんで世界的チェーンのホテルに勤務している方がおみえです。
ここに書かれたこととほぼ同様のことを以前に話されていました。
ちょっと驚いたのは、米国の某航空会社の某パイロットの話です。
定宿にしているそうですが、宿泊する度にルームの備品をことごとく持っていくとのこと。
トイレットペーパーは芯を抜いて持って行くという念の入れよう、とのことでした。
トイレットペーパーに不自由しているとは考えられないので、この話を聞きながら、きっと日本製は肌触り(?)がいいのでは、と思いました。
それにしても、エアターミナルで颯爽と歩く機長のパイロットケースの中にこんなものが入っているんだと想像するのも一興です。
実はこの航空会社の飛行機。
ちょっと先に予定している海外旅行で利用することになっています。
結構評判のよくない会社なので、会社名は皆さんも目星がついたことと思います。
きょうは下ネタで失礼しました。



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