子宮頸がん… ワクチン・検診 進む予防

子宮頸がんの予防と早期発見には、検診とワクチン接種の両方を行うことが重要です。
きょうはそんな話題を取り上げてみました。
以下の記事を理解するには子宮頸がんの特殊性を理解する必要があります。
子宮頸がんは、ウイルス感染が原因なのです。


発症のピークが30歳代と若い世代がかかりやすい子宮頸がん。
原因となるウイルス感染を防ぐワクチンや、感染を調べる検査が開発され、予防が進んできた。
(中島久美子)

子宮頸がんは、性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因だ。
多くは自然に体から排除されるが、まれに感染が続き、一部の人でがんを発症する。

HPVは百種類ほどのタイプがある。
子宮頸がんを引き起こすのは十数種類で、高リスク型と呼ばれる。
特に16型と18型は危険性が高く、子宮頸がん全体の約7割、20歳、30歳代の若い人では原因の8割を占める。

HPVワクチンは2社の製品があり、日本では2009年12月に「サーバリックス」(グラクソ・スミスクライン社)、11年8月に「ガーダシル」(MSD社)の販売が始まった。
3回に分けて筋肉内に注射する。
自費だと、3回で5万円程度かかる。
現在ほとんどの自治体で、中学1年~高校1年生の女子を対象に、公費助成が行われている。

双方とも、16型と18型に対する効果があり、子宮頸がんの予防範囲は同じだ。

主な違いは、ガーダシルは、6型、11型ウイルスの予防効果もある点だ。
低リスク型のウイルスで、性感染症である尖圭コンジローマを9割近く防ぐ。

尖圭コンジローマは、性器や肛門の周りにイボを作る病気。
塗り薬などで治療しても、再発しやすい。
国内では1年間で男女約3万9000人がかかると推定されている。

また、サーバリックスは免疫を増強させる成分の働きが強いとされる。
グラクソ・スミスクライン社などが欧米で行った比較試験では、サーバリックスの方が、16、18型の両方で、ウイルスを防ぐ抗体の量は多かった。
ただし、注射部位の痛みなど局所の副反応の頻度も高かった。

ワクチンで、すべての子宮頸がんを防げるわけではない。
重要なのは、定期的な検診だ。

子宮頸部の表面の細胞をこすって取り、顕微鏡で調べる。
がん細胞になる前の「異形成」の段階で見つかった場合、中等度までは自然に正常に戻ることが多いため、経過観察を行う。
高度の異形成なら、手術で子宮頸部の一部を切除する。
妊娠・出産も可能だ。

細胞の検査(細胞診)に加え、高リスク型のウイルス感染を調べる検査も導入されつつある。
細胞診だけよりも、中等度から高度の異形成の発見率が高まる。

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国の自治体検診の指針では、20歳以上の女性を対象に、2年に1回の細胞診を推奨している。
感染検査は、人間ドックに加え、併用する自治体も増えている。

ただし併用が死亡率を下げる効果を示すデータはまだなく、日本産婦人科医会は、暫定的な運用指針の策定を進めている。

同会常務理事で自治医大産婦人科教授の鈴木光明さんによると、20歳代だとがん発症につながらない一過性の感染の割合が高く、併用検診は30歳以上が望ましい。
また、両方の検査が陰性なら、次の検診は3年後に延ばすことが可能だ。

鈴木さんは、「異形成の状態で発見できることや、検診間隔が延ばせる利点は大きい。子宮頸がん検診の重要性を多くの人に知ってほしい」と話している。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2010.10.20
版権 読売新聞社


<関連サイト>
子宮頸がん予防ワクチン
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/37980726.html
■日本人では、子宮頸がんのうち67%で、HPV16/18型が発がんに関与していると報告されています。
HPV16型、18型以外に対しては効果がないため、2価ワクチン接種だけで子宮頸がんの予防が100%できるわけではありません。
■2価ワクチン (サーバリックス)では、2種類のHPVによって生じる前がん病変を、ほぼ100%予防することが報告されています。
現在ワクチン接種後7.3年の間、前がん病変の予防効果が示されています。
研究結果からは、20年以上効果が続くことが見積もられています。
■前がん病変からがんになるには数年~10年以上という時間がかかるため、ワクチン接種により前がん病変にならなければ、がんになることもありません。

HPVワクチン接種スケジュール
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/2011-04-30


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