いびきに注意

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは睡眠中に10秒以上の呼吸が停止(無呼吸)が5回以上繰り返される病気です。
無呼吸の間はかなりの低酸素になります。
症状としては、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などがあります。
また、SAS生活習慣病と密接に関係しており、放置すると生命の危険に及ぶこともあります。
この病気に特有の眠気は交通事故を起こす危険もあり、早期に適切な治療をすることが大切です。


中高年男性、いびきに注意 「無呼吸症候群」の恐れも

「グーグー」と室内に響き渡る大きないびき。一緒に寝る家族は迷惑しているが、本人は自覚が無いことも多い。
気持ちよく寝ているから大丈夫だと思っても、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの疾患かもしれない。
症状が悪化する前に対策を練るべきだ。

いびきは狭くなった気道の部分が呼吸によって振動することから起こる。
眠ると筋肉の動きが弱まって舌などの軟らかい部分が垂れ下がる。あおむけで寝ると重力の影響を受け、さらに気道が狭くなりがち。
そこに無理やり空気を通そうとすることで音が出る。

睡眠の専門医であるE先生は「日本人はいびきをかきやすい人種」と話す。
欧米人に比べて顔の凹凸が少なく、口と喉の奥までの距離が短い。
もともと気道が狭い体形だという。

そんな日本人の中でも最も危ないのが中高年の太っている男性だ。
年を重ねるにつれ筋肉の力が弱くなる上、肥満で喉の奥にも脂肪がたまり空気の通り道が狭くなる。
40代以上で太っている男性は自覚が無くてもいびきを疑った方がよい。
女性は女性ホルモンの影響で筋肉が緩みにくく、いびきをかく人が少ないとされる。

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鼻で呼吸の癖を
根本的に治すにはダイエットが不可欠だが、ライフスタイルの改善など粘り強い努力が求められる。
目の前のいびきをすぐに抑えられる方法はあるか。

E先生は口の上下にばんそうこうを張る方法を勧める。
口を開けて寝ると舌がだらりと垂れ下がり、いびきをかきやすい。
強制的にばんそうこうで口を閉じ、鼻呼吸の癖を付けることでいびきを防ぐという訳だ。
ただ、鼻が詰まっている人は呼吸が苦しくなるので注意が必要。

横向きで寝るのも効果がある。
あおむけに比べて重力の影響を受けず気道が狭くなりにくい。
うつぶせは内臓を圧迫してしまうことがあるが、横向きだとその心配は少ない。

いびきをかく人は高い枕が好きな人が多い。
あおむけで寝る際、枕が高すぎたり低すぎたりすれば、呼吸が苦しくなっていびきをかきやすくなる。リラックスして立った姿勢のまま、横になって寝るのが理想。
人それぞれの体形や首のカーブなどによって適した枕の高さが違う。
実際に試して選ぶのがよい。
横向きで寝るのに向いている高さの枕もある。
寝心地が悪いと感じた人は、寝具を変えてみるのも手だ。

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慢性だと体に害
いびきは疲れているときやお酒を飲んだとき、筋肉が緩んで一時的に発生することもある。
ただ、慢性的ないびきは健康に害を及ぼしかねない。

いびきをかいている人は血液中の酸素量が少なくなる。
また一生懸命呼吸をしているため、日中のように交感神経が活発になり眠りの質が低下する。
睡眠不足による不快感や疲れに悩まされるだけでなく、心臓に負担がかかるので高血圧や不整脈などのリスクも高まってしまう。

さらに注意すべきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)。
睡眠中に10秒以上呼吸していない状態が1時間に5回以上断続的に続く病気のことを指す。
過去には新幹線の運転士が「居眠り運転」していた要因として問題になった。
呼吸ができない状態が熟睡を妨げ、ひどい場合は昼間に突然意識を失うようにして眠ってしまう。
日中の仕事や車の運転など日常生活に支障をきたす。

睡眠時無呼吸症候群は全国に約200万人の患者がいるとされている。

患者は医師の治療を受けた方がいい。
顎を前方に突き出させるマウスピースや、マスクから空気を送り込み喉を広げる装置「CPAP」などの治療法がある。
いびき対策のサプリメントも販売されている。
渡辺さんは「医師とよく相談して個人の状態に合わせた治療をすべきだ」と訴える。
<私的コメント>
最近、当院から紹介されてマウスピースを作って貰った方がみえます。
本人いわく「マウスピースをはめると、かえって気になって睡眠不足になって昼間眠くなってしまいます」。「CPAP」は一定以上の重症の方でないと保険適応がありません。

いびきは放置していても自然に治ることはないという。
眠りが浅いと太りやすい体質になるので、ひとまずいびきの症状を改善し、ダイエットに励む。
それが自分自身のためにも家族のためにも大切だ。


身近な人が気をつけて
夫のいびきが原因で別室で寝たことがある妻は47%――。
帝人在宅医療(東京都千代田区)などが運営するSAS広報委員会のアンケート調査でこのような結果が出た。
多くの妻が夫のいびきを不快に感じていることがうかがえる。
<私的コメント>
5割近くの中年男性がいびきをかく、というアンケート調査の結果です。もしそうだとすると「全国に約200万人」という数字はちょっと少ないのではないでしょうか。

 ◇    ◇


調査は2011年2月に20~60代の既婚女性1千人から回答を得た。
夫のいびきの頻度を聞いたところ、「毎日(慢性的に)」が36%、「ほぼ毎日」が40%と8割近い夫がいびきをかいていることが分かった。
別室に寝ることが「頻繁にある」は30%、「たまにある」は17%だった。

悩んでいても実際に夫のいびきを治そうとしている妻は少ないようだ。
いびき防止予防グッズなどを購入したことがあるかどうかは「全くない」が72%で、「たまにある」の15%を大きく上回った。
受診などを促した経験がある人も少なかった。
SAS広報委は「いびきは自分で気付かないこともあり、身近な人からのアプローチが重要」と呼びかけている。

出典 日経プラスワン 2011.10.15(一部改変)


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