健診の肺がん検査は効果なし?―米研究

健診の肺がん検査は効果なし?―米研究 死亡率の低下認められず

健康診断で行われている胸部X線検査(2010年,厚生労働省は対象者を40歳以上に見直し,規定を改正した)は肺がんを発見するためのものだが、その有効性について世界的には疑問視する声が多数を占め、実施する国が少ない。
こうした中、米ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが15万人を対象とした研究結果を解析したところ、定期的な胸部X線検査による肺がん死亡率の低下が認められなかったと、10月26日付の米医学誌「JAMA」(電子版)に報告した。
この結果は、ハワイで開催された米国胸部疾患学会(CHEST 2011、10月22~26日)でも発表されている。

肺がん発症率も同等
Oken氏らは、55~74歳の米国人15万4,901人を対象に、全米の胸部X線検査実施施設10カ所のいずれかで1993年11月~01年7月に年1回の定期検査を受ける介入群(7万7,445人)と、定期検査を受けない通常診療群(7万7,456人)に分けた。

介入群に対しては4年にわたって年1回の胸部X線検査を実施し、試験開始年の受検率は86.6%、3年目では79%に低下した。
4年間の平均受検率は83.5%で、介入群の91.2%が1回以上受検した。
一方、通常診療群でも検査を受けた人がいたが、受検率は11%にとどまった。

対象者のがん診断、死亡および死亡原因に関するデータを収集した結果、肺がんが検出された人は介入群1,696人、通常診療群1,620人。
年間1万人当たりの累積肺がん発症率は介入群20.1人、通常診療群19.2人で、両群は同等だった。

肺がんによる死亡者数は、介入群1,213人、通常診療群1,230人で、年間1万人当たりの累積肺がん死亡率は介入群14.0人、通常診療群14.2人と、こちらも両群の差は認められなかった。
なお、喫煙の状況別に検討しても両群は同等だった。

今回の結果について、Oken氏らは「介入群の定期検査受検率は平均で8割を超え、通常診療群では1割程度だったにもかかわらず、肺がん死亡率は同等だった」と説明。
「4年に及ぶ定期的な胸部X線検査が、肺がん死亡率の低下に影響しないことが証明された」と結論している。

なお、日本肺癌学会では集団検診における胸部X線検査について、「肺癌集団検診ガイドライン」の中で推奨している。



<関連サイト>
古谷一行 肺がん 精密検査で早期発見
■俳優・古谷一行(68)が肺がんを患っていることが19日、分かった。
■事務所によれば、早期の発見だったため症状は軽いといい、内視鏡手術で腫瘍を切除する予定。
■事務所によると、古谷は9月末に定期健診を受け、レントゲン写真で肺に影が発見された。
■当初の精密検査で1度は「陰性」という結果が出たほどの早期発見だったという。
現時点では腫瘍も小さいため、開腹手術の必要はなく、近日中にも内視鏡手術で切除する予定。
手術前後にはある程度の入院は必要だが、順調ならば術後1カ月ほどで仕事復帰できるという。
■通常、肺がんは自覚症状が出にくいため発見が遅れがちで、09年には男女とも死亡数が最も多いがんの部位だった。
http://www.daily.co.jp/gossip/article/2011/10/20/0004560759.shtml

<私的コメント>
肺がん検診で早期発見されるケースもあります。
こういったケース(具体的一例)も無意味ということになるのでしょうか。
これが無意味ということなら、早期発見による手術も発見されない自然経過例も予後は同じということになってしまいます。
統計的に、肺がん検診に意味がないという結果が出ても、検診により救命される人が現実にいるということをどう解釈すればいいのでしょうか。
もっとも早期治療(薬剤や手術による介入)が有効と仮定しての話ですが。
以前、「抗がん剤は効かない」と主張する某大学放射線医が「ほかっておいても悪くならないがん(がんもどき)」もあれば「早期がんといわれてもすでに転移が起こっている場合もある」といっていました。
今回の研究は、そういった事実があることを語っているのでしょうか。



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