指をもむだけで出てくる「NO」

指をもむだけで出てくる「NO」で冷え対策 血圧を下げ、ED対策にも

ここ数日、急に冷え込んできた。男女を問わず手の指が冷たくなり、「冷え」を感じる人が多くなる季節だ。

この冷え対策として、手と手をすり合わせるというのは、誰もがよく行う対処法。

さらに、一歩進んで効果的なのが「指もみ」。
手の指の両脇を反対側の人さし指と親指でしごくようにもんでいく方法だ。
ヨガや東洋医学では、冷えに効く反射区や経絡などがあるとして、この指もみが推奨されてきたが、最新の医科学でも、この方法で血流が良くなる明確な理由がわかってきた。

そのカギとなるのが、血管の内側でできる「NO(エヌオー)=一酸化窒素」。
NOは血管(動脈)の内側の壁にある内皮細胞部分が出す物質で、血管を拡張させて血流を良くする作用がある。
従来は、どういう状況でこの血管内のNOが増えるかがはっきりしていなかったが、大阪市立大学医学部分子病態学講座の井上正康教授らの研究により、血管をもむ、ほぐすなど、物理的に刺激するとNOが増えて血流が良くなることがわかってきた。
ほかにも、歩くことで足裏の血管を刺激したときや、岩盤浴など血管に遠赤外線が当たったときにも、NOが増える。
血流がよくなり冷えがとれたり、血圧が下がったりする現象と、この血管内のNOの産生とは密接な関係があるのだ。

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血流をアップさせる“善玉NO”の働き
そもそも、この血管内のNOの働きを見つけたのが、1998年にノーベル生理学・医学賞を受賞した米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授のルイス・イグナロ博士。
私自身、これまでに2度、イグナロ博士にインタビューしたが、博士が強調するのが、「血管内でできるNOは、健康維持とアンチエイジングに不可欠だ」ということ。
そして“善玉NO”として働くのだという。

NO自体は、体に炎症が起きたときにも出るが、こちらはむしろ遺伝子を傷つける“悪玉NO”。
一方、血管から出るNOは“善玉NO”。
「血液をさらさらにし、血圧を下げ、全身の臓器や細胞を健康に保つ不可欠なものだ」というのがイグナロ博士の主張だ。

イグナロ博士によると、前述した血管への物理的な刺激のほか、血管内でできる“善玉NO”を維持する方法として、抗酸化物質を食事やサプリでとる、適度な運動をする、塩分を減らし血管の内皮細胞を元気にする、シトルリンやアルギニンを食事やサプリメントでとる――などの方法があるという。

実際にビタミンEやコエンザイムQ10CoQ10)など抗酸化物質の多くは確かに血流を良くする作用を持つ。
その理由は従来はっきりしていなかったが、血流アップに欠かせない“善玉NO”が維持されたためだと考えると合点がいく。


勃起障害は善玉NO不足、全身の動脈硬化の疑いも
この“善玉NO”にはもう一つ大きな作用がある。
それは男性の勃起に欠かせないこと。海綿体につながる陰茎動脈にNOが作用することで、血流が盛んになり勃起が維持されるのだ。

逆に勃起に支障が起きるED(勃起不全)に悩む人の場合は、“善玉NO”が全身の血管の中でも減少している可能性がある。

「EDあるいは早朝勃起(朝立ち)がないという人は、全身の血管の動脈硬化の前兆という可能性がある」と警鐘を鳴らしているのが、日本Men's Health医学会理事長の熊本悦明・札幌医科大学名誉教授。
動脈硬化は細い血管から始まるが、体の中でも陰茎の血管は特に細いため血管の障害がいち早く表れるのだという。
朝立ちの全くない人、すでにEDにお悩みの方は全身の血管についても、“善玉NO”不足で劣化している可能性がある。
一度、医師に相談したほうがいいようだ。冷え込むこの季節こそ、全身の血流の良しあしを見直したい。



善玉NOの働き
・血流を良くする
・血圧を下げる
・体の調整機能を高める
・性機能を守る(ED対策)


こんなことが善玉NOを増やす
・指の両脇や、足裏などをもむ
・遠赤外線に当たる(岩盤浴など)
・抗酸化物質を食事やサプリでとる(βカロチンリコピン、ビタミンE、CoQ10など)
・適度な運動をする
・塩分を減らす
シトルリン、アルギニンを食事やサプリとる



出典 日経新聞・Web刊 2010.12.10
版権 日経新聞



’’’<自遊時間>’’’
年が明け、当地でもインフルエンザの患者さんが毎日のように来院されるようになりました。
鼻水やくしゃみなどの感冒症状のない発熱は真っ先にインフルエンザを考える必要があります。
昨日の例では鼻水がひどかったり、症状があまり重篤感のない非典型的なインフルエンザもありました。
周囲に拡げる可能性もあります。
この時期の発熱は要注意です。
医療機関への早めの受診をお薦めします。




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