ヘビースモーカーの禁煙方法

たばこを上手にやめる 飲み薬やパッチで離脱

たばこの値上げをきっかけに禁煙した人が大勢いるようです。
ただ途中で、挫折してしまう人も少なくありません。
どうしたら禁煙が長続きするか探りました。

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喫煙歴10年以上の同僚男性記者(35)が10月中旬、社内の診療所の禁煙外来を受診した。
1日平均20本弱吸う愛煙家だが、禁煙補助薬でみごと禁煙できた兄の成功談に心を動かされた。
この薬は「チャンピックス」(一般名バレニクリン)といい、ニコチンと結合する脳内のニコチン受容体に働きかけて、たばこを吸いたいと思わなくなる作用があるという。

診療所でたばこの有害物質の一種、一酸化炭素の呼気中濃度を測ると26ppm。
「ヘビースモーカー」と分類されて保険適用になり、同じ薬を処方してもらった。

この同僚の禁煙は1カ月以上たっても続いている。
しかし、たばこを吸う夢をしばしばみるらしい。
吸いたくなった時に、口にできるアメとガムが近くにないと、不安を感じるという。

「ヘビースモーカーは、たばこをやめた後の離脱症状が強いことが多く、禁煙に失敗しやすい。
だから医療機関を受診して、飲み薬やニコチンパッチを処方してもらった方がいいと思います」と、大阪府立健康科学センターの中村正和健康生活推進部長は言う。

中村さんたちが厚生労働省の研究班で実施した、禁煙に挑戦した約670人の追跡調査によると、自力で禁煙した約570人で4年後も禁煙を続けていた人は2割以下だった。
一方、医師から禁煙治療を受けた33人は、その約4割が禁煙を続けられていた。

医療機関を受診した方が続けやすいのは、飲み薬やニコチンパッチで離脱症状を緩和できるためのようだ。
ただし、薬は決まった期間きちんと飲まないと効果が薄れる。
ニコチン依存度の高い人は、公的医療保険で認められている12週間より長く続けた方が禁煙率が高くなるという。

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飲み薬が向かない人もいるので注意が必要だ。
「バレニクリンは中枢神経に作用するため、パッチなどニコチン製剤に比べてうつ症状が出やすい可能性があります。精神疾患の人には慎重に処方する必要があります」と中村さん。

薬局で買えるニコチンガム・パッチは、たばこの本数が多かった人にとってはニコチン供給量が少なすぎる場合があるが、職業によっては向いている人もいる。

中村さんは「ガムをかみながら仕事ができるタクシーの運転手さんで、ニコチンガムで禁煙に成功した人もいます。生活スタイルを加味して禁煙方法を選んだ方が長続きします」と助言する。

「禁煙した料理人が、味覚が鋭敏になったと言っていた」と国立がん研究センター研究所の望月友美子たばこ政策研究・教育分野長。
禁煙で新陳代謝がよくなり、舌の働きもよくなるという。

「禁煙すると、直後から色々な変化が体に起きます。それを敏感に自覚することが大切です。禁煙の効果を実感すれば、禁煙を続けようという励みにもなり、禁煙が成功しやすくなります」と望月さんは言う。
(大岩ゆり)

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◆インフォメーション
チャンピックスは、現在品薄のため新規患者の受け付けができないが、来年1月から供給が再開される予定。
日本禁煙学会のサイト(http://www.nosmoke55.jp/)に、公的医療保険で禁煙治療が受けられる医療機関の地域別一覧表があるほか、「受動喫煙症」の診断が受けられる医療機関も紹介している。
たばこ規制枠組み条約の日本語訳など各種資料も。

出典 asahi.com 2010.12.4
版権 朝日新聞社




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