救えるはずの命が…相次ぐ「震災関連死」

過酷な環境、今も続く

救えるはずの命が救えない――。
3月末までに東北3県の主要病院で亡くなった282人は、震災が引き金となって命を奪われた「震災関連死」が疑われている。
これは氷山の一角とみられており、今後も増え続けることは確実だ。

東日本大震災では、津波で体をぬらした被災者に、春先でも厳しい東北の寒さが直撃した。
さらに、停電や灯油不足が追い打ちをかけた。

震災1週間後の3月18日、宮城県多賀城市の男性(79)が搬送先の「坂総合病院」(塩釜市)で死亡した。
栄養不足で低血糖発作を起こし、肺炎と脱水症を併発していた。

男性は11日、車ごと津波に流され、全身ずぶぬれの状態で避難所に入った。
直後から食事が取れず、12日朝からうめき声を上げたが、周囲の人に救急車を呼ぶ余裕はなかった。13日昼、声かけに応じなくなり、ようやく病院に運ばれた。
同病院では、肺炎や心不全など23人の関連死疑い例があったという。

仙塩総合病院(多賀城市)では、先月17日夕までに、80~90歳代の高齢者を中心に入院患者7人が次々と亡くなった。
津波で1階が浸水して多くの病院設備が機能せず、「暖房が使えず、寒さが体力を奪ったこと、震災のショックなどが死亡の間接的な理由」と、同病院の鈴木寛寿理事長は指摘する。201人いた入院患者を転院させようとしたが、他病院も病床が足りず断られたという。

沿岸被災地の避難所は、1か月たった今も過酷な環境が続く。
宮城県石巻市や女川町では下水道の設備が壊れてトイレが使えない。
トイレを我慢するため、水分摂取を控える人も少なくない。
水分が不足すると、静脈に血栓がたまり、エコノミークラス症候群を引き起こしやすくなる。
津波で海のヘドロも市街地に流れ込んだ。支給される食事はおにぎりやパンが中心で栄養状態も悪い。

アンケートでも、関連死の原因として、停電や断水、電話がつながらないなど連絡手段の喪失、燃料不足による移動手段の制約などが挙がった。
避難所の暖房が十分でなく、衛生環境も悪いとする指摘が多かった。

警察庁のまとめでは、11日現在も依然として約15万人が避難所生活を続けている。

出典 読売新聞 2011.4.11
版権 読売新聞社
<私的コメント>
避難所そのものの問題、そして満足な医療が受けれないという現状があります。

日本国憲法は、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第25条)と生存権を認め、その保障のために社会福祉社会保障を進めていくことを国の責務としています。
被災者の皆様が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保障されていないとするならば、これは憲法違反になります。


<番外編>
放射性物質、発生13日で既にレベル7相当に
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、経済産業省原子力安全・保安院が12日に「国際原子力事象評価尺度(INES)」の暫定評価を最悪の「レベル7」とする根拠になった放射性物質の放出量は、3月23日までで既に「7」のレベルに達していたことが、内閣府原子力安全委員会の推計データでわかった。

同15日頃から放出量が急激に増え、安全委は2号機で同日に起きた原子炉格納容器の損傷が影響したとみている。

安全委は、周辺環境の放射線量調査のデータなどから逆算して原発からの放出量を推定する手法を使って試算。東日本大震災発生日の3月11日から4月5日までのデータを用いた場合、大気中に放出された放射性のヨウ素131とセシウム137の総量が、3月23日の時点で約10万テラ・ベクレル(テラは1兆倍)以上になり、「7」の基準である数万テラ・ベクレルを超えた。

出典 読売新聞 2011.4.13 03時06分
版権 読売新聞社
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110413-OYT1T00030.htm
<私的コメント>
国内外から「日本政府は事故を過小評価している」との批判が出ていました。
この新聞報道でわかったのは「経済産業省原子力安全・保安院」よりも「内閣府原子力安全委員会」の方がまだ信用できるということです。
しかし、「内閣府原子力安全委員会」も「後出し」ではあります。


レベル7引き上げは専門家の判断…首相
菅首相は12日、首相官邸で記者会見し、東京電力福島第一原子力発電所事故の暫定評価の「レベル7」への引き上げについて、「専門家の判断だ。何かが遅れた、(事故を)軽くみたということは全くない」と述べ、対応に問題はないとの認識を示した。
■ 「原子炉は一歩一歩、安定化に向かっている。東電に今後の見通しを示すよう指示しており、近くその見通しが示される」とも語り、事故の収束見通しを提示する考えを示した。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110412-OYT1T00819.htm?from=nwla
出典 読売新聞 2011.4.12 21時15分
版権 読売新聞社
<私的コメント>
「専門家の判断だ」「東電に今後の見通しを示すよう指示」
誰が専門家で誰が素人なんでしょうか。
「東電」が専門家とは国民は思えなくなっています。


レベル7引き上げは当然…海外の専門家
日本政府が福島第一原発事故について、「国際原子力事象評価尺度(INES)」の暫定評価を「レベル7」に引き上げたことについて、海外ではこれを当然と考える専門家が多い。

米紙ニューヨーク・タイムズは12日、「これだけの量の放射性物質が放出されたことを公的に認めるまで、1か月もかかったのは驚き」とする米国の原発危機管理専門家マイケル・フリードランダー氏のコメントを紹介した。
原発で計七つの原子炉と使用済み核燃料プールのトラブルが同時進行していることを深刻視する専門家も多い。

一方で、チェルノブイリと同一視はできないとの指摘もある。
米サンディエゴ州立大のマレー・ジェネックス准教授はロイター通信に対し、「福島第一原発では炉心の封じ込め機能が維持されている」と強調、炉心がむき出しになったチェルノブイリの水準には達していないとの見解を示した。



微量のストロンチウム、福島の土壌から検出
文部科学省は12日、福島県飯舘村浪江町など6市町村の土壌、雑草から微量の放射性ストロンチウムが検出されたと発表した。

カルシウムに化学的な性質が似ているストロンチウム90は骨などにたまりやすく、長期の内部被曝の危険があるが、今回検出された量はいずれも微量で、人体への影響はないという。
ストロンチウムが見つかったのは、福島第一原発事故後、初めて。

このうち最も数値が高かったのが飯舘村で、ストロンチウム90が、土1キロ・グラムあたり32ベクレル検出された。



<新聞尻切り抜き帖>
朝日新聞・夕刊 2011.4.11
東日本大震災の衝撃 専門家に聞く」
日本地震学会長 平原和朗会長
阪神大震災以降、地震学は進歩した。
東北の太平洋側で起こる複雑な地震についても理解し、予測につなげられるようになってきたと思っていた。
その自身が打ち砕かれた。
地震学は、前に起こったことを基準に経験則で考える。
わずか20年程度の精密観測で、その前の千年の状態を知ることはできない。
地震学の現状の限界だ。
私的コメント;「地震予知は出来ません」という事実上の敗北宣言。)



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。