空腹時の冷たいビールにご用心

すきっ腹の落とし穴 空腹時の冷たいビールにご用心!

気温が上がるとともにビールのおいしい季節になりました。
「すきっ腹の1杯がたまらない!」という方も多いようです。
しかし、健康を考えるとそこにはさまざまな落とし穴が……。

第1は、「空腹で飲む」。
これでは胃の内壁にダメージを与えてしまいます。
アルコール度数が高いほど痛手は大きく、痛め続ければ胃壁は炎症を起こし、胃潰瘍から胃ガンになる可能性も。
第2は、「冷えている」。
冷たいものは胃の働きを低下させるため、消化不良や胃もたれの原因に。
第3は、「食べずに飲む」。
お酒ばかりでは肝臓に負担がかかり過ぎです。

では、これらのダメージを防ぐにはどうしたらいいのでしょう。

まず、飲む前には牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品をとり、胃壁にタンパク質の膜をつくること。

お酒のつまみは、タンパク質が豊富で塩分や脂が少ないもの、解毒効果がある色の濃い野菜をとるよう心がけましょう。
枝豆はその一つ。
冷えたアルコールを飲んだあとは、ショウガ、トウガラシなど体を温める食材を使った温かい料理や汁物で胃を温めましょう。

二日酔いになってしまったらシジミやアサリの味噌汁を。
またキュウリ、冬瓜、トウモロコシの利尿効果で酒毒を出しましょう! 

胃の働きが弱っていると感じたら、冷たいもの、消化の悪いものは避けて、お粥をとるのもいいですね。

そして、いつまでもおいしいお酒を楽しむために、週に1~2日の休肝日をとることもお忘れなく。

出典 DIAMOND online 2011.5.12
版権 ダイアモンド社

<私的コメント>
熱い飲み物や食べ物が食道がんの原因となるということは有名な話です。
当院でも熱いコーヒーが何よりも好物という60代の男性が食道がんになった症例を経験しました。
タイトルからは、冷たいビールがいかにも良くないような印象を受けますが、「胃の働きを低下させるため、消化不良や胃もたれの原因に」なるという書き方になっています。
つまりアルコール自体は胃潰瘍や胃ガンの原因になるものの、冷たいこと自体が「がん」の原因とは書かれていません。
夏場の冷たいビールが大好きな自分としては思わず胸をなで下ろしました。
「飲む前には牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品をとり、胃壁にタンパク質の膜をつくること」。
これは愛飲家にはちょっと無理です。
最初の一杯だけは空きっ腹で飲まして下さい。



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お酒との上手な付き合い方

飲酒の機会が増えると、二日酔いや生活習慣病の悪化などが起こりがちです。

空腹で飲むと胃から素早く吸収され、血中アルコール濃度は一気に上がり、悪酔いしやすいのです。
「食べながら飲む」は厳守しましょう。

おすすめは刺身、蒸し鶏、豆腐、鍋物の魚介など低脂肪のタンパク質を食べつつ飲み始めること。タンパク質を食べると、胃ではその消化活動が盛んに行われて、アルコールをあまり吸収しません。

そして、アルコールは消化されたタンパク質と一緒に小腸に送られ、そこで徐々に吸収されます。
血中のアルコール濃度は少しずつ上がり、肝臓でのアルコール分解も順繰りに行われます。
ですから、悪酔いしにくく翌朝は気持ちよく目覚めます。

チャンポンで飲むと酔いやすいので注意を。
特に、大きな宴会などでは、まずビールで「乾杯!」して、ある程度飲んでから好みの日本酒やワインなどに変えるのが一般的です。


ビールの泡がアルコールの吸収をよくする
ビールの泡は胃腸の粘膜を刺激して、次に飲むアルコールの吸収をよくします。
ここで、よりアルコール度数の高い酒類を飲めば、吸収されやすく血中のアルコール濃度は急上昇。
これが悪酔いの原因に。
そのうえアルコールの種類が変わると気分が変わり、自分の適量を超えがちです。
ビールで乾杯のあとは、すぐに好みのアルコールに変えましょう。

アルコールの飲み過ぎが、糖尿病や痛風高尿酸血症)、脂質異常症高脂血症)などの原因や、増悪の誘因になることはよく知られています。
特に、飲酒しながら、脂ものや甘いものを摂り過ぎることは避けて。高カロリーになり、病気の発症や悪化、肥満につながります。
アルコール、甘いもの、脂もの、この3つの「あ」を同時に摂り過ぎない心がけはメタボ対策にも大切。

二日酔いになったら、入浴やジョギングなどの運動はナンセンス。
脳卒中や心臓発作の危険もあります。翌朝は水分を摂って静かに過ごし、アルコールが肝臓で分解されるのを待ちましょう。
味噌汁、スポーツドリンク、フルーツジュースなども効果的。
飲酒との付き合い方の最大のポイントは「飲み過ぎないこと」です。
福田千晶 [医学博士・健康科学アドバイザー]
出典 DIAMOND online 2010.6.16
版権 ダイアモンド社


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