発症前のがん発見へ一歩 血液1滴で分析

病気の目印物質:発症前のがん発見へ一歩 血液1滴で分析、田中耕一氏ら開発

ノーベル化学賞を受賞した島津製作所京都市中京区)の田中耕一フェローらは8日、人の血液中で病気の進行とともに増える目印物質を高い精度で見つける方法の開発に成功したと発表した。
血液1滴で、がんなどの病気を発症前に見つけられる診断システムの実用化につながるという。
11日付の日本学士院の英文学術誌(電子版)に論文が掲載される。

田中フェローと佐藤孝明グループリーダー(分子腫瘍学)らは、「Y」の字の形をしている「抗体」が、上半分の「V」の部分を腕のようにして病気の目印物質をつかまえる機能を持つことに着目した。
抗体は、病気を防ぐ免疫を担う物質として知られる。

ハムスターの抗体にポリエチレングリコールを混ぜ合わせると、その前に比べ、目印物質の検出能力が約100倍高かった。
ノーベル賞の受賞につながった質量分析装置で調べた結果、抗体のVの部分がポリエチレングリコールで関節のように橋渡しされていた。
腕の部分を柔軟に動かせるようになり、目印物質をつかまえる能力が高まったとみられる。
文部科学省で会見した田中フェローは、ぐるぐると腕を回してこの構造を説明。
「能力が100倍の薬ができれば100分の1の値段で検査ができ、患者さんも助かり医療費もかからない」と述べた。【野田武】

出典 毎日新聞・朝刊 2011.11.9
版権 毎日新聞社


<番外編>
膵臓がん:微小カプセルで狙い撃ち 増殖抑制に成功
高分子製の微小カプセルに抗がん剤を入れ、ヒトの膵臓がんを移植したマウスに注射、狙い通りがん細胞に届き、がん増殖を抑えることに、東京大などのチームが成功した。
昨年から臨床試験を始めた。
膵臓がんは非常に治療が難しく、副作用の少ない薬になる可能性がある。
23日付の英科学誌ネイチャー・ナノテクノロジーに発表した。

がん細胞の血管は物質が通り抜ける穴が正常細胞より大きいため、適度な大きさのカプセルを使えば、がん細胞にだけ届く。
しかし、膵臓がんの穴は他のがん細胞より小さいことなどから、従来のカプセルでは通り抜けられなかった。

チームは、直径30~100ナノメートル(ナノは10億分の1)の抗がん剤を包むカプセルを作製。
ヒトの膵臓がんを皮下に移植したマウスに注射すると、50ナノメートルより小さなカプセルはがんの内部に入り込み、がん増殖を抑えた。

片岡一則・東大教授(高分子化学)は「スキルス胃がんなど他の難治性のがんへの応用も検討したい」と話す。 【永山悦子】

出典 毎日新聞・朝刊 2010.10.24
版権 毎日新聞社


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