重粒子線によるがん治療

がん治療の新しい選択肢 重粒子

がん治療ではいま、「手術」「抗がん剤投与」「放射線治療」の三つが主な選択肢だが、「重粒子線治療」という新たな治療法に注目が集まっている。
鳥栖市で2013年春、開業する「九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)」では、放射線の一種・重粒子線をがん細胞に当てて、消滅させる。
通院で治療できる半面、全額自己負担で約300万円という高額な医療費などが課題になっている。

東京都に住むYさん(72)は05年9月、前立腺がん治療で重粒子線治療を選んだ。
理由は「痛いのはいや。仕事が忙しく、早く治療が終わる」。
千葉市放射線医学総合研究所に5週間入院し、20回の照射を受けた。
照射の痛みはなかったが、退院後2~3カ月は立っているのがつらかったという。

いまのところ、再発はしていない。
「治療を受けて良かった。ただし生活の形態によって適切な治療法は違うし、また多くの医師は自分の治療法が一番と言う。セカンドオピニオンを求め、自分で勉強することが大切と感じた」という。

サガハイマットでは、照射位置がずれないように、患者ごとにプラスチックの型を作ってリハーサルをする。
その後、通院で1回から十数回の照射をして、治療は終わる。

重粒子線治療は、全てのがんで可能なわけではない。
Yさんのような前立腺がんや、抗がん剤が効きにくい黒色腫(皮膚などにできるほくろのようながん)などには向いている。
しかし、胃や腸など臓器を固定しにくい部位のがん、白血病悪性リンパ腫など血液のがん、全身転移のがんは対象外だ。

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重粒子線治療は体への負担が少なく、治療後の生活の質も維持できるが、高額なことが大きな課題になっている。サガハイマットで画像診断をした場合、画像診断分だけは健康保険が適用される。
しかし、厚生労働省が「先進医療」と定める重粒子線治療は、何回照射しても一律約300万円の自己負担だ。

「がんです」と告知され、重粒子線治療を勧められても、300万円をすぐに出すのは経済的に厳しい――。
そこで、保険会社数社はがん保険に「先進医療特約」を付け、売り込みをかけている。
毎月数十~数百円上乗せすれば、いざというときに負担の軽減につながるという。

大手保険会社のアメリカンファミリー生命保険会社アフラック)は、重粒子線治療に対応した先進医療特約(月額79円)付きのがん保険を販売している。

佐賀支社によると、管内のがん保険の新規契約件数は昨年比約1・7倍で、ほとんどの契約がこの特約を付けているという。
杉本研吾支社長(41)は「多くの人が保険には入っているが、昔の保険には先進医療特約がないことも多い。新しい治療法が確立されたら、自分の保険内容を見直すと良い」と指摘する。



施設は、公益財団法人の「佐賀国際重粒子線がん治療財団」が運営する。
重粒子線治療施設は全国に3カ所あるが、これらは独立行政法人や県立で、公益法人とはいえ民間施設は初めて。
患者数は、開業の13年度に200人、16年度に800人が目標だ。
県によると、もし赤字になっても、基本的には税金では補わない方針。

広島国際大医療経営学部の宇田淳教授(地域医療計画学)の試算では、年間約450人の患者がいないと赤字になる見込みという。
また、費用は288万円まで抑えることが可能とみる。
宇田教授は「民間の参入は今後も有り得る。300万円と固定するのではなく、他の施設のマーケットも見ながら、医療費の設定をすべきだ。立地はいいので、九州全域で囲い込みができれば軌道に乗るのではないか」と話した。

出典 asahi.com 2011.11.7
版権 朝日新聞社


<関連サイト>
「先進医療」重粒子線がん治療(放射線医学総合研究所)視察
http://blogs.yahoo.co.jp/hokensoudanfp/31535067.html





<私的コメント>
イラストには膵がんがとりあげられていなかったので少し調べてみました。
膵がんも重粒子線が有効のようです。

先端医療の現場
世界に先駆けた「重粒子線治療」で膵がん治療に希望の光
http://www.gsic.jp/cancer/cc_12/rd/index.html