子宮がん、治療の負担減  

子宮がん、治療の負担減   臓器温存で出産可能にも 

年間約2万6千人が罹患する子宮がんは女性で5番目に新規患者数が多いがんだ。子宮頸がんと子宮体がんの2種類に分かれるが、患者数は増加傾向にある。

出産を希望する患者に対して標準治療だけでなく新たな治療法で選択肢を増やすほか、患者の負担を減らす取り組みも目立っている。

 

子宮は洋ナシを逆さまにしたような形で、胎児が宿る袋状の体部が上にあり、筒状で膣につながっている頸部が下にあり、がんの治療法は異なる。

子宮頸がんは主に性交渉を通じて感染する「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が原因。

がんが子宮頸部の表面にとどまっている早期ならば、円錐状に切除する円すい切除術が基本だ。

がんが子宮の筋肉部分まで浸潤している場合では、子宮を全摘する。

 

子宮全摘が必要な場合でも出産を望む患者に新たな治療法として「広汎子宮頸部切除術」を実施している医療機関もある。

この術式では子宮頸部と周辺を広範囲に切除し子宮体部を残すことで、出産できる可能性がある。

 

しかし、子宮を残せたとしてもその後に妊娠・出産できるかどうかは困難な課題がたくさんある。

 

放射線治療はがんが転移するなど進行した3期以上だけでなく、初期でも有効だ。外科手術との効果に差はないとされるが、日本では手術を選ぶ人が多い。

放射線治療でも放射線腸炎などの副作用が出てくることはある。

排尿障害やリンパ浮腫といった手術特有の後遺症を避けたい人や、合併症のある人、高齢者が選択する傾向があるが、原則的には患者の選択に委ねられる。

 

早期の子宮頸がんも18年から保険適用で腹腔鏡手術を受けられるようになった。

ただ同年の海外の臨床研究では開腹での広汎子宮全摘手術よりも再発率が高く、生存率が劣ることが報告されたため、慎重な対応が求められる。

 

浸潤している子宮頸がんは骨盤リンパ節に転移している可能性もある。

そうした場合では術後に放射線治療薬物療法を組み合わせた化学放射線療法を追加しており、再発を減らす効果が期待できる。

骨盤リンパ節転移が強く疑われる場合は手術はせず、初めから同時化学放射線治療をすることで、手術に術後照射を加えた治療と同等の効果を得ることができ、重篤な治療関連の後遺症を減らすことができる。

 

放射線治療は体の外からリンパ節領域を含めた一定範囲に照射する方法(外照射)と、膣から内部に照射する方法(膣内照射)がある。

照射する機械のコンピューターで制御できるようになり、ともに精度は高まっている。

 

傷小さく、出血少なく 腹腔鏡や手術支援ロボ

子宮体がんは女性ホルモンのアンバランスが関わっている。

月経不順や肥満、妊娠経験がないことなどから「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の刺激を長期間受けることで、発症するリスクが高まるとされる。

不正出血といった症状で見つかることが多く、6割ほどが初期で見つかるが、食生活の変化や出産の減少で近年、患者数は子宮頸がんを上回っている。

腹腔鏡手術は開腹手術に比べて傷が小さく、出血量も少なく、早い回復が期待できる。

より正確に切除などができる手術支援ロボット「ダビンチ」を使った手術も普及しつつある。

患者の大半が腹腔鏡およびロボット支援手術を選ぶ。

 

ごく初期の患者に限って、切除せずに黄体ホルモンを投与する治療法もある。

出産できる可能性が残るが、がんが消える割合は6割ほどという。

ただ標準治療ではなく、リスクを十分に理解してもらって、最終決断は患者が行う。

 

 

低リスクの患者には腹腔鏡手術を実施し、全体の4分の1が腹腔鏡手術の対象だという医療機関もある。

子宮体がんは手術では、摘出した組織を精査してから進行期を判断する。再発リスクを検討したうえで、必要であれば、リスクを低減するために抗がん剤などで追加治療するのが一般的だ。

手術後の再発リスクが「中」だった場合の一部では、追加治療をしないという選択肢もある。

いずれにしろ、患者の負担軽減と治療効果が問題となる。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2019.9.30