新型コロナ検査の感度と特異度

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味

現在のところ、新型コロナの検査として広く使われているのはPCR法だ。

微量のDNAでも、2倍、4倍、8倍、16倍…とDNAを増やすことができる。新型コロナウイルスRNAウイルスですので、最初にRNAをDNAに変換する作業があるが、増幅の仕組みは同じだ。

 

ところで、PCR法による新型コロナの検査がどれぐらい正確かが誰もが気になるところだ。

新型コロナは新興感染症であり、十分に信頼できるデータはまだないが、だいたいの目安ならわかっている。

日本プライマリ・ケア連合学会の診療の手引きによれば、「PCR検査はウイルスゲノムを検出するという原理から、一般論として感度は低く、特異度が高いと考えられます。初期のPCR検査で陰性だが後日陽性となった患者等の検討により、感度は30~70%程度、特異度は99%以上と推定されています」とある。

ほかの専門家のコメントでもだいたい同じぐらいだ。

参考

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引

https://www.primary-care.or.jp/imp_news/pdf/20200311.pdf 

 

感度とは、新型コロナウイルスに感染している人に検査をして、正確に陽性という結果が得られる割合だ。

感度が70%だとすると、感染者100人に検査して陽性が70人、陰性が30人になる。

この30人は偽陰性だ。

原理的には微量のDNAでも増幅できるはずのPCR法でも、検体にウイルスが含まれていなければ正確な結果が出ない。

正しく検体を採取できなかったり、検体を採取した場所にウイルスが排出されていなかったりすると、ウイルスに感染していても偽陰性になる。

 

偽陰性なのに感染していないと誤解して出歩くと、他の人に感染させるかもしれない。

PCR検査は感度がそれほど高くないので、検査で陰性であっても感染していないと安心はできない。

せきや発熱といった症状がある場合は、検査するしないにかかわらず、外出を控えたい。

そもそも、新型コロナでなくてもインフルエンザそのほかの呼吸器感染症かもしれない。

 

特異度は、感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られる割合だ。

推定では特異度99%以上と高い。

つまり、偽陽性(感染していないのに誤って陽性になること)は少ないのだ。

何百人も調べて陽性者が出ていない地域もあるということは、新型コロナのPCR検査は特異度が高いといえる。

 

感度がそれほど良くない以外にも、PCR法にはいくつか欠点がある。

連鎖反応を起こす過程で温めたり冷やしたりを繰り返す必要があり、結果が出るまでに時間がかかる。

また、鼻もしくはのどから検体を取るときに医療従事者が感染するリスクがある。

 

現在、PCR法以外のさまざまな検査法が開発中だ。

迅速に結果が出て感度も特異度も高い検査ができればいいのだが、それはかなり難しい。

しかし、たとえば特異度が低くても感度が高い検査があれば、PCR法と組み合わせてよりよい診療が可能になる。

複数の検査法が実用化され、それぞれの特性を理解した上でうまく使い分けができれば、新型コロナの対策も進むことになる。

 

PCRとは

ポリメラーゼ連鎖反応を英語で言ったときの頭文字からとった用語。

「ポリメラーゼ」とはDNAなどを合成する酵素のことで、「連鎖反応」は同じ反応

が繰り返して起こること。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞デジタルアピタル)2020.3.23