唾液抗原検査、精度に懸念 

唾液抗原検査、精度に懸念 空港検疫で導入拡大、迅速だが・・・

日本に入国時の空港検疫で導入が進む唾液を使った新型コロナウイルスの「抗原定量検査」は速やかに検査結果が分かり、ビジネス関係をはじめ海外との人の行き来の制限緩和に役立つと期待されている。

しかし、精度がPCR検査より低く、水際での検査をすり抜ける感染者の増加を懸念する専門家もいる。

 

無症状の人への唾液による抗原定量検査は7月17日に認められ、成田、羽田、関西などの空港で順次導入されている。

PCR検査は結果が出るのに少なくとも数時間かかるのに対し、抗原定量検査は約30分で判明する。

簡易検査キットの抗原検査と異なり専用機器が必要だが精度がより高い。

 

検査精度について、加藤厚労省はこの日の会見で、「PCR検査と比較して高い一致率を確認できた」と述べた。

 

しかし、その2日前に開かれた厚労省感染症部会の資料によると、鼻の奥の粘液を検体に使ったPCR検査で陽性だった無症状者37人のうち唾液の抗原定量検査で陽性は28人。

陽性者一致率76%だった。

PCR検査で陽性の4人のうち、唾液の抗原定量検査だと1人が見落とされる可能性があることを示している。

 

陽性者一致率が76%だったことについて、厚労省は「陽性が一致しなかったのはウイルス量が少ない検体。ウイルス量が少なければほかの人にうつすリスクも低い」と説明する。

 

国内の空港検疫でPCRや抗原定量検査は1日千数百件行われる日が多い。

検査能力を増やすため抗原定量検査が一層普及すると、見逃しのリスクは高まる。

 

また、政府はビジネス関係者らの出入国の制限緩和に向けて中国、韓国、台湾など16カ国・地域と交渉。

シンガポールとは9月中の往来再開を目指すことで合意している。

とくに短期出張者は、自国を出国前にもPCR検査で陰性を確認、日本到着後も2週間は公共交通機関を使わないことや滞在先と仕事先の往復に限るなどの条件を設ける一方、自宅やホテルでの2週間の待機を免除する。

 

到着時に主に唾液を使った抗原定量検査を受けるが、政府関係者は「自国でのPCR検査でも陰性を確認しており、二重のチェックとなる」と強調する。

 

ある専門家は「すり抜けはPCR検査でも起きるが、国はこうしたリスクをきちんと国民に知らせてほしい」と指摘する。

そして、他の専門家は「学問的にはスクリーニングに使うのは推奨できない。ただ、大量の検査が必要となる現実を考えると、感染者のすり抜けが少し増えても仕方ない面がある」と語る。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.8.21