スパイスで夏バテ撃退 抗酸化作用や炎症を抑える効果も
暑さでバテ気味なときには、あっさりした食事もよいが、カレーのような香り豊かなスパイスを使った料理も食欲を刺激する。
スパイスの使い道は多彩で、生活の中に一振り加えるだけで世界が広がる。
健康効果が確認されたという報告もある。
ハウス食品グループ本社によると、1年にカレーを食べる平均回数は男性で25回以上、女性で18回以上。
外食や家庭を含めた国内のカレー全体の市場規模は6570億円(2019年)に上るという。
市販のカレー粉やルーにはスパイスが20種類以上ブレンドされている。
「辛い」というイメージがあるが、カレー粉の中で辛いスパイスはトウガラシのみだという。
中南米原産のトウガラシは、他のスパイスと比べて世界に広まった歴史は浅く、辛さはカレーの本質ではない。
ブレンドされているスパイスのなかには、漢方の生薬として使われているものも多い。
カレーらしい香りをもたらすクミンは馬芹(ばきん)、肉などのにおいを抑えるクロープは丁子(ちょうじ)として胃腸に効くとされる。
近年、健康に効果があると報告されている。
例えば、シンガポールなどの国際研究チームは12年、55歳以上の約2500人を対象に生活習慣と健康状態の関係を調べたところ、カレーをよく食べる人は、あまり食べない人と比べて肺活量が高かった。
喫煙者で比較すると10%の差があり、体内のダメージを抑える効果が示唆された。
カレーのスパイスには、抗酸化作用や炎症を抑える効果も確認されている。
ハウス社と広島大は、スパイスの入った普通のカレーとスパイスの入っていないカレーを用意し、空腹時と食後で血管の弾力性の変化を調べた。
一般的に、食後は酸化ストレスなどによって低下し、その後元に戻る。
弾力性の急激な変化や、長年の酸化ストレスの蓄積は動脈硬化などのリスクとされる。
スパイスなしのカレーを食べた人では、食前に比べて食後は弾力性が低下した。
一方、スパイス入りのカレーを食べた人では、食後の方が弾力性が高くなった。
また、ハウス社と京都大によるヒトの細胞に微小粒子物質PM2.5を加える実験では、細胞の培養液にカレー粉の抽出液を加えると炎症を抑えられた。
炎症を抑える効果は、クローブやウコンなどの単体のスパイスでも確認されているという。
とはいえ、毎日、カレーを食べ続けるのは無理がある。
どうすれば日常的にスパイスを取り入れられるだろうか。
初めて取り入れるスパイスとしてホール(粒)のクミンとカルダモンを専門家は勧める。
クミンは一般的なスーパーで、カルダモンは輸入食材が多めのスーパーであれば扱っているという。
クミンはあらゆる炒めものに使える。
焼きそばなんかにも合う。
油を熱しているところに小さじ1杯のクミンを入れ、あとはいつもの味付けで。
トンカツや唐揚げといった揚げものの衣に混ぜるといった使い方もでき、香りが加わって目新しくなるという。
また、カルダモンはいろいろな飲み物に合わせられる。
つぶす必要があるが、すり鉢やすりこぎは不要で、まな板に置いて、めん棒などで軽くゴリゴリとつぶし、割れれば十分だ。
コーヒーに入れると、ひと味違った味わいになる。
カルダモンコーヒーはサウジアラビアなど中近東で飲まれている。
また、紅茶やかんきつ系のジュースとも相性がよい。
入れる量は1杯に2、3つまみ程度だ。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.8.22
<関連サイト>
スパイスのちから