難治性ぜんそくに新薬

難治性ぜんそくに新薬

気道が炎症で狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューと鳴って息苦しくなる気管支ぜんそく
子どもの慢性疾患の中で最も多く、20人に1人程度いるとみられている。
大半は、地道に治療を続ければ重い発作を防ぐことができる。
難治性のぜんそくには、治療効果の高い新薬が子どもにも使えるようになった。

◎アレルギーの炎症、長期的に抑える
ぜんそくは、ダニなどに対するアレルギー反応で気管支の細胞に炎症が起き、気道が狭くなって発症する。
風邪などが引き金になり、気管支の周囲の筋肉が収縮すると、気道がさらに細くなって発作を起こす。

かつては、発作時の呼吸困難を解消するため、「気管支拡張剤」で気道を広げるのが主な治療だった。
しかし、1980年代以降は発作がなくても炎症は慢性的に続いていることがわかってきて、炎症を抑える治療を継続するようになってきた。
 
今は、炎症を長期的に上手に管理して、ぜんそく症状が出ないようにしていくのが治療の根本だ。

◎高額で親の負担も
炎症を抑えるには、吸入ステロイドや、気管支の収縮などを抑制する「ロイコトリエン受容体拮抗薬」などを使う。
重症度によって薬の種類や量は異なる。
 
薬の改良などで、重い発作で入院が必要になる子どもは従来の5分の1以下に減り、軽症や中等症が増えた。
ただし、完治は難しく、半数程度は成人してもぜんそくが残る。
 
ぜんそくを長期的に上手に管理するには、「症状が落ち善いてきたから」と勝手に薬をやめたり、逆に薬を過剰に使ったりしないことが大切だ。
月1回程度、病状の管理状態をチェックし、適切な治療を選ぶ必要がある。 
 
子どもは成人に比べ、超重症のぜんそくが少ない。
それでも5%程度は、ステロイド剤を含めた複数の薬を使っていても重い発作が起こる難治性だ。
 
昨年(2013年)8月、難治性のぜんそくの子どもに、新薬が使えるようになった。
注射薬で、免疫細胞の1種がアレルギー反応を起こす物質を出すのをブロックする。
 
子どもはアレルギー・反応が原因のぜんそくが大半なので、この薬で改善することが多い。
 
問題は価格で、1本3万~7万円する。
月数本必要な子もいる。
東京都など小児ぜんそくの治療代が全額公費負担の地方自治体も一部にあるが、補助がないところでは保護者の負担が大きい。

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参考
朝日新聞・朝刊 2014.1.28


<関連サイト>
症喘息の新しい治療薬:オマリズマブ
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/medical_info/presentation/201111.html
・2009年3月にオマリズマブ(商品名:ゾレア??)が発売された。
これは喘息の発症や増悪に重要な免疫グロブリンE(IgE)という分子に体内で結合して、治療効果を発揮する薬(分子標的薬)だ。
ゾレア??を2~4週おきに皮下注射で使用しはじめた途端に、ほとんど喘息発作を生じず普通の方と同じように日常生活を過ごすことが可能となり、長年続けていたステロイド薬の内服も完全に中止できるといった、劇的な効果を経験した患者さんも多い。
・ただし、この薬はアレルゲン(ほこり、ダニ、ネコなど)に対するアレルギー反応があることが検査で証明されているタイプの喘息患者さんにしか効果がありません。また、治療をやめてしまうと効果がなくなるため、2~4週毎に外来で注射を受ける必要があります。注射する薬の量や回数は体重と血液検査の結果によって決まります。


ヌーカラ:重症気管支喘息に新しい抗体製剤
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201605/546949.html
(要パスワード)
・2016年5月25日、ヒト化抗IL-5モノクローナル抗体メポリズマブ(商品名ヌーカラ皮下注用100mg)が薬価収載された。

・適応は「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」で、成人及び12歳以上の小児に1回100mgを4週間ごとに皮下注射する。

・第一選択薬の吸入ステロイド薬(ICS)や他の薬剤との併用療法を施行しても予後に影響を及ぼす可能性のある喘息増悪をきたす重症患者においては、2012年にIgEに対するモノクローナル抗体のオマリズマブ(商品名ゾレア)が登場したが、いまだに治療選択肢が限られる現状があった。

気管支喘息の病態に関して、2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)により産生されるIL-5が好酸球の増殖・活性化を介して気道炎症の病態形成に重要な役割を担っていることが示されている。
その生物活性を中和するモノクローナル抗体であるメポリズマブが開発された。

・メポリズマブは症状がコントロールできない重症の気管支喘息の治療薬で、オマリズマブに次ぐ薬剤である。