金属アレルギー思わぬところで

歯の治療、楽器演奏…金属アレルギー思わぬところで

原因の種類知って回避 肌の調子・汗にも注意
身の回りにはたくさんの種類の金属製品があふれており、金属アレルギーの人は油断ができない。
歯の治療や管楽器を演奏したあとで、アレルギー症状が出る人もいるという。
金属に触れたところだけで皮膚炎が発症するだけでなく、手足に発疹が出ることもある。
金属アレルギーを見過ごさないよう注意したい。

都内に住む40代のA子さんは昨年、手のひらに膿(うみ)がいっぱい出てきた。
そのうち治るだろうと放っておいたが、いっこうによくならない。
皮膚科を受診すると「歯を治療しましたか」といわれた。

確かに1年ほど前に虫歯を削って合金を詰めていた。
紹介された病院の皮膚科で某歯科大学教授に診てもらうと、金が原因でアレルギーが起きていた。
そこで歯に詰めた合金を別タイプに替えると症状が改善。
膿がほとんど出なくなった。「歯が原因とは……。びっくりした」とA子さんは振り返る。

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数年後に発症も
金属アレルギーは主に肌に金属が触れて起こる。
汗などの影響で金属の一部が溶け出してイオン化し、体内のたんぱく質と結合してアレルギーの原因物質に変わる。
この物質に対し、体内の免疫細胞は敵とみなし攻撃・排除しようとする。この準備が整うと、その金属が触れるたびにアレルギー反応が起こる。
早い人で2~3日後、遅いと数年後に起こることもある。

症状は主に皮膚に現れる。
金属が触れた肌が赤く腫れ、かゆくなったり、発疹ができたりする。
金属に直接触れていない手足などに水疱や膿がたまったり、体に少し盛り上がった発疹ができたりするケースもある。
口の中の粘膜や舌に白いコケのようなものができたり、口内炎や唇が腫れたりする人もいる。
アレルギーの原因物質によっては接触していないところでも症状が出る。

原因となる金属は人によりまちまち。
最も多いのがニッケルで、コバルトやクロム、パラジウム、水銀などもアレルギーを起こしやすい。
金やプラチナ、銅でもまれに発症する。
それまで特定の金属に接しても何ともなかった人が突然、発症するケースもある。

ニッケルはめっき用金属として、腕時計やピアス、イヤリング、眼鏡フレーム、下着の金具など多くの製品に用いられている。
クロムは皮革製品のなめしなどに使われる。


テストで判定
アレルギーが起きた場合、原因金属を突き止める検査が「パッチテスト」だ。
背中や腕などに約20種の金属をテープで微量貼り付け、判定のために2日間そのまま過ごす。
テープをはがした後と1日後、5日後に皮膚の反応を調べ、原因金属を明らかにする。
総合病院や一部の医院、歯科医院などで受けられる。
「最近は歯科医師と歯科技工士、皮膚科医師などが連携した治療も一部で始まっている」と日本歯科大の山口教授は話す。

歯に詰めた合金の種類は治療した歯科医院に聞けば分かるケースも。
松村院長は「ここ数年の治療例では、主治医は合金中の金属の種類を把握している」と指摘する。
ただ昔の治療だと分からないことが多く、歯の詰め物を少しだけ削り成分を分析する。

最近は金属の代わりに樹脂を使う治療も増えているが、失った歯をまるごと補う場合の多くは金属が必要になる。
インプラント(人工歯根)治療ではチタンを使っており、今のところ深刻なアレルギーの例はないという。

歯の治療以外で思わぬ金属アレルギーの例が、管楽器の演奏だ。
トランペットに施された銀めっきや、トロンボーンに使われた真ちゅうに含まれる銅が原因で唇が腫れる。
塗装がはがれた携帯電話で長時間話して、耳が腫れた例もある。

チョコレートやナッツなど食品の一部にもニッケルなどの金属が微量に含まれている。
通常は問題ないが、ピアスなどで金属にかぶれるようになった人の中には、食品中の金属に反応する例もある。
予防のために、皮膚の状態が悪いときや汗をかく際には、ニッケルなどの金属を含むアクセサリーを長時間身につけるのは避けたほうがよい。 (長谷川章)


<関連サイト>
歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020 金属アレルギー
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