腎がん治療、新薬が変えた 手術・免疫療法以外の選択肢に
効果的な抗がん剤がほとんどなく、治療が難しいといわれていた腎細胞がん(腎臓がん)に対して、新しいタイプの抗がん剤がここ数年、次々と発売されている。がんだけを攻撃する分子標的薬だ。副作用を防ぐ工夫も編み出され、治療の選択肢が広がっている。
●転移のがんにも効果
福島県に住む小学校教諭の女性(38)がおなかのしこりに気付いたのは2006年、長男を出産した直後だった。
腎臓がんと診断された。
手術で腎臓を一つ摘出。転移予防のため、免疫療法の一種インターフェロンを始めた。
福島県に住む小学校教諭の女性(38)がおなかのしこりに気付いたのは2006年、長男を出産した直後だった。
腎臓がんと診断された。
手術で腎臓を一つ摘出。転移予防のため、免疫療法の一種インターフェロンを始めた。
翌年、肝臓に転移が見つかった。
1年後、肺に転移が見つかった。別の免疫療法を始めたが、副作用がひどく、投与のたびに高熱が出て、貧血になった。
1年後、肺に転移が見つかった。別の免疫療法を始めたが、副作用がひどく、投与のたびに高熱が出て、貧血になった。
主治医が山形大医学部の冨田善彦教授(腎泌尿器外科)を紹介してくれた。
腎臓がんの薬に詳しく、未承認薬の臨床試験(治験)も積極的にしているからだ。
女性は08年2月、すがる思いで冨田さんに会いに行った。
腎臓がんの薬に詳しく、未承認薬の臨床試験(治験)も積極的にしているからだ。
女性は08年2月、すがる思いで冨田さんに会いに行った。
選択肢の一つとして、従来の腎臓がんの薬とは働き方が異なる新しいタイプの薬の治験に参加することもできる、と言われた。
その2カ月後に、やはり新しいタイプの薬が国内で初めて売り出されることを知っていた。
その発売を待つこともできたが、早く治療を受けたく、治験への参加を決めた。
その発売を待つこともできたが、早く治療を受けたく、治験への参加を決めた。
薬を飲み始めてすぐ、日常生活が通常に送れるようになった。
画像検査の結果も良好で、約1年後、職場復帰を果たした。
画像検査の結果も良好で、約1年後、職場復帰を果たした。
腎臓がんでは2008年4月に最初のネクサバール(一般名ソラフェニブ)が発売になったのを皮切りに、10年9月までにスーテント(スニチニブ)、アフィニトール(エベロリムス)、トーリセル(テムシロリムス)が出た。
今年さらに2種類出る予定だ。
今年さらに2種類出る予定だ。
尿管なども含めた腎臓全体のがん患者は年約1万人。
大半を腎細胞がんが占める。
治療は外科手術が中心。放射線治療の効果は限定的だ。
従来は、効果のある抗がん剤もほとんどなく、手術の次の選択肢は、インターフェロンやインターロイキンによる免疫療法だった。
大半を腎細胞がんが占める。
治療は外科手術が中心。放射線治療の効果は限定的だ。
従来は、効果のある抗がん剤もほとんどなく、手術の次の選択肢は、インターフェロンやインターロイキンによる免疫療法だった。
分子標的薬で、3~4割の患者の腫瘍(しゅよう)が小さくなるとされている。
小さくならなくても、比較的長い間、腫瘍が大きくならない患者も少なくないという。
転移したがんにも効果がある。
小さくならなくても、比較的長い間、腫瘍が大きくならない患者も少なくないという。
転移したがんにも効果がある。
腎臓がんの分子標的薬は皮膚や粘膜に副作用が出やすい。
ネクサバールやスーテントなどでは手足の皮膚が厚くなり、何かに触れるだけで激痛が走り、靴もはけないことがある。
アフィニトールやトーリセルでは口内炎が出やすく、重症化すると痛くて、食事もできない。
薬を使い始めた当初、これらの副作用のために途中で多くの患者が服薬を中断した。
ネクサバールやスーテントなどでは手足の皮膚が厚くなり、何かに触れるだけで激痛が走り、靴もはけないことがある。
アフィニトールやトーリセルでは口内炎が出やすく、重症化すると痛くて、食事もできない。
薬を使い始めた当初、これらの副作用のために途中で多くの患者が服薬を中断した。
冨田さんは「治療のためには、効果の出る量を必要な期間、服薬し続ける必要があります。そのためには生活の質を落とす副作用は予防する、という取り組みも大切です」と話している。
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