花粉症対策のウソ

「夜と雨の日は安心」は大間違い 花粉症対策のウソ

スギ花粉が飛散するシーズンになった。
ちまたには、様々な花粉症対策や花粉症に効く食べ物などの情報があふれているが、その中には間違った情報や古い情報も少なくない。
花粉症対策のウソとホントにはどんなものがあるのだろう。

食品は安全確認
今年2月、花粉症の症状を改善するとして販売されていたハーブ「バターバー(西洋フキ)」とバターバーを含む食品に、肝障害を引き起こす疑いがあるとして、厚生労働省は消費者に摂取を控えるよう呼びかけ、事業者にも販売中止を指導した。

このように、花粉症に効くとされているものには、落とし穴が潜む場合がある。
ハーブやサプリメントを飲む場合は、厚労省などの情報サイトで安全性の確認をした方がいい。

一般に花粉症に良いとされる食べ物や飲み物は、本当に効果があるのだろうか。
食品の中には、花粉症の症状を抑えるというデータがあるものもある。
だが、期待できる効果は薬の半分以下。
「症状の軽い人向き 」というのが一般的見解だ。

食品で効果が検証されている代表例は、免疫の調節に関わる乳酸菌と、抗酸化作用を持つポリフェノールを含み、炎症を抑える効果が期待される食べ物。
乳酸菌でも種類によって効果が異なるので、花粉症に対する効果が検証されているものを選ぶ必要がある。

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大量飛散した昨年に比べ、今年は飛散量が少なくなりそうなので、症状が軽くて済むと期待する人もいる。
確かに花粉が多く飛ぶ日は減り、ひどい症状の日は少なくなる可能性はあるが、ずっと症状が軽いわけではない。

一方、夜間や雨の日は花粉が飛びにくいので、対策をしなくても良いと考える人もいるが、これもダメ。花粉飛散数が多い時間帯は昼前から夕方だが、夜間の飛散も珍しくなく、日中落ちた花粉が風などで再飛散することもある。
うまく花粉を回避するには、環境省のウェブサイト『はなこさん』などでリアルタイムの花粉飛散情報を確認するといい。

また、雨の日は、降り始めに空気中の花粉が雨とともに落下して飛散数が増えることもある。
雨の翌日は花粉飛散数が翌日回しになり、倍量飛ぶと考えた方がいい。

花粉症対策として推奨されているのが、マスクやゴーグルなど、花粉から鼻や目を防御する品々だ。
コンタクトレンズも、角膜を覆うため、ある程度花粉付着を防ぐ効果がある。
ただし、かゆみの症状がひどくて目をいじってしまったり、結膜が充血するなどの炎症が起こっている場合には、コンタクトレンズの装用を控えた方がいい。

目の水洗いがいいとされたこともあるが、最近では否定的だ。
目を刺激することになり、かえって症状が悪化することもある。

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こすらず顔洗い
女性の場合、花粉を落とすためにゴシゴシと顔を洗うケースもあるようだが、これも間違い。
ドライスキンや荒れた肌は花粉の影響を受けやすい。
化粧を落とす際には、なるべくこすらず、優しく水で花粉を落としてから、クレンジングするのが望ましい。

様々な花粉症対策を行っても、症状が抑えられなくなったとき、市販薬と医療機関で処方してもらう薬のどちらがいいのだろうか。
通常、処方薬の方が高い効果が得られ、副作用が少ない。
ごく軽症で市販薬で満足できる場合を除き、医療機関を受診し、薬を処方してもらうのがいいようだ。

処方薬のメリットは、その人の症状にあわせた薬を処方してもらえることだ。
とはいえ、受診が面倒という場合には、市販薬を試してみるのもいい。
最近では、処方薬と同じ成分のものが出ている。

薬に関しては眠くなるほどよく効くと考える人が多いが、それは誤解だ。
最近では、眠気を起こさずにアレルギー症状だけを抑えるタイプの薬が多く出ている。
医学の世界では5年前の常識は疑えともいわれる。
新しく正しい知識による花粉症対策を心がけたい。

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集中力落ちない市販薬も
花粉症のアレルギー症状を起こす成分の一つがヒスタミンだ。
花粉が鼻の粘膜などに付着すると体内でヒスタミンが作られ、鼻粘膜にある「ヒスタミン受容体」に結合して、アレルギー症状を起こす。

一方、ヒスタミンは脳内で集中力や記憶力を高めたり、覚醒させたりする重要な役割を果たしている。

花粉症薬の成分、抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンと受容体が結合するのを防ぎ症状を抑える。
このため、古いタイプはアレルギー症状とともに脳内のヒスタミンの作用も抑え、眠気などが起こっていた。

眠気と異なり、集中力や記憶力の低下は自分でも気づかずに起こる。
こうした状態を鈍脳といい、事故、けが、試験の成績低下などの原因となる。
最近は、脳内には入らずアレルギー症状だけを抑えるタイプの抗ヒスタミン薬が登場した。
車の運転や試験の時などには、鈍脳を起こさずに症状を抑えるタイプの薬を選んだ方がいい。
現在は、市販薬、処方薬ともにこのタイプがあるので、医師や薬剤師に相談するといい。
(ライター 武田 京子)
出典 日経プラスワン2012.3.10(一部改変)
版権 日経BP

<私的コメント>
花粉症の記事の内容についてはいろいろ新しい考え方の勉強になりました。
しかし、一番印象的だったのは「医学の世界では5年前の常識は疑え」という言葉です。
確かに当っています。
しかし、このことを認めてしまうと今やっている日常診療は何なのかということになってしまいます。
臨床医としては悩みが1つ増えてしまいました。