心房細動アブレーション

心房細動アブレーション… 不整脈発生源 熱で焼く

カーテルで高周波電流/早期の患者9割が完治
心臓の上半分(心房)が小刻みに震える心房細動。
不整脈発作の発生源を熱で焼いて震えを抑える心筋焼灼術(カテーテル・アブレーション)が普及し、早期の患者は9割が完治するようになった。

心房は、静脈から心臓に戻ってきた血液を一時的にためる役割がある。
血液を送り出す心室と同じく、通常は1分間に60~80回拍動している。

ところが心房細動では、心臓を規則的に動かす電気信号が、心房の一部で不規則に数多く発生する異常発火が起こり、心房に600~1000回もの震えが生じ、脈が乱れる。
40歳代から増え、患者数は200万人以上とみられている。

震えが時々生じて自然に止まる「発作性」から始まることが多いが、治療せずにおくと頻度が増え、震えが止まらない慢性型に移行する可能性が高い。
就寝時の動悸や胸の圧迫感などで気づく人もいるが、自覚症状がないまま慢性化する人も多い。

健診の心電図検査は、検査中に起こらないと見逃されてしまう。
早期発見には、普段から手首などで脈を測る習慣を持つと良い。

慢性化しても、心室の働きが正常なら命の危険はない。
ただし、左心房の隅に血液がたまって血栓(血の塊)ができやすくなり、脳に運ばれると血管が詰まって脳梗塞の原因となる。
心房細動があると、脳梗塞の発症が5~10倍高まる。

治療は、心拍数を抑える薬や、血を固まりにくくする薬(ワーファリンなど)を用いる。
だが、薬は震えの原因を治すわけではないため、ずっと飲み続ける必要がある。

これに対し完治を目指す治療がカテーテル・アブレーションだ。
先端に電極がついたカテーテル(細い管)を、脚の付け根の血管から心臓まで進め、高周波電流を流して、異常発火の発生部位を50度前後の熱で焼く。

手術は3、4時間。1か所あたり30秒~1分間熱を加え、焼くポイントを変えて20回、30回と繰り返す。
4日~1週間の入院が必要だ。

早期であれば、異常発火は肺静脈が左心房とつながる部分にとどまり、治療しやすい。
慢性化すると、異常発火の場所が心房全体に散らばる。

完治の割合は早期(発作性)だと90%以上と高い。
発作が何日も続く場合だと70~80%、慢性化すると50%以下に低下する。

日本循環器学会は今年度改訂した「不整脈の非薬物治療ガイドライン」で、心筋焼灼術を、有効な根拠のある治療に位置づけた。
治療に伴う危険性としては、手術中に心臓に穴が開いたり、脳梗塞が起きたりすることが1%以下である。

年齢や自覚症状の程度、進行度を総合的に勘案して治療を受けるかどうか決めることが肝心だ。
若い人には特に勧められる。
早期発見のため、年に1、2回は心電図検査を受けてほしい。(佐藤光展)

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出典 読売新聞 2012.3.10
版権 読売新聞社


<自遊時間>
以下、日経新聞「春秋」に出ていた記事です。
筆者のセザンヌに対する思い入れが強いのか、このコーナーには珍しくセザンヌの話に終始しています。セザンヌの好きな方は多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人で、桜が満開の4月8日に乃木坂の国立新美術館に行って来ました。


この画家の絵を見つめ、発した言葉に触れると、いかに自分の目が目の役目を果たしていないか身にしみる。そして頑固者に諭されているような……。
東京・六本木の国立新美術館で開いている「セザンヌ展」は、そんな展覧会である。

▼例えば、セザンヌは言っている。
「画家は、自らのうちで先入主の声をすっかりだまらせなくてはいけない」(「絶対の探求者」山梨俊夫編訳より)。
もちろん画家だけの話ではない。
ものを見るとき、人を見るとき、先入観ほど愛想のいい厄介者はない。
これさえあれば見ずして見たような気になれるのだから。

▼会場には、代表作を含め故郷の南仏プロバンスとパリで描いた90点ほどが並んでいる。
お気に入りの作品は人それぞれでも、画家が徹底して先入観や想像力を嫌ったのはどの絵にも見てとれる。
「色はまるで自分たちが望んでいる通りに、気ままに折り合いをつけていく」というそのままの色が画布にのっている。

▼「自然に触れると目が鍛えられる」。
絵をさんざん見つめ、そんな一言に背を押されて展覧会を後にすれば、自然が足早に移ろいつつある季節だ。芽吹いた木々の若葉が、同じ緑でもいかに気ままな色なのかに気づいたりする。
セザンヌに諭され、目が目の役目を果たそうと張り切っているのが分かる。

出典 日経新聞・朝刊 2012.4.20
版権 日経新聞


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館内より六本木ヒルズを眺む
2012.4.8 13:53 撮影



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