骨粗しょう症(3)生活習慣病 もろさ加速

「腰の痛みがひどくて、歩くこともできない状態でした」

埼玉県上尾市の主婦、Mさん(81)は2010年11月、伊奈病院(同県伊奈町)でエックス線検査を受けた。
背骨に1か所、圧迫骨折が見つかり、骨粗しょう症と診断された。

一般的に骨粗しょう症の人は、骨密度が低いケースが多い。
だが、Mさんは、腰の骨が若年成人(20~44歳)の平均値の101%と若い人並みで、太ももの骨も同87%と、骨密度は高かった。

同病院のI整形外科部長は「骨の質が劣化している」と考えた。

骨の主成分はカルシウムとコラーゲン。
カルシウムの量が骨密度で、コラーゲンの状態の良しあしなどが骨質だ。

骨は、よく鉄筋コンクリートにたとえられる。
鉄筋に当たるのが繊維状のコラーゲン、コンクリートに相当するのがカルシウムだ。コラーゲンにカルシウムなどが沈着することで骨は作られている。
体重が重かったり上から荷重がかかる運動をよくしたりすると骨密度は高まる。
糖尿病などの生活習慣病があると、コラーゲンが過剰な糖などの影響を受け、弾力性を失い、骨がもろくなるとされる。

Mさんは約30年前、糖尿病と診断され、長年、血糖値が高い状態が続いていた。
約5年前には転倒して右腕を脱臼骨折し、体を動かす機会が減った。
徐々に体重が増え、約1メートル50の身長に対し、68キロになった。

Mさんは今年3月、持病の変形性膝関節症の手術のため、伊奈病院に入院。
今は1日2回、リハビリに励み、体重は2キロ減った。
「リハビリをもっと頑張り、早く自分で動けるようになりたい」と意気込む。

I部長は「骨は、1年間で全体の10%が新しく作り替わります。糖尿病の人は、血糖値の管理をしっかり行えば、骨質は少しずつ改善されます」と説明する。

国立衛生研究所は00年、骨の強度は、骨密度と骨質の二つの要素からなると定義づけた。
以来、骨質に関する研究が国内外で行われるようになっている。

生活習慣が原因で起こる「2型糖尿病」の人は血糖値が正常の人に比べ、男女とも骨密度は高いが、背骨を骨折するリスクは高いという研究報告もある。

この研究を行った島根大病院内分泌代謝内科のS教授は「生活習慣病の人は、骨粗しょう症の治療のほか、生活習慣の改善も必要です。魚や野菜などを幅広く食べ、しっかり体を動かすことが大切です」と話している。

出典 読売新聞 2012.4.19
版権 読売新聞社


<関連サイト>
骨粗しょう症(1)月1回の新薬で改善
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/39723593.html
骨粗しょう症(2)注射薬で骨密度高める
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2012/05/19








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