骨粗しょう症(4)若い時の運動が「貯金」に

高齢になって骨粗しょう症になるかどうかは、10代の頃の生活習慣が大きくかかわることが、最近の研究で明らかになってきた。

青森県十和田市の大学生、Oさん(21)は高校生の時、骨粗しょう症の母親(55)に勧められ、若い女性の骨の強さと生活習慣の関係を調べる研究に参加した。

「毎日、牛乳を1リットル飲んでいたので、骨は強いはずだと自信がありました」

しかし、骨密度を測ってショックを受けた。
若年成人(20~44歳)の平均値の86%しかなかったからだ。

Oさんは、食べ物の好き嫌いはあまりなく、栄養素に偏りがあるわけではない。
ただ、運動が好きではなく、部活動も運動部ではなかった。
大橋さんが参加した研究では、運動する機会が多い人の方が、骨密度が高いという結果が出た。

この研究は、中高生やその母親など約2000人を対象に行われた。
太ももや腰の骨の骨密度などを測定し、生活習慣と骨の強さとの関係を調べた。

その結果、骨密度は18歳でほぼ最大になり、その後は少しずつ減っていくことがわかった。

また、参加者のうち、12~18歳の約600人を調べると、カルシウムを多く含む牛乳などの乳製品をたくさん摂取している人は、骨密度が高かった。(*1
ただ、カルシウムの摂取量と運動量を比べると、運動量の方が、骨密度を増やすのに強く影響していた。

運動は、週当たりの運動時間が長い人ほど骨密度が高く、また、激しい運動をしている人ほど、骨密度は高かった。
具体的には、バスケットボールやバレエ、ダンスなど、垂直方向への荷重がかかる運動は、骨に刺激を与えて、より効果的だという。

研究を行った山王メディカルセンター女性医療センター長の太田博明さん(婦人科)は、「若いときに『骨の貯金』を多くできれば、年をとってから骨粗しょう症になるのを防げます。特に、母親が骨粗しょう症の人は遺伝的に骨がもろくなりやすく、若い頃から骨を強くする生活習慣を心がけてほしいです」と訴える。

昨春から一人暮らしを始めたOさんは、アルバイト先に「接客などで常に走り回る必要がある」というガソリンスタンドを選んだ。

食事も自炊し、バランス良く食べるよう努めている。

太田さんの研究では、体重が軽い人ほど、骨密度が低いという結果も出た。

太田さんは「若いうちに体形を気にしてダイエットをしてしまうと、丈夫な骨は作れません。きちんと食べてしっかり運動するという生活習慣を小学生の頃から続けることが何より大切です」と強調する。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2012.4.20
版権 読売新聞社

<追記>
運動を余りしてなかったから骨塩が減少したという書き方はちょっと短絡的ではないでしょうか。
原因を安易に求め過ぎです。
*1についても、以下の知識も必要です。
示唆的な内容ですので是非お読み下さい。

●日本人と同じモンゴロイドであるエスキモーには、世界で最も骨粗鬆症が多いのですが、彼らは魚の骨からじゅうぶんすぎるほどのカルシウムをとっています。それでも骨が弱いのです。
彼らは魚、セイウチ、鯨肉から大量のタンパク質を摂取します。
一日、250~400グラムはとるといわれています。
日本人よりずっと肉を食べるアメリカ人のさらに2倍です。
この動物性タンパク質大量摂取が災いしているのです。
カルシウムは緑黄色野菜や豆や穀類から補うのが正解なのです(その他、海苔にも、海藻にも、キクラゲにも、オレンジジュースにだってカルシウムは含まれています)
いくら大量のカルシウムをサプリメントで補っても、賢明な人体は、小腸粘膜からの吸収の段階で拒否してしまうのです。
出典
http://www.drmakise.com/supplementclinic/supplementclinic42.html

●世界でもっとも牛乳を飲むノルウェー人の骨折率は、日本人の5倍。
タンパク質をとればとるほど「カルシウムを体外にけり出す」。
すでに1920年代の科学者は高タンパク食が尿を通じてカルシウムを失う原因となることを知っていた。
典型的な研究の一つに、若者にタンパク質を1日40グラムから141グラムに増やした食事を与えた実験がある。
タンパク質が増えたほうは、尿から出されるカルシウムが、2倍になることがわかった。
そして動物性タンパク質を特に増やした場合、この影響が大きい。
カルシウムを大量にとれば失われたものを補うだろうか? 
その答えはNO!だ。
「直接的に訴える」理屈ではあるが、イギリス医学雑誌の最近の報告では、「痴呆症治療と称して脳をすりつぶして与えるのと似た理論である」と述べている。
出典
http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/kirinuki/094nikutogyunyu.htm

要するにカルシウムは酪農製品からとるのではなく、緑黄色野菜や豆や穀類から補うのがよいということです。
欧米人はカルシウムの摂取量が多くても動物性タンパク質の摂取量も多いため、カルシウム摂取の効果がキャンセルされているというのです。
厚労省や酪農業者や一部の学者による「牛乳を飲みましょう」キャンペーンは「深読み」する必要がありそうです。

最後に、以下も示唆的です。
アメリカでは2500万人が骨粗鬆症にかかっているといわれています。
これを人口あたりにすると、日本の1.7倍です。
ましてや、牛乳を飲みだしてから一世紀そこそこの日本人にとって、牛乳のタンパク質カゼインは異質です。
そしてカゼインのみならず、牛乳の乳糖も分解できない、いわゆる乳糖不耐症なのです。
ほとんどの日本人は、乳糖を分解する酵素であるラクターゼの活性を小児期に失います。
この活性を成人になってまで維持しているのは、北欧系の人種で、世界人口のせいぜい2割ほどです。
出典
http://www.drmakise.com/supplementclinic/supplementclinic42.html


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