パーキンソン病患者へのiPS神経移植

脳にiPS神経移植へ パーキンソン病患者に 京大、来年にも臨床研究

iPS細胞から作った神経細胞を人間の脳に初めて移植し、パーキンソン病の治療を目指す臨床研究を、京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)のグループが来年にも始める。
京大が近く設置する審査委員会に、6月をめどに計画を申請する。
根本的な治療につながる可能性もあるが、未知のリスクもあり、審査で安全対策などを確認する。

パーキンソン病は、脳内でドーパミンを作る神経細胞が減るために起き、薬での治療には限界がある。

計画では、患者自身の細胞からiPS細胞を作り、ドーパミンを作る神経細胞に変えてから、針を使って患者の脳の中央部に高い精度で注入する。
今回の研究は、移植で有害なことが起きないか確かめるのが主な目的だが、移植した細胞がうまく働けば、病気の進行を抑えられる可能性がある。

移植に使う神経細胞を作る過程では、不必要な細胞も混じるため、グループは大量の細胞の中から必要な神経細胞を選び取る技術を開発。
動物に移植して安全性や効果を確認した。

一方、iPS細胞が目的の細胞に変化しないまま体内に入ると、無秩序に増え、がん化するなどの危険がある。
安全性を確かめるため、理化学研究所のグループは目の難病で臨床研究を開始。
iPS細胞から作った網膜組織を患者の目に移植して、経過を調べている。

今回計画している脳への移植は、目の中とは異なり、細胞の様子を直接観察できないためMRIなどの画像診断装置による検査が必要になる。

臨床研究がうまく進めば、保険適用を目指し、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく治験を数年後に始める構想もある。

出典
朝日新聞 2015.5.16