「川崎病」にステロイド治療

川崎病」にステロイド治療 血液製剤と併用、血管の腫れ緩和

乳幼児が主にかかる「川崎病」は、いまも原因がわかっていない。
全身の血管が炎症を起こし、重症化すると心臓の血管に後遺症を残す可能性がある。
従来の治療が効きにくい場合には、ステロイドを同時に使う方法が有効と認められ、治療の選択肢が増えた。


川崎病は原因不明で、5日以上続く発熱や両目の充血、リンパ節の腫れなどが主な症状だ。4歳以下の乳幼児が患者の8割を占める。
血管の炎症が続き、冠動脈が腫れてこぶが残ってしまうと、将来にわたって心筋梗塞などを起こすリスクを抱えることになる。
 
日本小児循環器学会が2012年に改訂した「川崎病急性期治療のガイドライン」では、免疫グロブリンステロイドの併用療法について、免疫グロブリンのみでは効果が出ないことが予測される重症患者に有用だとしている。
 
川崎病の患者の約2割は、免疫グロブリンの効果が小さい。
特に重症者に効きにくく、後遺症が残る可能性が出てしまう。

こうした患者への治療法が求められていた。
新しい治療法の確立につながったのは、東邦大や群馬大などのグループが2008年から始めた研究だ。
 
免疫グロブリンのみを点滴するグループと、古くから使われているステロイド剤のプレドニゾロンを併せて使ったグループで、効果を比べた。
 
治療から1カ月時点で冠動脈の太さが5歳未満で3ミリ以上、5歳以上で4ミリ以上腫れたのは、免疫グロブリンのみで13%だったのに対し、ステロイド併用では3%。治療効果がみられない患者の割合は、免疫グロブリンのみでは30%で、併用では5%まで低下した。
 
結果は12年に英医学誌ランセットに掲載された。
13年にはプレドニゾロンの保険適用が川崎病にも拡大された。
 
ステロイドは小児科医も扱いやすく、治療の選択肢が広がった。
ただ、効きにくいケースもある。
万能ではなく、患者の状態を見極めて使う必要がある。
 
■患者数 増加傾向に
1967年に日本で初めて報告された川崎病は、患者数が増加傾向にある。
2012年の患者数は1万3917人。
過去2番目の多さで、トップの82年の1万5519人に迫りつつある。
川崎病に主にかかる子どもの総数は年代で大きく異なる。
0~4歳児10万人あたりの患者数を計算すると、12年は264・8人で過去
最高となった。
病気の原因がわからないため、増えている理由もわかっていない。
患者は1月ごろに最も多く、夏場にも小さなピークがある。
季節性があることなどから、何らかの感染と、体内の免疫が影響することで発病すると考えられる。
 
患者の累計総数は約30万人に上る。
冠動脈の肥大やこぶを残す割合は、今も約3%ある。
 
こぶが残った場合、定期的な検査や血栓をできにくくする薬などの服用が必要となる。
成人した後も患者を追跡できるように、小児科から他の診療科へのスムーズな橋渡しができる体制づくりも重要となる。


出典
朝日新聞・朝刊 2015.3.10


私的コメント;
川崎病」は1967年に日本で最初に報告されてからすでに40年近くになります。
しかし、未だに原因がわかっていないというある意味で稀有な病気でもあります。
本来は、原因が特定されて治療法が確立するという順序ですが、原因が解明されない限り、治療法はまだまだ暗中模索が続きます。


参考
「我が『純粋』を貫くこと」 川崎富作が語る仕事-1
https://www.asakyu.com/column/?id=639