肉食シニア

肉食シニア、長寿の秘訣 「魚も大事」が日本流

肉を好んで食べる高齢者が増えている。
食の欧米化の先駆的世代が高齢者になり、食肉消費が日常化。魚
と野菜もバランスよく食べる習慣が長寿ニッポンの秘訣でもあるようだ。

立ち食い店で目立つ姿
肉を食べる高齢者が元気になり、また肉を食べるという循環が起こっている。
厚生労働省によると、60歳以上の1人1日あたりの肉類消費量は2013年までの10年間で30%以上増えた。
全世代平均の伸び率(17%)を大きく上回り、増加をけん引している。
底流には戦後世代の高齢化がある。
戦後世代の食生活は学校給食によって欧米化が進んだ、と考えられる。

学校給食で食生活欧米化
学校給食法の施行は1954年。
パンや乳製品が普及。
魚も肉も両方大事だという意識も根づいた。
当時の小中学生はいま60~70歳代。
50年代に国内放送が始まった米テレビ番組でステーキやハンバーガーを知った世代でもある。
 
肉は魚より調理しやすい。
焼き肉の値段も下がった。

肉の動物性タンパク質を構成するアミノ酸は筋肉や臓器を作るが、死亡率低下との間に相関の強いことも広く知られる。
コレステロール(脂肪の一種)が脳血管疾患の予防に効くともいわれる。
 
日本の長寿の要因は戦後の食肉消費の増加にある、と分析する専門家もいる。
明治維新直後(1890年)の日本の平均寿命は37歳で、当時の年間食肉消費は1人3キロ程度。
平均寿命50歳以上だった米英豪などは30~110キロ程度だった。
 
日本の食肉消費は戦後に30キロを超えたが、動物性タンパク質の摂取量は植物性タンパク質とほぼ等しくなった段階で均衡が続き、脂肪が大幅に増えなかった。
これにより日本の平均寿命は80年代に世界トップ級になった。
 
国連食糧農業機関によると11年の日本の1人あたり食肉供給は約49キロ。
丸紅経済研究所が1人あたり国民所得から試算したところ約70キロまで増えてもおかしくないという。
 
これに対し米豪やアルゼンチンは現在、同100キロを超す。
ただ、米国の平均寿命は79歳、アルゼンチンは76歳と80歳に満たない。
肉を食べる量が増えれば必ずしも寿命が伸びるわけではないようだ。
 
違いは食べ方にあるようだ。
日本人が長寿命なのは、魚も野菜も適度に食べているからだと考えられる。
だが最近、現役世代の脂肪が減っていることが気がかりだ、と指摘する声もある。
現役世代がシニア層になるころ、現代ニッポンの長寿の方程式を維持できるか懸念される。

出典
日経新聞・朝刊 2015.5.17(一部改変)



<私的コメント>
そもそも人類は、250万年も前から狩猟による肉食だった。
魚を食べるようになるのはかなり後になってからで、農耕はわずか1万年前以降だから、肉を食べて生き続けてきたのです。
人類の遺伝子は、4万年前から今と変わらず、100歳くらいまで生きる「種」としての能力を当時から備えていました。
しかし平均寿命が50歳を超える民族が出てきたのは、ようやく100年ほど前からです。
産業革命が起こり、肉の大量生産が可能になった19世紀末から20世紀にかけて、イギリスやフランス、スウェーデン、オランダ、アメリカ、オーストラリアといった国で肉を多く摂取できるようになり、寿命が延びていった、という経緯があります。
日本の平均寿命が50歳を超えたのは1947年。
1965年、それまで増え続けていた脳卒中が減り始めました。
高血圧の研究者は減塩の普及は降圧剤の効果を強調しますが、実は主な理由は肉食の普及で、よく食べるようになった地域から成果が上がりました。


『長生きしたけりゃ肉は食べるな』という本が出版される一方で、『肉を食べる人は長生きする』という本もあります。
前者の概略はこうです。
日本人の腸は長く、肉などの動物性たんぱく質は腸内環境を悪化させ、毒素が多く発生する。
それが血液を汚し、全身をめぐることによって、がんだけでなく、さまざまな病気を引き起こす。
どちらが正しいのでしょうか。
肉には良質なたんぱく質が豊富に含まれます。
この良質とは、私たちが身体で作ることができない必須アミノ酸をバランスよく含んでいるということを意味しています。
人間の体に最も大切な栄養素であるたんぱく質は、約20種類のアミノ酸からできています。
そのうち9種類は体内では作ることができず、食べ物から摂る必要があるのです。(必須アミノ酸
肉が有効なのは人間の体にいちばん近い食品だからです。
必須アミノ酸がすべてそろった食品を100点とし、アミノ酸のバランスを見るのを『アミノ酸スコア』と言います。
この点で、肉をはじめ牛乳、卵、魚などの動物性食品は100点満点。
WHO(世界保健機関)もそう定義しています。
そもそも、穀類や野菜などからだけでは、たんぱく質は摂れません。一方、「肉は食べるな」の論拠の一つには、肉に含まれる化学物質があります。
いま、国内で飼育されている豚や牛、鶏などの家畜のほとんどは、成長ホルモン剤抗生物質といった添加物が入った合成飼料で育てられているからです。

一般的に高齢になると、摂取した栄養から体を作る力が衰えてしまいます。
老化とは体が乾いて、縮んで、ゆがむ変化、すなわち体から骨と筋肉が減少する変化です。
骨と筋肉はたんぱく質が主な構成物質です。
筋肉量についていえば20代をピークに徐々に減少し、30歳以降は10年ごとに3~8%ずつ減少。
そのため70歳になる頃には、30歳時と比べ、筋肉量は2~3割減ってしまういます。
すなわち、老化はたんぱく質が減って栄養失調になる変化ともいえます。

「粗食」は、動物性たんぱく質や脂質が不足する『新型栄養失調』を引き起こす可能性があります。
さらに、肉には、鉄分やビタミンB類が多く含まれているので、貧血予防や筋肉を維持する効果も期待できます。
要は、メタボリック症候群を気にし過ぎて肉を控えることは問題だということです。

指導する医療関係者も、糖尿病や高血圧、高コレステロールなど個々の数値や病気の対応にとらわれ過ぎず、栄養学として総合的な健康を目指す必要があります。

ただし、腎臓が悪い方は過剰な肉食はおすすめ出来ません。

最後に。
誰もが気になるのが肉食の対極にあるベジタリアン
この前来日したポール・マッカートニー菜食主義者で有名ですが外国には多くの有名人がベジタリアンです。
そして結構(元気そうに)活躍しています。
肉食推進者には不都合な事実ですよね。
ベジタリアンにもいろいろあってウイキに詳述されています)

◯ミュージシャン
スティーヴィー・ワンダー
ビートルズ(4人とも)
マドンナ
ボブ・ディラン
ホイットニー・ヒューストン
ジェフ・ベック
坂本龍一
イルカ
ミック・ジャガーも「肉じゃが」みたいな名前ですが菜食主義者のようです)




肉食主義の英語を調べましたがmeat-eater 、carnivorous principle、cannibalismなどと書かれておりVegetarianのような格好のいい表現はありませんでした。
肉食は本能的、快楽的とすれば菜食は何故か禁欲的、宗教的な感じがします。
体が欲しているわけですから正しいという結論になるのでしょうか。

追記
蛋白質という点では動物性と植物性、肉食という点では獣肉とトリ肉や魚肉。
これらのことについて頭の中を整理しておく必要があります。
江戸時代以前には「四つ足」はあまり食べていなかったかも知れませんが、トリや魚が貴重な動物性たんぱく源だったことは想像に難くありません。