足の冷え・むくみ ~ 血管障害の恐れ

閉塞性動脈硬化症・下肢静脈瘤 加齢・体質と勘違い怖い

冬の寒さが近づいてくると、足先の冷えやむくみ、かゆみを訴える人がいる。
加齢や体質が原因と思いきや、足の動脈や静脈で異常が見つかる場合があり、重症になると歩けなくなるだけでなく、命にもかかわるので注意が必要だ。
歩くたびに足に痛みが走ったり、足が細くなり、爪や毛が伸びなくなってきたりする方は、「閉塞性動脈硬化症」の恐れがある。

【閉塞性動脈硬化症】
閉塞性動脈硬化症は手や足の血管に動脈硬化が起こり、血管の幅が狭くなったり、塞がれたりして血流が不足する病気だ。
主に足が多く、初めのうちはほとん ど自覚症状がないが、進行すると少し歩いただけで痛み出す。
休むとまた歩けるようになる。

<私的コメント>
こういった状態を専門用語で「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」といいます。

日本では100万人程度の患者様がいるが、症状が出ない潜在患者は240万~300万人いるとされる。
歩けなくなる症状がさらに重くなると足の傷が治りにくくなって壊死し、最悪の場合は切 断を余儀なくされる。

動脈硬化を引き起こす原因は、加齢や喫煙、高血圧のほか、糖尿病も原因の一つだ。
早いうちならば、末梢動脈の血管を詰まらせる血の塊を溶かす薬剤もあるので、深刻な事態を防げる。
また、運動や食生活を見直せば予防などもできる。

ただ、問題は足の症状だけではなく、足の動脈硬化は体のどこかで動脈硬化が起こっている可能性を表すサインなので、将来脳梗塞心筋梗塞の可能性がある。
そのため、65歳以上を過ぎた時点で足の動脈硬化の状態を測る血圧測定の検査(ABI検査)などを受けておいた方がよい。

下肢静脈瘤
足の冷えやむくみを起こす症状は動脈に限らず、足の静脈の血管が逆流しても、冷えやしびれ、むくみの症状が現れる。
下肢静脈瘤という血管疾患だ。

下肢静脈瘤は全身にまわった血液が心臓に戻る静脈に異常が起きる症状。
血液が逆流するのを防ぐ「弁」が壊れ、血液が血管内にうっ血する。
放置しておくと、むくみがひどくなり足の血管が浮き出てボコボコになり、黒っぽく色がついて、皮膚が硬くなり、やがて歩くのが困難になる。


早めに専門医療機関
主に長時間の立ち仕事で足の血管が圧迫される人やホルモンバランスが崩れた出産後の女性に起きやすい。
強い痛みで歩行が難しくなるが、 重症になると血栓ができて(肺の血管などが詰まる)エコノミークラス症候群を併発する人もいる。
症状に心あたりがある人は、早めに血管外科などを受診する必要がある。

特に静脈の弁はいったん壊れると、元には戻らず、治療は逆流している静脈を切除するため、体への負担は重い。

レーザー治療が普及して、日帰りで手術を受けられるが、手術後に足が突っ張ったり、
皮下出血が2週間程度消えなかったりすることがある。
十分納得してから治療を受けよう。

長時間の立ち仕事を避けるほか、弾力のあるストッキングをはくなどで発症や症状が重くなるのを防ぐ方法がある。

静脈性、動脈性の疾患にしろ、痛みやむくみといった症状がほとんどなので特に高齢者の中には病院に行かず我慢している人も多い。

特に、動脈の場合は、早期に見つけ治療をはじめないと死に至る恐ろしい疾患だ。
脳や心臓など全身に関係する血液疾患という認識が大切となる。

また動脈、静脈の血管障害以外に、神経が原因のこともある。
腰部脊柱管狭窄症と呼ばれ、脊椎にある脊柱管という神経を囲んでいる管が狭くなり、神経が圧迫されて足にしびれや冷えが起きる。

加齢も影響してくるが、椎間板ヘルニア骨粗しょう症、脊椎の腫瘍などで引き起こされるとも言われている。

症状が出ているのに「年だから」「冷え性の体質だから」と放っておくと、深刻な事態に陥る可能性があるのが足の血管障害だ。
少しでも不安を感じた場合、できるだけ早めに医療機関を受診するとよい。


【足の動脈硬化のチェック項目】
(1つ以上で注意が必要)
□ 歩くとふくらはぎに痛みがある
□ 坂道を上がるときに痛みがある
□ 歩くのをやめると痛みが治まる
□ 座っている時などにしびれ、痛みがある
□ 手足が極端に鈍くなった気がする
□ 足の指や爪の色が変わっている
□ 手足のケガが治りにくい
□ 知らないうちにケガをしている
片方の足が細くなったり、体毛が抜けたりする

出典
日経新聞・夕刊 2013.11.8(一部改変)