高齢者の便秘

高齢者の便秘 排便時の姿勢で楽になることも

生活のリズムが乱れて、食事を抜いたり、野菜が十分にとれなかったりして、便秘になった経験はないだろうか。
排便回数が減ることだけが便秘ではない。
毎日便が出たとしても「トイレにこもって力まないと出ない」とか「コロコロした便しか出ない」「排便後もすっきりしない」というような状態が3カ月以上続けば、慢性便秘の疑いがある。
 
便秘は女性に多い印象があるが、国民生活基礎調査(2013年)によれば、便秘の症状がある人は、60代では女性約49万人に対し男性約29万人、70代では女性約75万人に男性約51万人と、高齢になれば男性にも増える。

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年齢とともに便秘に悩む人が増えるのには理由がある。
加齢に伴う食事や水分摂取量の減少、大腸の蠕動運動の低下も一因となる。
 
糖尿病や脳梗塞)、パーキンソン病などの病気が原因になったり、前立腺肥大や高血圧の治療薬、抗うつ薬抗精神病薬などの薬が原因になったりするケースも多い。

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理想的な排便は行きたいと思った時にトイレに行けて、力んだり冷や汗が出たりせずに出て、快適に終わることだ。
便は、できればウィンナーのような形で、なめらかな軟らかいものがいい。
食物繊維や水分の摂取が減ると、便の量が減って硬くなり、大腸にたまりやすくなる。
意識して適度な水分と食物繊維をとることを心がけたい。
 
排便時の姿勢にも気をつけたい。
和式トイレの姿勢が排便には最も適している。
高齢になって腸の動きが悪くなり、骨盤内の筋力が弱まっていても和式なら、直腸から肛門までまっすぐになって重力の助けで出やすい。
洋式の場合は、便座に座った後、足の下に踏み台を入れてひざの位置を高くする。
ロダンの『考える人』のような太ももにひじをつけた姿勢が望ましい。

朝食を食べる習慣も大切だ。
腸は朝食後に動きやすくなるからだ。
元気な人なら散歩やラジオ体操などの運動も良いという。
自分の排便習慣を知るため、食事や水分の摂取量、いつどんな便が出たかを記録する「排便日記」をつけるのもよい。
 
一方、腸を刺激する働きのある市販の便秘薬は、使っているうちに、薬が効きにくくなったり、薬を飲むことが習慣化してしまったりするリスクが指摘されている。
高齢者の場合、便秘の裏に腸閉塞や大腸がんといった病気が隠れていることもあり、急激な便秘や便に血が混じったりする場合は、市販薬を飲む前には医師に相談する必要がある。
 
<まとめ> その便秘、大丈夫?
① ⬜︎ 便が出るのは週3回未満が多い
② ⬜︎ ウサギのフンのようなコロコロした便が多い、または、硬くて出にくい便が多い
③ ⬜︎ 排便の後も、残便感があり、スッキリしない
④ ⬜︎ 便を出すときに、いきむことが多い
⑤ ⬜︎ 最近、食べる量が少なくなった
⑥ ⬜︎ 外出や散歩がおっくうになった
⑦ ⬜︎ 便に血が混じっていた、または、便が細くなった
⑧ ⬜︎ おなかが張って、便やおならが出なくなった

① ~ ④の症状は慢性便秘の主な症状。
① ~ ④のいずれかが、3ヵ月以上続くときは、市服薬を飲む前に、医師に相談のこと。
⑤、⑥ は慢性便秘になりやすい生活習慣。
⑦は大腸がん、⑧は腸閉塞の疑いがあるかもしれないので、早めに医療機関を受診を。



■相談ナビ
「排泄ケアナビ」
http://www.carenavi.jp
(排便の仕組みや便秘予防のための「排便体操」の紹介)

「排便障害の症状と対処方法」
http://www.jcas.or.jp