心臓弁膜症、手術高齢者にも

心臓弁膜症、手術高齢者にも 体への負担抑える

高齢になるにつれ、健康を維持するのが難しくなる。
高齢者に多い心臓弁膜症と膝関節症では、患者の「生活の質」(QOL)を考慮し、最新の技術や治療法が普及している。

人口の高齢化に伴って、心臓の弁の障害で弁が狭くなったり血液が逆流したりする心臓弁膜症の患者が増えている。
近年は、僧帽弁閉鎖不全症での弁形成術や大動脈弁狭窄症でカテーテル治療など、患者の体への負担が小さい治療もさかんに行われている。

心臓弁膜症の手術は、複数の弁を対象にしたり、冠動脈の狭窄や不整脈も併せて治療したりする複合手術が増えている。
 
画像診断技術の進歩で、近年は無症状段階での早期手術が増えている。

働き盛りの50~60歳代の男性に多い僧帽弁閉鎖不全症で、自己弁温存術式(形成術)も行われるようになった。

カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)は石灰化して硬くなった大動脈弁の場所に、内部に人工弁の付いたステントをカテーテルで運んで設置する手術。
手術時間が2時間半程度と短く入院も短期間で済むため、体力の落ちた80歳を超えた高齢者にも対応できる。
13年10月に保険適用を受けた。
 
この手技は、循環器内科医が行う場合も多いがステントの太さや手技中の血管破裂などにどう対応するかなどについて、心臓血管外科医や麻酔科医、技師などと手術前に綿密に打ち合わせる必要がある。
将来耐久性が高い製品が出てくれば、大動脈弁狭窄症治療の第一選択になる可能性もある、という。

大動脈弁狭窄症の手術に、心臓を包む心膜を弁の形に切り取って、傷んだ弁の代わりに縫い付ける手術法も編み出されている。
この手技は、人工弁置換術より高度な技術が必要だが、異物ではなく自身の組織を使うため患者の体への負担は小さく、再手術の回避率が現時点で約98%と人工弁(94~95%)を上回る。
昨年専用器具が正式に発売されたため、今後さらに広がる可能性が高い、という。

出典
日経新聞 2015.3.4 (一部改変)