未破裂脳動脈瘤の手術適応

= 未破裂脳動脈瘤、破裂と手術のリスク説明が重要=
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO66427840V00C14A2NNSP01/

脳内の血管の一部がこぶ状に膨れる「未破裂脳動脈瘤」は自覚症状はほとんどないが、破裂すると、くも膜下出血で死亡する危険性がある。
手術は開頭するクリッピング術のほか、血管内治療も増えてきた。

未破裂脳動脈瘤は脳動脈の分かれ目などにできた血管のこぶだ。
破裂して一命を取り留めても後遺症のため社会復帰できるのは3分の1程度。
自覚症状がなく、他の疾患や脳ドックで検査を受けて、偶然に見つかる場合がほとんどという。
 
ただこうした動脈瘤が必ず破裂するわけではない。
患者の年齢、こぶの大きさ、部位、形状などを考慮し、手術するか経過観察するか判断される。
経過観察の場合は半年から1年に1度、脳の画像診断で大きさや形の変化を確認するために外来通院となる。
 
手術をしないで済むなら最も望ましいが手術を勧められなくても、破裂しないということではない。
手術のリスクと破裂の可能性をてんびんにかけて、必要ならば手術を勧めるが、最終的に患者が決める。

手術法は2つ
手術法は2つある。1つは頭部を切開してこぶの付け根をチタンなど体に影響を及ぼさない金属で作られた小さなクリップでふさぐクリッピング術。
もう1つとしては、太ももの付け根から血管に細い管(カテーテル)を挿入してこぶにコイルを詰める血管内治療がある。
 
日本脳神経外科学会によると、2010年度の国内での治療数は約1万6千例。
このうちクリッピング術は1万1千例で全体の7割を占める。
血管内治療も5年前より1割増えている。
 
こぶの形状や位置によって100種類ほどのクリップから最適なタイプを選ぶ。

私的コメント
このクリップ選びも手術経験がものをいいそうです。
クリップ選びも手術成績に関係するからです。

手術は血管、神経が複雑に入り組む脳内を両眼の顕微鏡をのぞき込んで行う。
多くの経験を積み、周囲の血管などを傷つけずに最短距離でこぶに到達する技術が必要だ。
 
小さくても破裂するリスクが高いこぶもあり、破裂した位置などで症状が重くなることがある。

医師の育成に注力
手術は症例数が一定程度多い施設で受けるべきだ。

こぶが脳の深い位置にあるなどの場合はクリッピング術に比べて患者の身体的な負担が少ない血管内治療も選択肢となる。


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直径7ミリで危険性高まる こぶの配置や形も影響
日本脳神経外科学会が未破裂脳動脈瘤が破裂する可能性について2001~04年に約5700人の患者を追跡調査した結果、直径7ミリ以上になると危険性が高まることが分かった。
 
約3年間で手術などしなかった患者の年間平均出血率は0.95%。3~4ミリで0.36%、5~6ミリでも0.50%と横ばいだったが、7~9ミリでは1.69%と約3倍で、7ミリ以上で破裂するリスクが高まったという。
大きくなるほどリスクはさらに高まり、25ミリ以上では33.40%。
また動脈の分かれ目やいびつなこぶは破裂しやすい。
 
高齢者は動脈硬化が進んでいる場合も多く、体力面から手術のリスクが高いため、患者の年齢も大きなポイントだ。
脳卒中など起こした家族がいるかどうかも判断材料になる。
 
日本脳卒中学会の治療ガイドライン(09年)では、原則として患者の余命が10~15年以上の場合、こぶが直径5~7ミリ以上やいびつな形の場合は「治療を検討することを推奨」している。
同学会は追跡調査の結果を踏まえ、見直しを進めている。
 
こぶが大きくなれば物が二重に見える視覚障害などを起こすことがあるが、ほとんどは自覚症状がない。
検査機器の精度向上で、2ミリ程度の小さいこぶまで発見が可能という。
磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査機器を導入している医療機関が多いため、早期発見につながっている。

出典
日経新聞 2014.2.6(一部改変)



血管攣縮を伴う破裂脳動脈瘤には血管内治療が有効
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/isc2010/201002/514324.html
血管攣縮を伴う破裂動脈瘤に対して血管内治療を選択する術者が増えているが、その安全性と術後の経過については、まだ十分なデータが蓄積されていない。2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会(ISC2010)では、破裂脳動脈瘤と血管攣縮に対する血管内治療の有効性を検討した多施設共同研究の成績が米マイアミ大学のDileep R. Yavagal氏により報告された。