遺伝子検査

自分の遺伝子を検査 病気の傾向知って予防

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO78887390V21C14A0MZ4001/

インターネットなどを通じて消費者が直接、検査を申し込み、結果も受け取れる「直接販売型」の遺伝子検査が増えている。
ブランド力のある大手IT(情報技術)企業が検査サービスの提供を始め、信用度も高まってきた印象がある。
ただ検査を申し込む前に知っておくとよいことがいくつかある。

遺伝子検査は目的によっていろいろある。
大別すると
(1)病院で病気の診断や治療法を決める(2)親子関係などを調べる(3)特に病気ではない人が主に健康管理を目的に病気のかかりやすさや体質を調べる――ための検査がある。

発症は断言できず
直接販売型の検査は(3)にあたる。
つまり病気診断や親子関係を調べるものではない。
また、病気のかかりやすさがわかるとの印象を与えることが多いが、利用者が将来、特定の病気にかかるかどうか断言はできない。
まして、利用者の健康状態や病気の有無などは検査結果から判定できない。
 
では何がわかるのか。
自分と同じ「遺伝子型」を持つ人々が特定の病気にかかりやすいか、どんな体質であることが多いかという傾向を知ることができる。
 
遺伝子型は「一塩基多型(SNP)」と呼ぶ遺伝情報の違いだ。
遺伝情報を4種類の文字が約30億個並んだ本とみなすと、それぞれの人が持つ本にはあちこちのページで文字が違っている場所がたくさんある。
そうした場所は数百万カ所にも及ぶとされる。

どこに違いを持つのかが共通している人たち、言い換えれば遺伝子型が同じ人たちの集団を調べると、特定の病気にかかりやすかったり、似た体質を備えていたりする。
遺伝子検査は様々な遺伝子型の集団が持つ特徴を根拠に、病気のかかりやすさや体質を示唆している。
 
自分と同じ遺伝子型を持つ集団がある病気にかかりやすいことが科学的に確かでも、実際に自分がその病気を発症するかどうかは別の問題だ。
 
例えば、自分と同じ遺伝子型の人々が、そうでない人たちに比べ糖尿病に2倍なりやすいなどということはわかるが、自分が実際に糖尿病になるかどうかは、検査からは何とも言えない。
さらに、SNPの研究は年々進歩する。
検査結果の読み方が来年には変わっている可能性もある。
 
結果が自分とどう関係するのか、一般の人々には距離感がつかみにくい。
検査結果を運命の宣告であるかのように重く受け止めすぎてはいけないが、かといって遊び心だけで軽く扱うのも問題がある。

誤解や漏洩の危険
遺伝学などの専門家には検査に慎重な見方がある。
日本人類遺伝学会は2010年に見解を発表した。
結果の誤解や検査結果の漏洩などから利用者に不利益を与える可能性があるとして、医師ら専門家が検査サービスにもっと関わる必要があると訴えている。
 
では、なぜサービスを提供する企業が増え、消費者の関心を集めるのか。
「未病」がキーワードだと話す企業もある。
未病とは病気ではないもののまったく健康ともいえない状態だ。
病気と健康の間には明快な境界線は引けないとの考えに基づく。
 
未病から病気へと進まないように運動や食事など健康管理に心がける人が増えている。
病気予防への消費者の関心に、遺伝子検査は科学の装いをまとった動機づけを与える。

課題を抱えつつも遺伝子検査の普及は今後も進むと思われる。
技術進歩でより安価に早く検査できるようになり、多くの人が利用しデータが増えれば精度も上がっていく。
 
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参考;
◆遺伝子検査事業者選定のチェックリストを知るには
 経済産業省「こんな検査を受けようとしている貴方に」
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/pdf/leaflet.pdf

◆事業者が守るべき事項などを記述
個人遺伝情報取扱協議会のページ
http://www.cpigi.or.jp/index.html

出典
日経新聞・朝刊 2014.10.26