床ずれ

床ずれ、栄養補い保湿

床ずれ(褥瘡〈じょくそう〉)は寝たきりの人や、車いすで長時間同じ姿勢でいる人にできやすい。
エアマットなどで体への圧迫や皮膚のずれを減らすだけでなく、保湿や栄養状態を良好に保つことが予防や治療には重要だ。

骨の出っ張りに傷口
床ずれは、骨盤やかかとなど、骨が出っ張っている部分にできやすい。
そうした場所に体圧が集中することで血液の流れが悪くなり、皮膚や皮下組織、筋肉が傷つく。
体を動かすことなどによる皮膚のずれも原因になる。
 
皮膚の表面が赤くなって消えない状態はまだ軽症だ。
重症化すると、組織が壊死し、骨や筋肉が露出してしまう。
そんな状態になってから見つかることもある。
 
高齢者は、食事だけでは十分な栄養を確保できないことがあり、アルギニンというアミノ酸亜鉛を補給した方がよい。
 
信販売でゼリーや飲料を購入する方法もある。

軟膏やパッドで治療
日本褥瘡学会が、自宅で療養する約220人を対象にした13年の調査によると、床ずれができやすい部位は、お尻のすぐ上にある「仙骨部」が約4割で最も多かった。
ほかに「骨盤・太もも」「かかと」、座った時にお尻の底で骨が出っ張る「座骨結節部」がそれぞれ1割前後だった。
 
治療は傷口を洗浄し、状態に応じて軟膏などの外用薬を塗ったり、傷口をパッド状の医療用品で覆ったりするのが基本となる。(「保存的治療」)
 
傷口が大きくて深いときは、血流を保った皮膚を移植し、傷口をふさぐ手術をすることもある。
手術をするかどうかの判断は、傷口などの状態だけでなく、術後に床ずれが再発しない介護環境を整えられるかにも左右される。
 
保存的治療では、医療用品以外の製品が使われることもある。
当初、食品用ラップが使われたため「ラップ療法」と呼ばれるが、最近は穴の開いたポリエチレンシートなどが使われている。

医療用品や外用薬を使った治療と比べても、治るまでの期間などにはあまり差はないという。

学会は12年、褥瘡予防・管理ガイドラインに、在宅ケアなどで「使用することを考慮してもよい」と明記。
ただ、十分な知識と経験のある医師のもとで患者・家族の同意を得て実施すべきだとした。傷口に感染がある場合など、適さないケースがあるからだ。
 

医療用品、ラップ療法、生理用ナプキンを併用す方法もある。
特に、ラップ療法は傷口を乾燥させずに保つことができる。
どこでも手に入って安価な点もいい。
状態に応じて使い分けることが重要だ。

まず相談、再発防ごう
床ずれを治すには医師らによる治療のほかに、介護する人も適切なケアを知ることが重要になる。
それは、新たな床ずれの予防にもつながってくる。
 
高齢者は1日に3回食事をしていても、栄養が不足しやすい。
傷の治りが遅れるだけでなく、筋肉や脂肪が減って骨が出っ張るため、床ずれができやすくなる。
栄養補助食品を利用してエネルギーやたんぱく質亜鉛などを補う必要がある。
 
入浴などで体を清潔にし、皮膚を保湿することも欠かせない。
皮膚が汗や尿、便で湿ったり、乾燥したりすると、傷ができやすくなるからだ。
 
ベッド上で体を起こすときは、ベッドの傾斜角度がきつくならないようにして、お尻などに体圧がかかりすぎないようにする。
 
ただ、家族では十分なケアが難しい場合も珍しくない。
介護する人は、床ずれを見つけたら、ます担当のケアマネジャーや訪問看護師に相談するとよい。
「褥瘡外来」を開設している病院もある。

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出典
朝日新聞・朝刊 2015.11.3


<参考になるウェブサイト>
日本褥瘡学会「一般の皆様へ」
http://www.jspu.org/jpn/patient/index.html 
(予防や治療の説明を紹介)

日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
https://www.dermatol.or.jp/qa/index.html 
(「入浴してもよいですか?」など15の質問に答えている)