高齢者の皮膚の傷

高齢者の皮膚の傷 介護中、腕つかんだだけでも

高齢者は腕や足を軽くぶつけたり、こすったりしただけで、皮膚が裂けるほどの傷になることがある。
加齢や薬の副作用などで皮膚が薄く、もろくなっているためだ。
こうした外傷を「スキンテア」と呼んで、予防に力を入れる動きが広がっている。
 
スキンテアは介護を受ける高齢者に多くみられる。
看護師や家族が、高齢者の腕や足に傷があるのを見て『虐待されたあとではないか』と誤解するケースもある。
介護する人たちは予防法を知っていたい。

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高齢者に多い皮膚の外傷として豪州などで注目されてきたが、日本ではまだよく知られていない。
スキンテアになる人の割合や年齢、性別などの実態調査を、日本創傷・オストミー・失禁管理学会が始めたところだ。
 
日常の何げない刺激が引き金になる。
たとえば、ベッドの柵に手足をぶつける、着替えで衣服がこすれる、ばんそうこうをはがす、などだ。
介護する人が腕を強くつかんだだけで起きる場合もある。
 
高齢者の肌は、新陳代謝の衰えや弾力を保つコラーゲンの減少のため薄くなっている。
皮膚の各層の結合ももろく、はがれやすい状態になっている。
 
特に注意したいのは、ステロイドや抗凝固剤、抗血小板薬を使っている人たちだ。
ステロイドは長く服用すると皮膚が薄くなる副作用がある。抗凝固剤などは皮下出血が起きやすくなる。
いずれもスキンテアになりやすい。

処置にも注意が必要だ。
まず、患部を水で洗う。
はがれた皮膚が残っていれば、取り除かずに元に戻すと治りが早い。
傷口は貼り付きにくいガーゼで覆うようにする。
この時、皮膚がめくれた方向がわかるよう、目印をつけておく。
ガーゼを換える際、皮膚を一緒にはがさないためだ。
その後、看護師に相談するか、皮膚科の専門医を受診する。傷口が大きく、出血が治まらない場合は早めに受診したほうがよい。

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肌の保湿も心がけたい。
保湿剤はローションやスプレー状のものがよい。
クリーム状だと肌になじませることが刺激になり、逆にスキンテアの原因になりかねない。
 
予防するには、肌に余計な刺激を加えないことが大事だ。
ベッドの柵はタオルで覆い、体位を変えたり車いすに移したりする時はなるべく2人以上で支えて腕や足をぶつけないように注意する。
 
スキンテアは注意すれば防げる。
皮膚に余計な刺激が加わらないよう、介護を受ける高齢者の生活環境を見直したい。


関連サイト
日本創傷・オストミー・失禁管理学会のサイト 「テアについて」
http://www.etwoc.org/
(看護師ら専門家向けの内容)

参考
朝日新聞・夕刊 2916.9.11