ゲノム編集の医療への応用

ゲノム編集、医療に応用の動き 

遺伝情報を改変するゲノム編集技術を使い、病気を治療しようという研究が国内でも盛んになってきた。遺伝病の原因遺伝子を修復したり、がんの治療にいかしたり。そんな期待の一方で、意図しない遺伝子の改変を起こし、健康被害につながるという懸念もある。リスクを減らすため編集技術を改良する動きも出ている。

 

遺伝子を修復や破壊して治療

ゲノム編集を医療に応用する研究は日本でも進みつつある。

自治医科大では、ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を使い、血が止まりにくい「血友病」の治療法開発に取り組む。

 

血友病は遺伝子異常が起こす病気。

肝臓で作られる血を固める成分が不足するため、出血すると止まりにくい。

国内に約6千人の患者がいるとされ、血液凝固因子製剤を毎週1~3回注射しなくてはいけない。

 

めざすのは、ゲノム編集で正常な遺伝子を組み込ませ、血を固める成分を作れるようにすることだ。

実現すれば、因子製剤を注射しなくても済むと期待される。

 

昨年、マウスでの実験に成功したと発表した。

血友病のマウスに、ゲノム編集を行う酵素と正常な遺伝子を組み込んだ無害のウイルスを注射したところ、マウスが血を固める成分を作ることができるようになった。

 

5年後にも人間への応用をめざす。

ゲノム編集を使った治療が可能になれば、患者の未来を明るくで

きる。

より精度の高いゲノム編集技術の登場を期待する。

 

ゲノム編集は、体内で行う方法と、取り出した細胞を体外で編集して体に戻す方法がある。

手法も、遺伝子の働きを取り戻すための修復と、特定の遺伝子を壊

して治療効果を狙うものに大別される。

 

研究で先行する中国や欧米では、主に採血で取り出した細胞を体の外で編集する研究が進む。

免疫の働きにブレーキをかける遺伝子を壊し、がん患者の治療に

いかしたり、エイズウイルスの感染に関わる遺伝子を壊してウイルスの活動を抑えたりする。

 

一方、体内でゲノム編集を試みる企業もある。

米サンガモ・セラピューティクス社は昨年、遺伝子異常で特定の酵素を作れず、呼吸困難などが起きる難病「ムコ多糖症2型」の臨床試験を始めたと発表。

正常な遺伝子を患者に注射し、肝臓の細胞に組み込ませることで、酵素を作れるようにする。

2022年2月までに9人の患者に行い、安全性と効果を検証する計画だ。

 

精度と検査法 両輪で技術向上

ゲノム編集は狙った遺伝子以外を改変してしまう恐れがある。

細胞のがん化を抑える遺伝子が壊されると、がんのリスク上昇が懸念される。

  

ゲノム編集の臨床応用は、狙い通りに改変する確率の向上と、改変の結果に問題がないかを調べる検査方法の開発にかかっている。

 

体の外で編集する方が課題は少ない。

 

体の外だと改変結果に問題がないか検査できれば、安全な細胞だけを体に戻せる。

体内で編集すると、そうした細胞を取り除くことができない。

 

また、ゲノム編集は細菌や人工の酵素を「はさみ」として使う。

体内での編集に使えば、「本来人間の体の中にはない酵素に対して

免疫が反応し、酵素が入った細胞は排除される可能性がある。

防ぐためには免疫抑制剤が必要だ。

 

一方、ゲノム編集の精度が高くなるほど、多くの細胞に狙い通りの改変ができるため治療効果が上がり、意図しない改変も防げる。

 

東京大ののチームは8月、これまでのキャス9の4倍の塩基配列パターンを改変できる技術を科学誌「サイエンス」に発表した。

改変できる範囲が広がると、似た配列が少ないところを狙えるようになり、意図しない改変を防げるという。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2018.10.11

 

<関連サイト>

ゲノム編集を使った病気 の治療

https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/704