風邪が治っても長引く咳

風邪が治っても長引く咳

風邪が治った後も、咳だけがいつまでも続くことがある。

実は風邪と異なる病気のことも多く、放置すれば症状が悪化しかねない。

百日咳や慢性肺疾患など、風邪としっかり区別し適切な治療法で対処したい。

 

咳は気道に痰などの異物が入り込んだときに排出するために起きたり、炎症や気道が

狭くなるなどの刺激によって発生したりする。

風邪に関連するものと、関係しないものがあるので区別したい。

 

風邪が治った後も咳が長く続くことがある。

1週間程度なら心配いらないが、2週間以上続いていたら注意が必要になる。

風邪のウイルスは2週間も体内にとどまれないので、それ以上続く咳は単なる

風邪ではない。

 

2週間以上続く咳で最も多いのは咳ぜんそくだ。

<個人的コメント>

私は、外来診察を長くやっていてマイコプラズマ感染症の方が多い印象を持っています。

呼吸器内科、特に喘息を専門(得意?)とする先生は比較的安易に「咳ぜんそく」と診断する傾向にあるようです。

こういった先生の診察を受けて治療を受けても咳が止まらない方が、時々来院されます。

このような患者さんで、マイコプラズマ迅速試験が陽性に出るケースがしばしばあります。一般的に、マイコプラズマ肺炎という呼び方をするため、高熱や胸のレントゲンで派手な影(陰影)が出るような気がします。

しかし、迅速試験が容易に行えるようになってからは、無熱で影も出ないことが結構多いことがわかって来ました。

当院ではこういった症例は「マイコプラズマ感染症」とか「マイコプラズマ気管支炎」と呼ぶようにしています。

 

風邪で併発することも多い。

風邪はのどより上の上気道に炎症が起こるのに対し、咳ぜんそくは下気道の気管支にアレルギー性の炎症が起こった状態。

 

気管支が過敏になっているため、冷たい空気やたばこの煙など、わずかな刺激で咳が出るようになる。

風邪でも気管支が敏感になるので併発しやすくなる。

 

ぜんそくとの違いは、呼吸困難になったり気道でゼーゼーというぜん嗚が間こえたりしないこと。

しかし、放置すると約3割がぜんそくに移行する。

ぜんそくの段階でしっかりとどめる必要があり、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を使って治療する。

 

通常の風邪のウイルスではなく、クラミジアや百日咳といった細菌の感染症で長引

くこともある。

夜中に咳が出やすい風邪や咳ぜんそくとは違い、時間帯による変化はあまりない。

 

感染症の特徴は黄色い痰が出ること。

黄色い痰には、細菌と闘った白血球の残骸が含まれている。

症状を引き起こす細菌にあった抗生物質を投与して治療する。

単なる風邪ととらえていると症状を悪化させかねない。

 

意外と多いのは後鼻漏だ。

鼻水がのどに流れることで痰がからむような咳が出る。

激しく咳き込むことはなく、軽い咳が長引くことが多い。

アレルギー性鼻炎もあるが、ほとんどは副鼻腔炎が原因。

<個人的コメント>

ここで副鼻腔炎と書かれていますが、詳しくは副鼻腔炎は細菌性とは限りません。

アレルギー性の副鼻腔炎もあり、好酸球副鼻腔炎という概念が最近では提唱されており、この副鼻腔炎はアレルギーが原因となります。

 

治療には去痰薬や抗生物質が使われる。

 

胃酸が食道に上がってきて食道に炎症が起きる逆流性食道炎で咳が出ることもある。

胃酸による炎症に加え、のどに炎症が起きているので咳が出やすくなる。

制酸剤で胃酸の分泌を抑えると改善する。

 

喫煙者の場合、COPD慢性閉塞性肺疾患)という病気も多い。

受動喫煙や大気汚染でCOPDになる人もいるが、患者のほとんどは喫煙者だ。

長年の喫煙で肺が傷み、気管支に慢性の炎症が起きて細くなる。 

 

発症しても気づかない人も多く、国内に約530万人の患者がいると推計されるが、その9割は診断を受けていない。

主な症状は咳、痰、息切れなど。

進行性の病気で、放っておくと死に至ることもある。

傷んだ肺は元に戻らないが、治療によって進行は抑えられる。

 

肺がん、結核、肺炎など、ときには深刻な男気が隠れているケースもある。

熱が4~5日も下がらない、咳をしていないときも息苦しい、胸が痛い、といったときは肺炎の可能性が高い。

<個人的コメント>

高齢者では、熱も咳もなく食欲がなくなっているいるだけの肺炎もあります。

 

これらの症状があればすぐに、そうでなくても2週間以上咳が続いているときは受診しよう。

<個人的コメント>

今回の記事の内容およびコメントを寄せられたドクターの見解についていささか異議があります。

「風邪が長引いたら他の病気を考える」ということですが、風邪の延長線上にある細菌二次感染、つまり「風邪のこじれ」の説明がありません。

風邪が長引いた場合に、すぐに咳ぜんそくなどの別を考えるのではなく、最初の風邪の診断がはたして正しかったのかと疑うことも大切です。

マイコプラズマも「のどの痛み」(咽頭炎)で発症することも多く、インフルエンザも広い意味では風邪ですが、咳が長引くことは日常臨床でしばしば経験することです。

ここで「風邪」について少しお話します。

一般的な風邪は「普通感冒」と言います。

それに対して、「普通感冒」でなく風邪症状を起こす他の病気は「風邪症候群」と言います。

インフルエンザ、マイコプラズマ溶連菌感染症などが該当します。

つまり、さまざまな「風邪症状」を引き起こす疾患の除外診断の結果、残ったのが「普通感冒」、いわゆる風邪なのです。

したがって、最初から「風邪」と診断してはいけないのです。

「『風邪』に抗生剤は不要」という論争の際には、しばしば風邪の診断がしっかりされてない場合も多い(ないしはほとんどされていない)のです。

 

二次感染とは

同じ人が、ある感染症に続いて別の感染症にかかること。

多くはウイルス感染で始まる風邪が、細菌感染の合併ないしは以降する場合に用いる用語。

また、集団感染で、ある感染症に最初に感染した人から感染を受けることを指す場合もある。(続発感染)

 

風邪(かぜ)の原因

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/01_kaze/

 

 

<まとめ>

風邪が原因の咳

・長く続いても1~2週間

・風邪のウイルスは体内に2週間とどまれない

 

こんな症状なら受診

・咳が2週間以上続く

・血痰が出る

・咳が出ると熱が4 ~ 5日下がらない

・咳をしていない時も息苦しい

 

長引く咳を起こす病気

・咳ぜんそく

 アレルギー性の気管支炎

 

感染症

 クラミジア、百日咳菌などに感染

 

・後鼻漏

 鼻炎で鼻水が喉に流れ込む

 

逆流性食道炎

 食道から胃酸が上がり、せき込む

 

COPD

 たばこで肺が傷み、気管支に炎症

 

・肺がん・結核・肺炎

 

咳を起こす要因

鼻・喉

・風邪

・インフルエンザ

・後鼻漏

 

気管支・肺

ぜんそく

・百日咳

・肺炎

・肺がん

 

逆流性食道炎

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2019.11.16

 

<関連サイト>

2週間以上、続いているせきは風邪ではない

https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/051600119/

 

あなたの咳、大丈夫? 長引く場合は要注意

https://style.nikkei.com/article/DGXDZO64365310Q3A221C1W13001/

 

せきぜんそく油断しないで、2カ月続くなら検査を

https://style.nikkei.com/article/DGXDZO35386010W1A001C1EL1P01/

 

風邪の後も続く咳 大人の「ぜんそく」にご用心

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO93699290W5A101C1000000/

 

長引く空ぜき、眠れない…せきぜんそく、潜む危険

放置すると重症化も

https://style.nikkei.com/article/DGXKZO89160720Q5A710C1TZQ001/

 

一見「風邪」だが実はちがう 受診すべき6つの症状

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO39429220X21C18A2000000?channel=DF140920160927&page=3

 

治りにくい咳、中高年で急増

https://style.nikkei.com/article/DGXKZO07591780U6A920C1TZQ001/

 

せきぜんそく油断しないで、2カ月続くなら検査を

https://style.nikkei.com/article/DGXDZO35386010W1A001C1EL1P01?page=2

 

あなたも予備軍かも 突然襲う大人ぜんそくにご注意

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO89548590R20C15A7000000/