「診療ガイドライン」

「診療ガイドライン」で治療への安心を

病気だと診断されたら、どんな治療を受けるのか不安になるものだ。
体験談もいいが、不確かなことも少なくない。
参考になるのが、推奨される治療法などを書いた「診療ガイドライン」だ。
出版物やネット上で見ることができる。医療者向けが多いが、患者向けの解説も増えつつある。
情報を得れば、医師や薬剤師などに質問もしやすくなる。

タイプ別に推奨
診療ガイドラインには、推奨される治療法と、その根拠が書かれている。
医療者だけでなく患者にとっても情報源になる。

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手術にするか薬にするか、薬を使うか使わないかなど、治療の過程では、複数の選択肢の中からどれかを選ばなければならない場面が出てくる。
診療ガイドラインには、こういった治療上の「疑問」に対して、今の時点で最適と考えられる「お勧め」が示されている。
医学の進歩に遅れないよう、数年に一度は見直されるので、常に最新の「お勧め」が分かる。
 
「お勧め」は、科学的根拠に基づく医療(EBM)の考え方に沿っている。
学術論文を系統的に調べ、その内容をまとめた上で、医師や薬剤師など複数の立場の委員で成るチームが、メリットとデメリットを考えて作成する。

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ただし、実際の患者には様々な事情があり、全員が「お勧め」通りにしなければならないというわけではない。あくまで、選択の際の意思決定をサポートするという位置づけだ。
診療ガイドラインが医療現場で広く利用されれば、診療のレベルアップが期待できる。

無料で閲覧可能
診療ガイドラインは、論文や書籍として刊行されるが、インターネット上なら無料公開されている場合もある。

日本医療機能評価機構(東京・千代田)が厚生労働省の委託で作るホームページ「Minds(マインズ)」では、各種の診療ガイドラインを無料で見ることができる。
「メインメニュー」から「医療提供者向け診療ガイドライン」を選ぶと、診療ガイドラインのリストが出てくる。
東邦大学・医中誌診療ガイドライン情報データベース」でも検索が可能だ。
 
インターネットで病気や治療についての情報を収集する際、病名だけだと、雑多な情報が出てきてしまう。
「病名」と「ガイドライン」の2語で検索すると、ガイドラインが上位に出てくるので見つけやすい。
 
ただ、これらの診療ガイドラインは現状ではほとんどが医療者向けに書かれている。
専門用語や薬の名前なども多く、患者が読みこなすにはややハードルが高い。
 
Mindsでは、ガイドラインに沿って、診断から治療への流れ、治療法の種類、日常生活を送る上での注意点などをまとめた一般向けの「ガイドライン解説」を作成。
また、各種学会でも患者向けの解説を充実させつつある。日本乳癌学会の「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」や日本高血圧学会の一般向け「高血圧治療ガイドライン」解説冊子などで、インターネット上に公開されている。

患者と医療者の意思決定を支援するのが診療ガイドライン
作成段階から医療者と患者や市民が協力できるのが最善だ。
いくつかのガイドラインでは、患者も作成に参加し始めている。

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臨床のデータが基に
診療ガイドラインは臨床研究の結果をベースにして作られることが多い。
元の臨床研究に問題があればガイドラインにも影響が及びかねない。
 
例えば2013年に高血圧治療薬のバルサルタン(商品名ディオバン)の臨床研究に不正が発覚、複数の論文が撤回された。
日本高血圧学会は高血圧のガイドラインから、撤回論文の引用を取りやめるなどの対応を迫られた。
 
臨床研究に関する論文では、思わしくない結果が発表されにくいことが知られている。
これを「出版バイアス」と呼ぶ。
ガイドラインの作り手は、より客観性を高めるため、出版バイアスにも目を配る必要がある。

出典
日経新聞 2016.1.16


<私的コメント>
ガイドラインにはエビデンスのレベルが求められます。
大規模スタディはそのエビデンスの一つでレベルも高いといわれています。
この「大規模スタディ」については少し専門的になってしまいますが、以下のサイトが参考になるかも知れません。