乳幼児のやけど

やけどは日常生活の中で起きやすい外傷の一つ。
特に乳幼児は、皮膚が薄くて体も小さいため、ひどくなりやすく、注意が必要だ。

東京都が2013年8~9月、都とその近県に住み、0~6歳の子どもを持つ20歳以上の男女3千人に実施したインターネット調査によると、子どもがやけどをしたり、やけどをしそうになったりした経験があると答えたのは58%を占めた。
原因となった製品などは複数回答で、食べ物・飲み物が937件と最も多く、据え置き型調理器具(ガスコンロなど)459件、花火435件、卓上調理器具401件、炊飯器304件、アイロン251件が続いた。

また、やけどで病院を受診している割合は、乳幼児で20%あり、大人の8%と比べて高いという。

やけどで救急搬送される子どもで最も多いのは、つかまり立ちをして、テーブルの上に置かれたポットや飲み物の容器にふれて、顔や頭にお湯などをかぶる事故だ。
テーブルクロスを引っ張って、かぶってしまうケースも目立つ。

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やけどは熱で皮膚が傷ついた状態を指し、程度は1~3度に分類される。
1度は皮膚の表面が赤くなり、通常3、4日で赤みや痛みが消える。
2度は真皮(表皮の下の皮膚)に達し、水ぶくれができて激しい痛みが出る。皮膚が薄い太ももの内側や手の甲などでは痕が残ることがある。
3度は皮膚の厚さすべてが傷つき、皮膚が白色や黒色になる。
痕やひきつれを残すことがある。

大人と比べて皮膚が薄い子どもは、重症化しやすい。
大人でも70度のお湯に1秒間ふれるとやけどする。
子どもなら、さらに短い時間、低い温度でより深刻なやけどにつながる。

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応急手当ては、やけどをした部分をすぐに水道などの流水で冷やすことだ。
冷やすことで、やけどの進行や痛みを抑えられる。
時間は20分程度続けるのが理想的。
腹や背中、顔など流水で冷やせない場所は、清潔なタオルやガーゼを水にぬらし、こまめに取り換えながら冷やし続けるという。

治療は、1度ならば特に必要はないが、炎症を抑える軟膏などをぬる場合もある。
2度は患部を乾燥させないようにガーゼなどで保護しつつ、感染症を防ぐ抗菌薬などの外用薬で治療する。
3度は自然に治ることは原則なく、皮膚移植が必要となる。移植時期は場所や大きさなどによって変わる。

重いやけどをした患者の皮膚移植では最近、本人の表皮をわずかに採取し、培養してシート状にした製品が注目されている。
患者本人の皮膚なので、拒絶反応を起こさないとされる。


参考サイト
「皮膚科Q&A」の「やけど」(日本皮膚科学会のサイト内にある一般市民向け)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa8/index.html
やけどの症状や応急手当て、治療法、適切な治療を受けるコツ、痕を目立たなくする方法などを説明している。
 

出典
朝日新聞・朝刊 2016.2.8(一部改変)