脳卒中を疑う症状あれば受診を

これって脳卒中? 疑う症状あれば受診ためらわずに

日本人の死亡原因で4位の脳卒中は、介護を必要とする原因ではトップに位置づけられる。
脳卒中を疑う症状が見られれば、ためらわずに病院に行ってほしいと専門家は助言する。
再発することも多く、予防に取り組む自治体も出てきた。

介護原因のトップ
2013年の国民生活基礎調査によると、「介護が必要となった主な原因」で、最も多く挙げられたのが「脳卒中」(18・5%)だ。
認知症」(15・8%)や「高齢による衰弱」(13・4%)を上回る。
脳卒中は「寝たきりの原因」でも最多の35・7%。
本人だけでなく家族や周囲の生活にも大きく影響する。
 
脳卒中は、起こる仕組みによって大きく「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」の3種類に分かれる。
激しい頭痛や運動まひ、意識障害など典型的な症状の出方も少しずつ違うとされる。
たとえば、頭蓋骨と脳の間にあるくも膜で脳動脈瘤が破裂して起きるくも膜下出血では、激しい頭痛や意識障害が起きるが、通常手足などのまひは出ない。
 
脳卒中を疑う症状としては「激しい頭痛」「片側だけの顔面のまひやしびれ」「ろれつが回らない」などがある。
脳卒中を疑う症状が出たら、ためらわずに病院に行く必要がある。
命にかかわるだけでなく、早期に治療を開始できるかどうかで、手足のまひなど後遺症の程度も変わってくるからだ。
 
2009年に約250人の脳卒中の患者を調べた調査では、65歳以上の高齢者の2人世帯や一人暮らしの場合、3人以上の世帯に比べて、発症から病院到着まで3時間を超えやすいとの結果が出た。
さらに夜間に発症した場合、高齢者の2人世帯では、病院到着までの時間が極端に長くなる傾向もみられた。相方が脳卒中の症状だと気づかなかったり、救急車を呼ぶのをためらったりするためという。
 
不整脈にも要注意
全国の医療機関から登録された患者のデータを分析した「脳卒中データバンク2015」(中山書店刊)によると、脳卒中のタイプ別では約9万6千人のうち脳梗塞が75・9%を占め、脳内出血は18・5%、くも膜下出血は5・6%だった。
 
脳梗塞の中でも「心原性脳塞栓症」というタイプは高齢者に多く、重症化しやすい傾向がある。
 
心原性脳塞栓症は、不整脈の一種「心房細動」により心臓や大動脈でできた血栓が脳に流れてきて血管につまることで起きる。
太い血管がつまるため、他のタイプの脳梗塞に比べ重症になりやすい。

心原性脳塞栓症の予防のためには、抗凝固薬で血液をサラサラにして血栓をできにくくするなどの治療がある。
心房細動が起きた部分をカテーテルで焼く治療もある。
 
心房細動には動悸や息切れ、胸の痛みといったなどの症状が知られている。
ただ、自覚症状のない場合も多く、診断や治療を受けていない人もいる。
動悸などの症状が出たら自分の手首で脈を測る習慣をつけ、リズムの乱れに気づいたら病院に行ったほうがよい。
 
多い再発 習慣改善を
脳卒中の治療は、種類やタイプによって手術や薬を使い分ける。
脳梗塞の場合、一般的に発症後4時間半以内なら血栓を溶かす薬「tPA」を使うことが可能だ。
血管内にカテーテルを入れて血栓を取り除く治療は、発症から8時間以内が対象となる。
 
一方、脳卒中は再発することも多い。
再発予防でも脳卒中のリスクを高める高血圧や糖尿病などの管理が欠かせない。自治体による再発予防の取り組みもある。

 
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出典
朝日新聞・朝刊 2016.2.2