がん10年生存率

がん10年生存率どう見る 5年以降も低下なら長期観察

国立がん研究センターなどの研究グループが19日に公表したがんの「10年生存率」。
がんと診断された全国の患者約3万5千人を10年間追跡して集計した数値だ。

がんの10年生存率58.2% 部位で差、浮き彫りに
公表された乳がんの10年生存率は80.4%。
胃や大腸の生存率は5年以降、ほぼ横ばいだが、乳がんは5年(生存率88.7%)以降も同じ割合で下がり続ける。
 
10年生存率では、がんの進行度合い(ステージ)ごとの生存率も示された。ステージ1と4を比べると、胃や大腸では90ポイント近く離れており、早期発見・早期治療の重要性がうかがえる。
一方、ステージ1でも肝臓や膵臓では3割を切る。
また、前立腺では、ステージ3まではほぼ100%だが、転移のある4では4割以下。
転移の有無が生存率に大きく影響しているとみられる。

研究グループは、2012年から生存率解析システム「Kap Web(カップウェブ)」
https://kapweb.chiba-cancer-registry.org
を公開している。
性別や年齢、受けた手術などを入力すると、自分に近い条件での生存率が出てくる。
今回公表された最新データも反映されている。
 
新薬登場でさらに改善
今回のデータは、99~02年に診断された患者を分析した。
あくまで十数年前のデータとして参考にする必要がある。
バラツキもあり、個人がその数値の通りになるわけではない。
 
当時は抗がん剤放射線治療を併用する治療がようやく確立してきたころだ。
今はがん検診を中心に早期の発見・診断が進み、新薬も登場した。
実際に5年生存率を診断された年ごとにみると、99年と最新の07年では全部位で63%から68・9%と5・9ポイント改善した。
  
10年生存率が15.3%と低かった肝臓がんの場合、C型肝炎B型肝炎のウイルス感染が原因になることが多い。
現在はウイルスを排除したり抑え込んだりする薬があり、検査を早く受ければ、がんの発症を抑えやすくなってきた。
今回のデータは全国16病院の約3万5千人分だが、1月からは、がん患者の個人情報や治療歴を国がデータベース化して一元管理する「全国がん登録」が始まった。
全国9千近くのすべての病院などのデータを集め、発症数や生存率を把握できる。
地域差や施設差が明らかになれば、その原因を探って対策をとり、生存率の改善につなげることもできる。
部位やステージだけでなく、がん細胞のタイプなどによる生存率がわかれば、患者の状態ごとによりよい治療方法を選ぶための参考にもなる。
 
 
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出典
朝日新聞・朝刊 2016.1.26(一部改変)