たばこの火、若者から消せ

たばこの火、若者から消せ 医療費膨張の芽を摘む

若い世代の禁煙治療を支援する動きが広がってきた。
独自の制度を設ける自治体が増え、国も将来の医療費削減を狙い4月から保険治療に道を開く。
今や主役は若者だ。

青森県の男性喫煙率は全国1位、女性は2位。
たばこのニコチンは血管を収縮させ、依存性も強い。
吸い始め時期が早いほどニコチン依存症になりやすく、喫煙歴が長くなるとがんなど疾病リスクも高まる。
若者の禁煙を進め、早期に疾病の芽を摘む狙いだ。

自治体が補助金
若者の治療費を支援する自治体は増えている。鳥取県は11年度に、岡山市は14年度に、青森県15年度に始めた。
15年度にはまた岡山県岡山市が未成年者に治療費の9割を出す制度を設けた。
私的コメント
「未成年者」に治療費の9割を出す制度・・・こんな法案がよく議会を通ったものです。
県民や市民からクレームはなかったのでしょうか。

日本で禁煙治療に保険が適用されたのは06年。禁煙治療や受動喫煙防止を推進する国際条約が発効した翌年だ。
歴史は意外と浅いが、日本禁煙学会の集計では保険治療施設は今や1万6千施設を超す。
 
ところが保険適用には喫煙本数と年数を掛けた数値が基準になる。
1日1箱(20本)を10年吸って初めて基準200を満たす。
現在、20代のニコチン依存症患者だけでも約8割が保険対象外にある。
若者が保険治療を受けたくてもこの基準が壁だった。
当時は若い世代のニコチン依存度が強いという認識が十分に広がっていなかったが、近年ようやく浸透してきた。

こうした流れを受け、国も動き出した。
厚生労働省は今年4月の診療報酬改定で、喫煙の指数基準を35歳以上に限定する方針だ。
34歳以下の喫煙者は指数に関わらず、3割負担で済む。
治療の総費用は最長12週間で約6万6千円。
保険適用で自己負担は2万円以内に収まる。
 
禁煙治療は、喫煙に伴う疾病の医療費も減らす。
厚労省研究班の試算では、20代全員に禁煙治療を広げれば132億円削減できる。
20~70代の全員なら1346億円減らせる。
禁煙で寿命が延びれば所得や消費が増えて税収や経済活力も増す。
何よりも生活が豊かになる効果は大きい。

成功率は高くなく
国内喫煙率は現在約20%と1990年代の半分以下だが、近年ほぼ横ばいだ。
厚労省の14年の調査で禁煙を希望する喫煙者の割合は約3割だった。
絶対禁煙しない「コアスモーカー」を除いても喫煙率にはまだ低下余地がある。
そこで期待されるのが若い世代。
若い世代はニコチン依存度が強くなりやすいが、治療効果も大きい。

ただ禁煙治療の成功率は決して高くない。
4週間の禁煙継続率は8割近いが、日本禁煙学会が集計した1年後の禁煙継続率は約35%だ。
1本でも再喫煙すると再びニコチン依存症になりやすく、医療関係者は「1本おばけ」と呼ぶ。
再治療までは最低1年と決まっているが、治療と失敗を繰り返せば医療費は膨らむ。
再喫煙の主因の一つは周囲の喫煙環境だとされる。
喫煙環境の縮小や禁煙教育の徹底がさらに求められそうだ。

出典
日経新聞・朝刊 2016.3.6