週末断食

自宅で週末断食、注意点は 水分取り適当な運動を

よく耳にする「プチ(ちょっとだけ)断食」。
1~2日程度、固形物を食べない方法のことだ。
便通改善や自律神経を整えるなどの効果が期待できるという。
家庭でも手軽にできる一方で、間違ったやり方は不調の原因になるうえ、子どもや妊婦など断食してはいけない人もいる。

時間もお金もかけず、家でもできることから広まる「プチ断食」。
医学的な定義はないが、1~2日ほどの間の数食、固形の食べ物を取らない方法を指す。
何も食べないのとは異なる。
 
体重を減らしたくて取り組む人が少なくない。
だが、注意してほしいのは「断食後に体重が落ちるのは、軽い脱水で水分が減っているから。直後のダイエット効果は小さい」ということ。
 
空腹を体験すると、脳の満腹中枢が満足したと感じるためのポイントが下がり、食事量が減るので、いわゆる『胃が小さくなる』状態になりやすい」。
すると過食しにくくなり、長い目で見れば減量につながる。
私的コメント
今までもよく患者さんから「胃が大きくなる」「胃が小くなる」と言われてホントかなと半信半疑でした。
バリウム検査などをやっていると、胃下垂の方はビックリする(フィルムからはみ出る)ほど大きな胃ですが意外と小食の方が多いようです。
昔はこういった方は「胃アトニー」と言っていました。
一方、バリウム検査で胃が小さい方は胃壁の緊張が強くどちらかというと胃の運動が活発な方です。
早食い選手権の優勝者や大食の方の胃を、バリウム検査でつぶさに観察してみたい衝動にかられます。

便通よくなる
断食の効果として最も実感しやすいのが便通改善だ。
腸の中を空っぽにすることで、ぜん動運動を促すホルモンなどが分泌され、溜まった便が出る。
 
一方、交感神経と副交感神経からなる自律神経にも働きかけるという。
胃酸分泌や腸の運動など、食べ物の消化に関わるのが副交感神経。
飢餓を感じると交感神経が働き、代わりに副交感神経は休むことができる。
過食などで乱れていた交感、副交感神経の働きのバランスが整えば、疲労感や睡眠障害などの改善にもつながるという。
私的コメント
いつも思うことですが、レストランで順番待ちの人の顔の表情は険しく見受けられます。(交感神経緊張状態)
一方、食事をして帰る際の表情は緩んでいます。(副交感神経緊張状態)
甘いものを食べている時の顔は「皆幸せな表情」をしていることも有名です。(副交感神経優位)

様々な効果が期待できるプチ断食だが、してはいけない人もいる。

プチ断食も「BMI(体格指数)が18.5未満の『やせ』の人や成長期の子どもは厳禁。
また、断食中は脱水しやすいので、脳梗塞の既往がある人、動脈硬化などで血管が詰まりやすい人も避けたい。
仕事が忙しいときや、ストレスが多い時期は断食でストレスが大きくなり過ぎる。
イライラして苦痛が多く、体調を崩しやすいのでやめた方がいい。

徐々に通常食に
上手にプチ断食するにはどうしたらいいのだろう。
週末の数食分だけ固形物を食べないのが効果も実感しやすいという。
 
断食で最も重要なのが、断食前後の食事。
緩やかな助走とソフトランディングが必要で、これから断食だからといって、直前に肉を大量に食べてはいけない。
断食前夜のお勧めは脂肪分の少ない軽めの和食。
アルコールや刺激物、喫煙も避ける。
 
翌朝はおもゆや具のないみそ汁、ヨーグルトなどを取り、その後は2日目の夜まで具のない汁物、野菜ジュース、ヨーグルトにする。
固形物は2日目の夜、通常の半量を。
量は体格によるが、普段、毎食茶わん1杯のご飯を食べているなら、それが通常量となる。

断食の時間が長ければ長いほど、胃腸の消化力は落ちる。
低栄養状態の人が急に栄養を摂取すると、体内で電解質のバランスが崩れ、問題が起きることもある。
ドカ食いで負担をかけないよう、病院の回復食のように段階を経て通常食に戻すのが大切だ。
よく噛むことを忘れないようにする。

断食中にはこまめな水分摂取が欠かせない。
普段食べる食事には、汁物以外にも1リットル近い水分が含まれている。その分も含め、1日2~2.5リットルの水分を取りたい。
 
断食中は、食事誘発性熱産生という消化吸収で作られる熱エネルギーができないため、冷えを感じる人も多い。
それを防ぐには、散歩などの軽い運動が効果的だ。
体内の脂肪の燃焼も促されるので、体脂肪を減少させる作用もある。
冷え防止には、入浴もいい。
断食専門施設の中には、温泉設備を完備したところもある。
ただし入浴の際は、前後に水分補給を。
 
空腹による吐き気などは徐々に治まる。
気になるなら、グレープフルーツやバニラの香りが心を落ち着けるのに役立つ。
 
体質改善などのためには、プチ断食を定期的に繰り返すのが効果的とされる。
月に2回、3カ月ほどで体の変化が実感できる。
それ以降は、月1回、2カ月に1回と間隔を広げてもいい。

◇    ◇

夕食を抜くだけから始めてみては
仕事などで夕食時間が遅くなりがちな上、食べ過ぎる傾向にある現代人。
週1~2回、夕食を抜くだけでも、便通など体調の改善に役立つ。
 
本来、何も食べない睡眠中の8時間程度の間に、胃腸は消化吸収をし、残さを大腸へ移動させる。
空っぽの所に朝食を食べると、胃直腸反射で便意をもよおす。
しかし、夜遅くに食べているとリズムが狂う。
夕食抜きでリズムを戻すことも可能。
一方、食事量の抑制にもなり、ダイエット効果も期待できる。

上手なプチ断食の方法
■週末断食■
金曜 夕食: 軽めに。アルコールは控える
土曜 朝食: おもゆや具のない味噌汁、ヨーグルトなど
   昼食・ 夕食: だし汁や具のない味噌汁、野菜ジュースなど
日曜 朝食・昼食: だし汁や具のない味噌汁、野菜ジュースなど
   夕食: おかゆを通常の半量、良くかん食べる
月曜 朝食: おかゆを通常量、良くかんで食べる
昼食: 通常食を軽めに 

■夕食抜き断食■
昼食: 軽め → 夕食: 固形物は食べず水分のみ → 翌朝: 少なめのおもゆやおかゆ → 翌昼: 消化の良い物を軽めに→翌夕: 通常食


断食前と後
消化の良い物を。
胃腸の機能が低下しているので、おもゆやおかゆを少量ずつよくかんで。
どか食い、アルコール、刺激物は禁物。。

断食中
こまめに水分を。
1日2~2.5リットル (食事で取る分含む)  
散歩など軽い運動や入浴で冷えを防ぐ



プチ断食、始める前に
向かない人、向かないタイミング
BMI(体格指数)18.5未満の「やせ」の人
※ 体格指数=体重(キログラム)÷身長(メートル)の2乗
・ 体調不良や慢性疾患で薬を継続して飲んでいる人。脳卒中などになったことのある人
・ 妊娠している人
・ 仕事が忙しい時、ストレスの多い時期
・ 生理中
・ 成長期の子ども
期待できるのは減量ではない
・ 腸を空にし、ぜん動運動を促し便秘改善
・ 脳が満腹感を覚えるための食事量を減らす
・ 自律神経を整え疲労感の軽減


出典
日経新聞・朝刊 2016.2.27(一部改変)