食欲不振

その食欲不振、病気のせいかも 心の不調が原因の場合も

好物を目の前にしても食欲がわかない、近ごろ食が細くなったと悩む人がいる。
食欲不振の原因はさまざまで、心身が疲れていたり、病気が隠れていたりする。
原因を突き止め、障害を取り除くことができれば、食を楽しめるようになる。

食欲は人間の基本的な欲求で、健康のバロメーターだ。
食が進まない場合、何らかの不調を抱えているかもしれない。
食欲不振では「食べたい気持ちはあるのに食べられない」「食べたい気分にならない」といった状態が続く。

食欲は脳の視床下部という場所で調整されている。
食べるのを促すのが摂食中枢で、満腹になると満腹中枢が働いて、それ以上食べるのをやめさせる。
この調整がうまくいかなくなると、食欲低下などにつながる。
また、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスの乱れから食欲不振になるケースも多い。
食欲不振の原因はさまざまだが、悲しい出来事や緊張感、疲れなどによって、食事が進まなくなったという経験は誰にでもある。
この場合、数日たてば食欲が戻るケースが大半で、あまり心配はいらない。

腹部の異常やうつ
問題なのは、何らかの病気がもとになって食欲不振を招いている場合だ。
代表的なものでは胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど消化器系の病気のほか、腎不全、甲状腺機能低下症などがある。
風邪やインフルエンザなどで食欲が減退するのもよく知られている。

食欲不振がしばらく続いたら医療機関を受診した方がよい。
うつ病統合失調症などの精神的要因も考えられる。
東京都内に住む40代の男性会社員のAさんは日常的に残業するなど多忙な日々を送っていた。
次第に食事のときに腹痛を感じるようになり、食事の量が減ってしまった。
さらに寝付きが悪くなり、早朝に急に目が覚める症状も現れた。

Aさんは病院で腹部の検査などをしたが、異常は見つからず、いろいろ調べてもらったところ、軽いうつ状態と診断された。
抗うつ剤を服用しながら、仕事や生活スタイルを見直したところ、食欲も少しずつ戻ったという。

個人差や状態にもよるが、食欲不振や体重減少のほか、憂鬱な気分、意欲の低下、睡眠障害などが続くとうつ病を疑う必要がある。
こうしたケースでは、早めに治療を始めることが重要だ。

病気でなく日常の生活スタイルでも食欲不振は起こる。
原因となるのは精神的なストレス、運動不足、過労や睡眠不足、飲み過ぎなどだ。
年を重ねると足腰が弱ったり、食べ物をかみ砕く能力が低下したりする。
独り暮らしで孤独を感じてストレスが増す人もいる。
特に高齢者は要注意だ。

一方、女性は妊娠初期のつわりでも食欲が落ちやすい。
また、やせたいとの思いから自分がやせすぎだと認識できない、体重増を恐れて食べられなくなる、といった摂食障害が思春期などに出やすい。
最悪の場合は死に至ることもある。

規則正しい生活を
それでは、日常生活でできる食欲不振対策はどんなものがあるのか。
まずは不要な夜更かしなどをせず、できるだけ規則正しい生活を心がけることだ。
適度に運動し、酒は適量に抑えることが大切だ。

ただ、ストレスをなくすのは難しい。
酒でストレスを発散する人も多いが、趣味など酒以外で自分なりのストレス解消法をみつけることが重要だ。
悩みを抱えたときに相談できる相手がいると心強い。
食べ方の工夫も有効だ。
消化がよく食べやすい物などを少しずつ食べるとよい。
豆腐やサンドイッチ、ヨーグルト、果物などがお勧めだ。

消化器に問題がある人は、消化吸収のよいものを第一に考える。
刺激物を避け、煮物でもいつもより軟らかめにするといった工夫をしたい。

最近はゼリーなどの栄養補助食品や飲料タイプの流動食もあるので、利用するのも手だ。
ただし、吐き気があるときは無理をしない。
また、漢方は胃腸の具合を整えるのに向いている。

食欲が低下すると、活力や行動するためのエネルギーも落ちて悪循環に陥りやすい。
何かおかしいと思ったら、早めに対処しよう。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2014.9.23

関連サイト
食欲不振の原因・対策・予防
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/545