足腰の衰え

足腰の衰え 年だからこそ運動 筋力は戻る

年齢を重ねると、足腰の衰えを感じる人は珍しくない。
年だから仕方がない」と放っておくと、将来、介護が必要になるリスクを高めるかもしれない。

2013年の国民生活基礎調査によると、「介護が必要となった主な原因」は「その他」以外では「脳卒中」(18・5%)が最多だった。
しかし、4位の「骨折・転倒」(11・8%)と5位の「関節疾患」(10・9%)を合わせると22・7%で、脳卒中を上回った。
 
日本整形外科学会は2007年から「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」という考え方を提唱している。
筋肉や骨、関節などに問題が生じて移動機能が衰えた状態で、進行すると介護が必要になるリスクが高い状態のことだ。
 
平らな場所を杖なしで痛みなく歩ける高齢者でもロコモの可能性はある。
普段エレベーターばかり使っていると、階段の上り下りや、立ったり座ったりするのに必要な機能の衰えに気づく機会がないからだ。
 
病気がなく筋力低下だけならたんぱく質、カルシウム、ビタミンDをとりながらトレーニングをすれば機能は戻る。
まずは衰えの程度を知ることが重要だ。
ロコモ予防の啓発サイト「ロコモ チャレンジ!」
https://locomo-joa.jp/
では、三つのテストを紹介。
「立ち上がりテスト」は一定の高さから立ち上がるための能力、「2ステップテスト」は歩行能力をみる。
「ロコモ25」は日常生活での体の痛みや困難さなど25項目を5段階で評価し点数化する。
これらの結果からロコモ度を判定できる。
 
では、どうすれば予防できるのか。
スポーツの習慣がない人は通勤時に早足で歩いたり、エスカレーターやエレベーターでなく階段を使ったりして生活の中で少しきついことをする時間をつくるといい。
早足で歩くと自然と歩幅が大きくなり、通常の歩行では使わない筋肉も鍛えられる。
サイトでは予防のための「ロコトレ」も紹介されている。

バランス能力や筋力を改善するトレーニングもおすすめだ。
年だからとあきらめず、年だからこそがんばりたい。
年でも運動した分、筋力は戻り、骨量が減る速度を緩やかにできる。


こんな人はロコモです
⬜︎ ① 片足立ちで靴下をはけない
⬜︎ ② 家の中でつまずく、すべる
⬜︎ ③ 階段を上がるのに手すりが必要
⬜︎ ④ 掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど、負担がやや重い家事が困難
⬜︎ ⑤ 重さ2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難
⬜︎ ⑥ 15分くらい続けて歩けない
⬜︎ ⑦ 横断歩道を青信号で渡りきれない
⬜︎ ⑧ 片足で高さ40センチの台から立ち上がれない

① は、靴下をはくという動作をしながら同時にバランスを保つ力が落ちています。
② は、足を動かす神経が正常に機能していません。
③ は、自分の体重を持ち上げるのに十分な力がないか、ひざなどの関節の痛みのせいかもしれません。
④⑤ は、腰や背中が痛み持久力が落ちている可能性があります。
⑥ は、腰痛や足のしびれが起きる脊柱管狭窄症の可能性があります。
⑦ の場合は、歩く速度が極端に落ちています。
①~⑦ が一つでも当てはまる人はほとんどの場合ロコモで、痛みがある人は運動器に何らかの障害が起き、ロコモが進んでいる可能性が高い。
一度、専門医を受診しましょう。
⑧ のみに該当する人でもすでにロコモが始まっています。
運動や階段の利用、大股での歩行など、ふだんの生活の中でロコモの進行予防を心がけましょう。


<関連サイト>
ロコモ予防のサイト「ロコモチャレンジ!」内にある「ロコモ問診票」
https://locomo-joa.jp/check/
で、「片脚立ちで靴下をはけますか?」などの質問に答えると問診票が完成する。
「ロコモかもしれない?」と気になる人はこれを印刷し、受診時に医師に見せて相談するとよい。


出典
朝日新聞・夕刊 2017.3.7(一部改変)