食中毒を防ぐには ~ノロウイルスの場合~

食中毒を防ぐには ~ノロウイルスの場合~

日本の主要な細菌性食中毒の年次推移の統計によると、カンピロバクターによる食中毒が他の細菌による食中毒と比較して発生件数が多いことがわかっています。
ただ、食中毒の原因は細菌だけではありません。
カンピロバクターと同じくらい発生件数の多い食中毒の原因が、ノロウイルスです。
両者は発生件数では同じくらいですが、患者数では圧倒的にノロウイルスによる食中毒が多いのです。
これは食中毒1件あたりの患者数がノロウイルスで多い一方、カンピロバクターによる食中毒は典型的には1件当たりの患者数が少数だからです。
ノロウイルスではひとたび食中毒が起こると多くの人に感染するのに対し、カンピロバクターではそうではありません。
 
最近では、福井県若狭町の8小中学校で発生した集団食中毒の原因がノロウイルスでした。
食中毒の症状を訴えたのは287人といいます。

■福井・若狭町の集団食中毒 ノロウイルスが原因
http://www.asahi.com/articles/ASJ5T2FS9J5TUBQU005.html
 
ノロウイルスの潜伏期間は1~2日間です。
嘔吐、下痢、腹痛といった感染性胃腸炎の症状が出ます。
ウイルスですから抗菌薬は効きません。
たいていは自然に治りますが、抵抗力の弱い高齢者は死亡することもあります。
 
ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝にいて、加熱が不十分なまま食べると感染します。
ただ、二枚貝は感染源の一つに過ぎません。
ノロウイルスで大規模な感染が起こりやすいのは、感染した調理従事者が感染源になるからです。
感染者の腸内ではノロウイルスが増殖しています。
感染者がトイレに行ったあと手洗いが不十分なまま食品に触ると、食品が汚染されます。
 
やっかいなのは、感染しているのに症状がない場合(不顕性感染)があることです。
吐き気があったり下痢をしていたりする人に調理させないのは当然のことですが、それだけではノロウイルス感染を防げません。
症状がなくてもノロウイルスに感染しているかもしれないという前提で感染対策をするべきです。
本人が感染していなくても、水道の蛇口やドアノブがウイルスに汚染されている可能性もあります。
手洗いを徹底する、食品を扱うときは清潔な手袋をつける、などの対策が必要です。
 
手洗いも正しいやりかたで行わないと効果的ではありません。

参考
『せっかく手を洗うなら、正しい方法で』
http://www.asahi.com/articles/SDI201512134904.html