補聴器・人工内耳が進化

難聴治療 幅広がる 補聴器・人工内耳が進化

難聴の人たちを支える補聴器や人工内耳は、進化している。
これまで使えなかった人にも可能になる補聴器や、残っている聴力を温存できる人工内耳も登場した。
これらの機器は、個々の状態にきめ細かく対応できる性能を目指している。

埋め込み式音質良い
耳に入った音は、外耳道を通って鼓膜を振動させ、中耳、内耳と伝わるり内耳にある蝿牛で電気信号に変わり、聴神経を通って脳に伝わっている。
外耳や中耳に問題があると内耳に音が届かず、難聴になる。

耳の穴に入れるのではないタイプの補聴器が、日本でも医療機器の承認を目指して臨床試験(治験)が始まっている。(2014年3月時点)

骨と端子が結合するまで3カ月ほどかかる。その後、音を振動に変える装置を端子に取り付けると、骨が震えて内耳に直接伝わり、音が聞こえる。

骨を振動させる補聴器はこれまでもあったが、ヘアバンドなどで機器を頭に固定し、皮膚の上から震わせるタイプだった。
頭が圧迫されて痛く、目立つのであまり普及しなかった。

BAHAは内耳に振動が直接伝わるので音質がいい。
昨年(2013年)1月に公的医療保険の適用になった。
治療費はそれまで100万円ほど必要だったが、原則3割負担になった。
高額療養費制度を使えば、さらに負担は軽くなる。
局所麻酔で日帰りも可能という。
保険が認められるのは、外耳道閉鎖症や、中耳にある骨が硬くなる耳硬化症、慢性の中耳炎などによる両耳の難聴。片耳の難聴は適用されない。
年齢も18歳以上(外耳道閉鎖症は親の承諾があれば15歳以上)だ。
通常の補聴器が使えない人にはメリットが大きい。
今後、片耳が難聴の人も保険の対象に含めてほしい、と専門医は話す。

残存聴力を守る利点
人工内耳は、内耳に障害があり、青を電気信号に変えられなくなった難聴で、両耳がほとんど聞こえない人が対象となる。
蝸牛に電極を埋め込み、聴神経に直接、電気刺激を送る。

重い難聴でも、低音を聞き取る力が残っている人はいる。
昨年(2013年)9月、こうした難聴に対応できる「残存聴力活用型人工内耳(EAS)」が、厚生労働省に承認された。

高音を聞く蝸牛の入り口近くには電極で電気刺激を送り、低音を聞く部分には補聴器のように音を増幅させて聞かせる。
耳の後ろの頭蓋骨に装置を埋め込み、そこからのびる電極を蝸牛に入れる。
全身麻酔で7~10日の入院が必要になる。

マイクが内蔵された外付けの機械が周波数に応じて音を電気刺激にかえたり、増幅したりする。
低音の聴力が落ちてきても、機械を調整して電気刺激に切り替えることで対応できる。

これまでの人工内耳は、蝸牛に穴を開けて電極を入れていた。
蝸牛に負担がかかり、聴力が下がるリスクが高かった。
EASは電極が細くて軟らかいため、狭い隙間から入れられ、聴力を温存しやすいという。
年内(2013年)にも公的医療保険が使えるようになる見通しだ。

症状に合わせた治療ができるようになってきた、と専門医は話す。
治療後は少しずつ周波数などを調整しながら、半年ほどかけて聴力を改善させていく。
「治療はスタートであってゴールではない。言語聴覚士らとともに行うリハビリも重要だ」と語る医師もいる。

まとめ
骨固定型補聴器(BAHA)
対象
・両耳の外耳道閉鎖症、耳硬化症、慢性の中耳炎など
・原則18歳以上
特徴
・音質がよい
・局所麻酔で日帰りの手術が可能


残存聴力活用型人工内耳(EAS)
対象
・高音が高度の難聴で、低音は聴力が残っている場合
特徴
・今ある聴力を残せる
全身麻酔で1週間ほど入院が必要

参考
朝日新聞 2014.3.11