腎臓病に運動療法

腎臓病に運動療法

尿をつくる機能が低下した腎臓病の人が運動をすることで、特有の体力低下を防いだり、死亡率を減らしたりできることがわかってきた。
人工透析を必要とせずにすむ効果も報告され、運動療法の一部は今年4月から公的医療保険の対象になった。

体力低下 防ぐ効果
国内には慢性腎臓病(CKD)患者が約1300万人、うち透析を受ける人は32万人超いるとされる。
CKDの人は食事制限があったり、全身の健康状態が悪化したりして、体力が落ちやすい。
透析を受けると老廃物と一緒に体に必要なたんぱく質も失い、筋肉がいっそう減りやすくなる。
 
腎臓病の人が取り組む運動は「腎臓リハビリテーション」と呼ばれる。
腎臓リハビリには食事療法や心理的サポートも含まれるが、運動療法は中核的な存在と日本腎臓リハビリテーション学会は位置付ける。
 
かつては「運動をすると尿中のたんぱく質が増え、腎障害が悪化する」と、CKDの人はあまり体を動かさないのが原則だった。
しかし、激しい運動でなければ腎機能は悪化しないことが研究でわかってきた。
 
体を動かすことで筋肉や体力が体を動かすことで筋肉や体力が落ちるのを抑え、日常生活にかかわる活動度も上がりやすい。
日本も加わる国際チームの報告では、定期的に運動する透析患者はそうでない患者に比べ、調査期間中の死亡率が27%低かった。
 
学会がすすめる運動は、歩行など20~60分の有酸素運動を週3~5回、最大筋力の7割ほどで筋肉を鍛えるレジスタンス運動を週2~3回。
透析中にする場合は前半の時間に運動をおこなう。
透析を続けると徐々に血圧が下がるので、後半に動くと下がりすぎる危険があるためだ。
透析のない日に運動しても構わない。
医師に相談して無理のない程度から始め、少しずつ動く時間を延ばしたい。

一定条件で保険対象
新たな保険適用の対象は、糖尿病で腎機能が落ちた患者で、一定条件のもとで医師が透析予防のための運動指導をした場合だ。
 
まだ透析が必要な段階にはなっていないCKD患者が運動することで、腎機能を改善したり、透析などに移行する割合を減らせたりできるとする研究結果が最近、相次いで報告された。
運動で透析を防げれば、医療費の節約にもつながる。
 
大阪市総合医療センター糖尿病・内分泌センターでは5年ほど前から、ゴムのチューブを使ったレジスタンス運動に力を入れている。
糖尿病で外来を受診し、運動療法が可能と判断した患者全員に1本ずつチューブを手渡し、両手や両足でゆっくり引っ張るなどの運動をなるべく毎日続けてもらっている。
運動は糖尿病の悪化をくい止めるのにも役立つ。
 
現在、保険対象となるのはCKD患者の一部に限られているが、保険適用は、運動療法を一層進めていくためのいいきっかけになる。
 
運動を通して日常生活でできることが増えることが重要視されている。
買い物の荷物を自分で持てるようになったり、お風呂に一人で入れるようになったり。それまで無理だったそんなことが可能になれば、生活の質は大きく高まる。

ただし、続けても体力がなかなか上がらない人もいるという。
CKDの人はただでさえ、ふつうの人よりも体力が落ちやすい。
現状を維持できるだけでも、腎臓リハビリをする意義は十分にある。

 
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動画
腎臓病の運動療法 チューブを使ったレジスタンス運動
http://www.asahi.com/articles/ASJBC6RQ7JBCUBQU009.html

参考
朝日新聞・朝刊 2016.10.12


<私的コメント>
「激しい運動でなければ腎機能は悪化しないことが研究でわかってきた」ということは、「運動により腎機能が改善するわけではない」ということになります。
タイトルを見た段階では、「運動による腎機能改善」を期待してしまいます。
一方、「まだ透析が必要な段階にはなっていないCKD患者が運動することで、腎機能を改善したり、透析などに移行する割合を減らせたりできるとする研究結果が最近、相次いで報告された」とも書かれています。
私たちが知りたいのはまさにここのところではないでしょうか。


CKDステージG3b~5患者のための 腎障害進展予防とスムーズな腎代替 療法への移行に向けた診療ガイドライン 2015
http://www.jsn.or.jp/academicinfo/report/CKDG3b-5guideline2015.pdf
(私的コメント;この診療ガイドライン には運動療法に関する記述はない)