介護サービスの利用

介護サービス、積極的に活用したい?

昔より長寿になったことは、本来なら喜ばしいことのはずだが、素直に喜べないのは、この国の福祉の未来に不安があるからだ。
老後の心配のひとつは介護だ。
しかし、介護問題は直面しないと、なかなかリアルに考えられないところがある。

活用派も心配尽きず
将来、積極的に介護サービスを利用したい人は、約7割を占めた。
その理由としては 「親族に負担をかけたくない」が最も多かった。
 
母を10年間介護した女性(59)は「母は他人の介入をいやがった。介護は大変で、自分を見失いそうだった」。
だから「自分はできる限り一人で暮らし、介護サービスを受けようと思う」と語る。
 
親の介護経験から、積極的な利用を考える人は多い。
 
「公的サービスを活用した方が、精神的にも追い詰められず、介護も長続きする。だから、自分が介護される側になったら活用したいと思う」(67歳女性)
 
しかし、いざ介護が必要になった時に「受けたいサービスが受けられるのか」と、心配する人は多い。
実際、やってほしくても、介護保険制度の範囲ではやってもらえない家事もある。
また「将来、年金で介護負担までまかなえるのか」(46歳男性)などと、悩みは尽きない。
 
利用したくない理由では「他人の世話になるのはいや」が突出して多く、「他人を家に入れたくない」が続いた。
プライバシー面の不安をぬぐえない人が多いのだろう。
「自分で自分のことができなくなったら、安楽死を望みたい」(64歳男性)とまで言う人もいた。
親の介護に直面した家族の思いは複雑だ。
「母は要支援2と認定されたが、まだ大丈夫だと、サービスを使ってくれず、介護する私の負担は減らない」(53歳女性)、「妹が親を介護しているが、親は介護サービスを受けたがらない。妹が心配だ」(57歳女性)。
 
どうなれば、利用したいと思えるのか。最も多かったのは「本当に望むものが受けられるなら」。次いで「相性がよく信頼できる人が担当なら」「全額公費で受けられるなら」が続き、「利用したい」派の皆さんの不安とも重なった。
 
使いたい介護サービスでは「家事代行」のニーーズが高かった。
次いで多いのは「訪問介護・看護」「通院・外出介助」。
特別養護老人ホームなどへの入所についての関心が相対的に低かったのは、できるだけ自宅にとどまり、環境は変えずに老後の生活の質を高めたい気持ちの表れだろう。
「もし将来、生活に困る状況になったら、介護サービスを利用し、今の状況のまま出来るだけ長く暮らしたい」(68歳女性)
 
介護してもらうなら、誰の世話になりたいかでは、ほぼ半数を「介護の専門家」が占めた。
あとの約4割は「配偶者」になっている。
「勝手を言えば、自分は妻に介護してもらいたい。妻には申しわけないが、それが私の望みだ」 (74歳男性)。
他人の世話になりたくない老夫婦は、配偶者に頼らざるを得ない。
でも、その選択は「老老介護」による共倒れのリスクをはらむ。
 
一方で「子ども」に介護されたいと思う人は、意外にも1割を割り込んだ。
これは、子どもには負担をかけたくないとの親心の表れだろう。
 
介護には、どうしても不安や心配がつきまとう。
介護の将来に、何か夢や明るい展望は持てないものか。
 
ロボット技術の未来に、活路を見いだす人がいた。
「20年もすれば、介護ロボットのお世話になれると思う。ロボットなら肉親のように遠慮す
ることなく、忠実に世話してくれるかも」(69歳女性)。
そんな時代は、来るのだろうか。  

 
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参考
朝日新聞・朝刊 2017.1.21