抗加齢 「外見の若さ」より健康長寿

アンチエイジングは外見より健康長寿志向へ 寿命120年に挑む抗加齢医学

抗加齢(アンチエイジング)に対する意識が大きく変わろうとしている。
見た目の若さを最優先し美容やサプリメント中心の商業主義が先行してきたが、数年ほど前から健康長寿実現の手段とする考え方が定着してきた。
科学的に本当にどこまで効果があるのか、検証作業も進む。
 
6月中旬、京都市で開かれた日本抗加齢医学会。
東京都健康長寿医療センターの青柳幸利副部長は「毎日8000歩以上歩き、うち早歩きなどの中強度の動きを20分以上取り入れるだけで、老化防止に効果的なことがわかってきた」と発表、注目を集めた。

群馬県中之条町の協力を得て、65歳以上の町民約600人を対象に日常生活での歩数と病気の予防効果との関係を9年間調べた。
腰に一日中、体動計をつけてもらう。
歩数のほかに、速足の散歩や山歩きといった筋肉にある程度の負荷がかかる運動は中強度、散歩や買い物、炊事、洗濯などは低強度として記録される。

転倒骨折免れる
調査に参加したNさん(79)とSさん(72)夫妻は体動計で確認しながら1日8000歩以上歩き、中強度の運動を約20分心がけた。
血圧や血糖値も安定、バイクで転倒して転んでも骨を折らずに済んだという。
 
一方、ある旅館のおかみは同じように1日8000歩以上歩いていたが、大半が低強度の動きで、調査期間中に骨粗しょう症になった。
 
青柳副部長は2000年代初めから、各自治体が実施した筋肉トレーニングの抗加齢効果に疑問を抱いていた。研究者の数と同じほどあるといわれるプログラムを各自治体がばらばらに採用、月1回など実践しても多くの人に適切な効果を引き出せる科学的な根拠がなかったからだ。

食事の取り方でも抗加齢対策が変わってきた。
ポイントはカロリー制限だ。
 
順天堂大学の白澤卓二教授らは、30歳代、40歳代のやや肥満気味の主婦15人に、昼食と夕食を各550キロカロリーにして1日のエネルギー摂取量を1600キロカロリーに抑える食事を1カ月間続けてもらった。
老化の指標である過酸化脂質の量が全員減った。
食べ過ぎが細胞の老化を促進させていると推定された。

人間の寿命120年
これまで抗加齢対策の弁当メニューなども考案してきた白澤教授だが「今までの対策は長生きしている人の経験や知見に基づいて実施していることが多く、科学的根拠が十分に解明されていなかった」と話す。
 
抗加齢医学は予防医学の柱としてて認識されてきた。
うさんくさそうな対策も、遺伝子やホルモンの解析で科学的な真偽がわかるようになってきた。
 
遺伝子研究などから人間の寿命は約120年という。
実際には病気などにかかり寿命を縮めている。
この要因を取り除き、寿命を延ばす要因を探すのが抗加齢医学だ。
 
地域で伝承されてきた健康法や健康長寿者の生活習慣をひとつひとつ検証していけば抗加齢の重要な手段になる可能性が高い。

老化の進行は「ドックで確認
体の老化がどの程度迪んでいるかを知るには、「抗加齢ドック」を受けるのがよい。
「抗加齢ドック」は、年を重ねていくと起きやすくなる体の変化(傾向)を知り、病気の発症を防ぐことにある。
病気を早期発見する「人間ドック」とは違う。
 
抗加齢ドックは採血や尿検査のほか、骨密度、肌の弾力測定など項目は医療機関によってまちまち。
健康保険は利かない。
ある医療機関では1回10万円前後だ。
 
アンチエイジングブームにわいた00年ころに相次いで開設されたが、医学的知識に乏しいまま様々な検査が横行したり、美容的側面が強かったりして、ビジネス色が強く、ここ数年は閉鎖に追い込まれる例も目立つ。
どこで受けるかは、慎重に選ぶようにしたい。

 
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日本抗加齢医学会ホームページ

参考・引用
日経新聞・朝刊 2010.7.25