O157食中毒

O157食中毒、家庭で防ぐには 腹痛や血便、下痢止め使わず受診を

埼玉、群馬両県の総菜店で購入した総菜を食べた人らが腸管出血性大腸菌O(オー)157に感染した問題で、9月に入り、女児が亡くなっていたことが分かった。
O157の食中毒は外食で起きているケースが多いが、家庭で感染する危険もある。
食材の買い物や調理、保存など日常生活で気をつけられることはあるのだろうか。

O157など腸管出血性大腸菌はもともと牛などの家畜の腸管内にいる。
家畜の解体時に食肉に付くだけでなく、家畜の便と一緒に排出されて、水や野菜などが汚染され、人の口に入ってしまう。
 
さらに、調理中などに、人間の手を介して菌が食べ物に付くこともあるため、食中毒の原因となる食材は多岐にわたる。
内閣府食品安全委員会によると、過去のO157の例では、牛肉やハンバーグ、ローストビーフ、サラダやキャベツ、メロン、白菜漬けなど様々だ。
 
「今まで経験したことがない痛み」「おなかがねじれるような尋常じゃない痛み」
 
堺市で1996年に起きたO157の食中毒事件では、9千人以上が感染した。
 
当時、治療にあたった医師によると、歩けないほどの腹痛を訴える小学生が次々運ばれてきた。
 
他の食中毒と比べても症状が激しいのが特徴。
中には一晩で急変し、意識が混濁していくケースもある。
 
O157の潜伏期間は、4~8日。
激しい腹痛を伴う水っぽい下痢が頻繁に起こり、血便が出るケースもある。
さらに重篤な合併症が起きることも。O157がつくりだす毒素が血流にのって脳や腎臓に運ばれると、脳に障害を引き起こす「脳症」や、腎臓の機能を低下させる「溶血性尿毒症症候群(HUS)」となり、最悪の場合は死に至る。
 
速やかな受診が必要だ。
乳児の場合は自分で痛みを訴えられない。
痛そうにしていたり、血便が出たり、顔色が悪かったりしたら夜間でも必ず受診するようにしたい。
 
感染した場合、排便を促し、毒素を外に排出する必要があるため、下痢止めの服用は禁物だ。
 
ある調査では便秘がちな子ほど重症化しやすい傾向にあった。
日頃から食物繊維をとるなど便通をよくしておけば、重篤な合併症のリスクを下げられる。

■手洗い・十分な加熱、重要
予防には「菌を付けない」「増やさない」「やっつける」の3原則が大切だ。
 
キャベツなどの葉物野菜は1枚ずつはがして洗うとよい。
100度の熱湯で5秒程度、湯がくことも効果的だという。
生肉をさわった後は手洗いを徹底し、肉を切った包丁やまな板もよく洗うようにする。
 
菌を増やさないためには、生鮮食品など冷蔵・冷凍が必要な食材は購入後、速やかに持ち帰って冷蔵庫へ入れる。
O157の場合、室温で放置すると、15~20分程度で菌は2倍に増えてしまう。
 
「やっつける」には加熱が重要だ。
 
O157は、75度で1分以上加熱すれば菌は死滅する。
生肉はしっかり火を通すことが基本。ハンバーグなどミンチにした肉を使っている食品は、菌が中まで入り込んでいる可能性があるため、中心部まで十分に加熱する必要がある。
 
O157を始め、サルモネラ菌カンピロバクターといった細菌による食中毒は、比較的気温の高い夏場に多く起きているが、冬でも起きる可能性がある。
 
また、これからの季節はノロウイルスによる食中毒が増えてくる。
細菌やウイルスによってそれぞれ特徴はあるが、家庭でできる基本的な対策は共通だ。
手洗いや調理器具の洗浄、十分な加熱といった予防が重要だ。

■昨年までの10年、25人死亡 発生は190件 厚労省
厚労省によると、今年のO157による食中毒は9月14日までに11件発生。
患者数は75人にのぼり、そのうち女児1人が死亡。
07年から昨年までの10年間では、190件発生し、25人が亡くなっている。
 
国立感染症研究所によると、昨年1年間に医療機関から報告があったO157の感染者数は2018人。
家庭で口にした食材によって感染したり、トイレなどで感染したりした可能性があるものの原因を特定できないケースが含まれる。
 
■細菌やウイルスが死滅する温度
腸管出血性大腸菌=75度で1分
カンピロバクター=65度で数分
サルモネラ菌=75度で1分
ノロウイルス=85~90度で90秒以上
ウェルシュ菌セレウス菌=100度でも死滅しないことも

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.9.25