大腸がんのリスクを高める生活習慣

大腸がんのリスクを「確実」に高める生活習慣

大腸がんのリスクを「確実」に高める唯一の要因が飲酒
日本人の死因の1位である「がん」の発症は、その人の生活習慣と密接にかかわっていることが知られている。
たとえば肺がんは、喫煙だけでなく受動喫煙によっても発症リスクが上がることが分かっている。
胃がんの場合は、喫煙に加え、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染も発症リスクを上昇させる。
 
では、男女ともに罹患率が高い大腸がんはどうなのか。
 
国立がん研究センターでは、国内外の最新の研究結果を基に、日本人のがんと生活習慣との因果関係の評価を行い、ホームページで公開している。
この評価は、「データ不十分」⇒「可能性あり」⇒「ほぼ確実」⇒「確実」の順に科学的根拠としての信頼性が高くなっている。

この評価によると、大腸がんのリスクを高める要因の中で「確実」になっている唯一の要因が飲酒だ。
次に信頼性が高いのが「肥満」で「ほぼ確実」となっています。
 
国立国際医療研究センター 臨床研究センター 疫学・予防研究部が、合計約20万人のデータを解析した研究では、男女ともに過度の飲酒で大腸全体、そして結腸、直腸がんのリスクが上がるという結果になった。
 
男性では、1日に摂取する純アルコールが23~45.9g、46~68.9g、69~91.9g、92g以上のグループで、まったく飲まないグループよりもそれぞれ1.4倍、2.0倍、2.2倍、3.0倍と、アルコールの量に比例して、リスクが確実に高くなっていた。
女性の場合も、男性ほど顕著ではないものの、純アルコールの1日摂取量が23g以上のグループは、飲まないグループよりリスクが1.6倍に高まるという結果になっている。
純アルコール23gは日本酒約1合に相当する。

日本人は人種的に見てもアルコール耐性が弱い方が多くいる。
アルコール耐性の強い欧米人は、1日2合未満の飲酒では大腸がんのリスクが上昇していないのに対し、日本人は1.4~1.8倍もリスクが上がっている。
 
飲酒が大腸がんを引き起こすメカニズムはまだはっきりと解明されていない。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには発がん性があり、これを分解する酵素の働きが悪い人(遺伝的にアルコール耐性が低い人)や、日常的に多量飲酒が習慣化している人は、アセトアルデヒドの毒性にさらされる時間も長くなる。
 
しかし、アルコールの代謝に関わる遺伝⼦型と⼤腸がんの関連性を調べた最近の研究では、必ずしも明確な関連性は出ていない。
このため遺伝的な体質ではなく、腸内細菌の働きによってアルコールから生成されたアセトアルデヒド葉酸の吸収や働きを阻害することにより、⼤腸がんの発生リスクが高まるのではないかという説が有力になっている。

飲酒が確実にリスクを高めるがんは、大腸がんだけでなく、食道がんや肝臓がんもある。
いずれにしろ適量飲酒を心がけよう。


参考・引用
日経Gooday 2018.3.26