変わる子育ての常識

抱っこやスキンケア、変わる子育ての常識


子育てをようやく卒業したと思ったら、次は孫の世話・・・という人をよく見かけるようになった。
豊富な子育て経験は重宝されるが、スキンケアや「抱きぐせ」など、常識と考えられていた子育ての知識が変わってきている。

じいじ・ばあばと子育てするには
「むきたて卵のようなプルプルの赤ちゃん肌」といった美容グッズの宣伝文句を街中で見かけたりする。
赤ちゃんは肌がきれいなのでスキンケアが不要と思いがちだが、実際に育ててみると肌荒れしやすく、乾燥しがちだ。
 
国立成育医療研究センターの研究で、保湿剤によるスキンケアは乾燥を防ぐだけでなく、アトピー性皮膚炎の予防にもつながることがわかってきた。
生後1週間から1日1回保湿剤を塗るようにしたところ、塗っていない赤ちゃんよりアトピー性皮膚炎を30~50%起こしにくくなったそうだ。
保湿剤には保湿クリームやローション、ワセリンなど様々あるが、どの種類を選ぶかよりも、塗る頻度を1日2回にすることで効果を高められるという。
 
英国の研究では、ピーナツ食品を食べる量が多い家庭では、ピーナツのアレルギー物質がより多く自宅のほこりに含まれていたという。
ピーナツを口にしたことがない子どもでも、皮膚が荒れた部分でピーナツ成分による免疫反応が起きてしまうことがある。
すると初めてピーナツを食べたときにアレルギー反応を起こす可能性がある。
 
すでに炎症を起こしてしまった肌の場合、黄色ブドウ球菌が繁殖してバイオフィルムという膜を作るので洗い流しにくくなり、保湿剤だけでは治せなくなる。
医師の指示に従って、ステロイド剤を塗ってまず肌をつるつるに戻す必要がある。
 
ほかにも、赤ちゃんが泣いてすぐに抱っこすると「抱きぐせ」がつき、甘えた子になるともかつては言われたことがあった。
戦後、欧米から入ってきた育児法のようだが、最近の考えでは抱かれた赤ちゃんは愛情を感じ、将来の自立心につながるので、抱っこしすぎることの弊害はないというように変わった。
 
逆に、泣いている赤ちゃんにかまわないと感情を表現しない「サイレントベビー」になると言われたこともあった。
しかし、はっきりした科学的根拠はない。

赤ちゃんは母乳で育てるべきという考え方も家族間のトラブルになりがちだ。
母乳が出にくい人もいるためだ。
たしかに、免疫が未熟な赤ちゃんにとって母乳は感染症予防に役立つ成分が含まれていたり、母親にも子宮の回復や体重減少を助けたりするメリットがある。
しかし、粉ミルクで育った人が比較的多い30~40代で健康上の問題が多いわけではない。
粉ミルクでも赤ちゃんの健康に影響はなさそうだ。

食事メニューが母乳の栄養価にも関係するとか、食事と乳腺炎の関連があるという情報がインターネットでもよく見られるが、そんなことはない。
 
父親が子育てに積極的に参加するようになり、新しい研究成果も増え、子育てをめぐる状況はここ10年で大きく変わった。
子育ての常識が世代によって違うのだから、ぎくしゃくすることもある。
育児方法の違いが家族間のトラブルにならないよう、お互いに話し合いながら、その食い違いを減らすことが一緒に子育てを楽しむコツだ。

休日や夜間に病院に行くべきか迷ったら・・・
日本小児科学会監修のサイト
http://kodomo-qq.jp/
がある。

朝日新聞・朝刊 2018.3.17