運動で血糖値を下げるには?

血糖値を下げるにはどんな運動がいい?

2017年9月に厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」(糖尿病有病者)、「糖尿病の可能性を否定できない者」(糖尿病予備群)はいずれも約1000万人と推計されています。
糖尿病は今や、れっきとした“国民病”だ。
 
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を下げる機能がうまく働かず、血糖値が高いままになる病気だ。
自覚症状はほとんどないが、高血糖の状態が血管や神経にダメージを与え、やがて網膜症(悪化すると失明)、腎症(悪化すると透析が必要)、神経障害(悪化すると下肢などを切断することも)といった深刻な合併症を引き起こす。
脳梗塞心筋梗塞の発症リスクも高まる。
 
糖尿病になると、体の内部がじわじわとむしばまれ、やがて致命的な事態に至る。
このため糖尿病は「サイレント・キラー」(静かなる暗殺者)と呼ばれている。

私的コメント
高血圧も同様に「サイレント・キラー」と呼ばれています。
むしろ高血圧に使われることの多い表現です。

糖尿病は血糖値が高いままになる病気のため、治療の基本は血糖値を下げることになる。
血糖の糖分は、筋肉のエネルギー源の1つだ。
運動で筋肉を動かせば、糖の利用が増えて、血糖値が下がるので、運動療法は糖尿病対策の重要な柱となる。
 
では、どんな運動がいいのだろうか?
 
有酸素運動と筋トレ、どちらも血糖値を改善する。
2つを比較するなら、有酸素運動の方が効果が高い。
ただ近年の研究から、理想は両方を併用することだと分かってきた。
 
米国で行われた研究結果がある。
患者を4グループに分けて「有酸素運動」「筋トレ」「有酸素と筋トレ併用」「運動なし」に振り分け、効果を追跡した。
その結果、運動をした3グループの全てで、血糖値の指標であるヘモグロビンA1cHbA1c)が下がったが、最も結果が良かったのは併用グループだった。

より多数の患者データを解析した別の研究でも、血糖値に対する運動の効果は「有酸素と筋トレ併用」>「有酸素のみ」>「筋トレのみ」の順に高くなった。
 
なぜ併用がベストなのだろうか? 
カニズムはまだよくわかっていないが、たとえば「筋肉内のミトコンドリアの能力を高める効果が、有酸素運動単独より併用の方が高い」とか、「有酸素運動と筋トレは、主に働きかける筋線維の種類が異なるため、両方組み合わせると効果的」など、いくつかの説が提唱されている。

有酸素も筋トレも、やればやっただけ意味がある
 
だが、ただでさえ運動はハードルが高いものだ。
そのうえ「有酸素も、筋トレも」と言われても、なかなか難しいと思う方が多いだろう。
 
だらこのデータはむしろ、『有酸素と筋トレのどちらでも、やればやっただけ効果がある』と理解するのが現実的だろう。
 
こんなデータもある。
3万人以上の男性医療従事者を対象に、日ごろ行っている運動を調べ、糖尿病の発症率と比較した大規模な疫学研究では、「有酸素運動」と「筋トレ」のどちらをやった場合でも、糖尿病の発症リスクが下がっていた。
 
まずは自分の生活に取り入れやすいものから実行するとよい。
今、運動習慣がない人にとっては、ごく軽いエクササイズでも、やらないよりはやった方が確実にいい。
まずは、やりやすいところからやってみよう。

まとめ
血糖値の指標であるヘモグロビンA1cHbA1c)は「有酸素と筋トレ併用」>「有酸素のみ」>「筋トレのみ」の順に低下。
このうち「有酸素と筋トレ併用」だけが、統計的に有意な差だった。

参考・引用
日経Gooday 2018.4.9